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「きかんしゃトーマム」
http://shichimencho.digi2.jp/tomam/index.html



実は初めて感想を書くんですよね。
ご存知の通り、私はこちらの小説がかなり好きです。
2014年文芸アワードで大賞に選んでしまうほど。
まぁ、これが大賞に来てしまうのはある意味しょうがない部分もあります。
実に新都社作品らしい小説ですから。
言ってみればこれは文芸版「スキンヘッズ」なのです。
みんな大好きポケモンの二次創作漫画である「スキンヘッズ」は、本来は脇役のスキンヘッズやミニスカート達に焦点をあてています。
また、オリジナルのポケモンにはない、ヤング行きスレスレのお色気、ヤンキー抗争などの若干のスパイス。
台詞回しもポケモンファンならニヤリとせざるを得ない要素満載。
ちゃんとポケモンバトルもしてるし、絵も上手いし、人間キャラ抜きにポケモンだけで話を回しても面白い。
これで更新も早いときては受けない訳がありません。
「トーマム」はそういった「スキンヘッズ」が受ける要素をかなりの部分で踏襲されています。
ある意味、漫画作者による文芸界への殴り込みというべきか。
実際、トーマムのコメントは伸びに伸びました。
ほのぼの幼児向け絵本やテレビ番組の「きかんしゃトーマス」を、二次創作成分としての毒をたっぷりと含ませ、でも文体はあくまで絵本っぽい。
漫画しか読まない新都社読者が小説も読む良いきっかけとなったことでしょう。


■金糸雀亭 密室失踪事件
さて、第一部はそんな印象だったのですが…。
第二部から文体も雰囲気もガラッと変わってきます。
「金糸雀亭 密室失踪事件」って…。
完全に別の小説だこれwww
登場するのはホモで下世話な杉下、相棒の神戸。
いや、相棒ならぬ愛棒かw
組織犯罪(主に暴力団)対策の刑事の模様。
濃霧の山中で車を走らせていると、金糸雀亭という心霊スポットにたどりついてしまう。
そこでは阪神・中日・巨人・広島とプロ野球のファンが集っていた。
一応は宿泊施設らしいが、回転ベッドがある。
回転ベッドは80年代のラブホテルの遺物であり、大正時代からの洋館には余り相応しくない。
更に言えば風営法違反なので旅館に置いてはいけないのだが…?
それはともかくとして…。
事件は起きる。
タイトル通りの密室失踪事件です。
ネタバレになるのでその顛末については語りませんが…。
これ、コメント欄で指摘されてから考えた訳じゃないですよね?w
きかんしゃトーマムで何でいきなり刑事ドラマが始まったのかと思ったけど、オチで明らかに。
登場人物が実は…という簡単な叙実トリックでした。
あと回転ベッドが伏線だったとは…意表を突かれました。
これがトーマムの世界、七面鳥先生の持ち味かな?とは思うけど、名探偵コナンでたまにある荒唐無稽なトリックとか目じゃないぐらい酷いw
まぁ、刑事ドラマのオマージュというかパロディで、本気でミステリーをする気はないんでしょうがw

■警察庁長官官房室長 小野田公顕
金糸雀亭での犯人の半生について語られる。
wikiの記事がこれアンサイクロペディアの方じゃねぇのかと言いたくなるw
第二次世界大戦での日本軍の体たらくは酷いの一言w
プリマハット卿も黒すぎるw
でもこのサラッと語られる経緯が七面鳥先生節とも言えますねー。
漫画「ひとつ前を忘れていく」でも見られるような、登場人物達は淡々としつつ、背景は荒唐無稽で奇妙というか。
誰かが魔法少女になってさりげなく登場してもおかしくないというかw
さて、警察のお偉いさんに呼び出された杉下と神戸。
事件から手を引けと諭される。
いよいよ刑事ドラマのお約束ですな。

■新都社作家 殺人事件(1)
俄然面白くなってきましたwww
アサシーノスを描いているバーボンハイム先生が犠牲者役で登場。
反社会的存在、警察の敵、表現のテロリストwww
もうね、どこから突っ込んだら良いものやら…。
あ、突っ込むと言っても…ry)
「ひとつ前を忘れていく」でもたまにメタ表現はありましたが、トーマムでも同様。
でもこれはメタというよりコラボですね。
新都社は作家間の交流が盛んです。
FA文化、合作、作品コラボ、企画・祭り的なアンソロジーなど。
でも小説作家同士だと、twitterでは良く交流してるけど、こういうコラボって余りなかったような。
スーパー文芸大戦ぐらい?
なので大変、これは目新しい。
何でしたら、現代社会の闇的な存在で、ブラック企業営業マンとか、ケチな風俗店長役で私を出していいですよ!w
杉下さんとか性欲強そうだし、「聞き込みですからねぇ」とか言って経費で風俗通いしてそうw

さて、トーマム未読分も全部読みました。
七面鳥先生、展開に行き詰っている…ということでしたが、どの辺りで悩まれているのかな?
強いて言えば、第二部まだプロローグとwikiの記事ぐらいでしかトーマムが出てきていないw
一応は機関車絡みの事件という体裁ですが、結構無理矢理というか、別にこれトーマムでやる必要ある?という感がなくはない。
いかに無理矢理感がなく、自然にトーマムと絡める事ができるか?に注目したいところです。
逃亡した事件の犯人、ソドー島に行ってそうですね。
展開的にはソドー島に場面転換してからが本番でしょうか。
あ、本番と言っても…ry)

       

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