Neetel Inside ベータマガジン
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「ゴールデンクロス・デッドクロス」
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猫瀬先生の株式取引をテーマにした作品。
感想は書いていないものの、最初の方だけ読んでいました。
猫瀬先生と言えば、文芸のお題短編企画、遅筆友の会などで素晴らしい短編を書かれています。
そして何と言っても「高校生6人を密室に閉じ込めてみた」を高校一年生で書いたという才能。
今は新都社では読めませんが、あれは間違いなく名作。
さて、そんな猫瀬先生の新作です。

■01.「取引といきましょう」
偉大な株式トレーダーを父に持った主人公・三雲渡也。
小学生の頃は父のようになりたいと夢を語っていたが、現在の彼は何の変哲も無い普通科の高校生となっている。
投資の世界に何かトラウマがあって逃げてきた模様。
無気力でクラスでも孤立気味。
そんな彼の元に、株式投資研究部に所属する折花美雨という美少女が現れ、投資の世界へと誘う。
高校生によるバーチャルトレードコンテストがあるのだ。
拒否する渡也だが、美雨は取引(半ば脅迫w)の材料を持っており…。
こういう筋書き、結構ありますよねw
元天才が挫折してくすぶっていたところ、周囲に引っ張られて再び立ち上がるというの。
ベタというか王道な展開?
ジャンルは全く違いますが、最近見た中では「ガールズ&パンツァー」が近い。
戦車道の家元の少女が、トラウマを抱えて戦車道とは無縁な普通の高校に逃げてきたものの、結局そこでも戦車道の世界に誘われるというもの。
「ガールズ~」では主人公は仲間達との交流を通じて戦車道に楽しさを見出して復活するのだが、本作ではどうだろうか?
導入は洗練されていて読みやすかった。
これから胸躍らせる投資の世界が待っているのかどうか。
株ラノベというジャンル自体が珍しい。
オンリーワンになれる要素を持っている。
期待したいところです。
ただちょっと苦言を呈するとすれば、美雨の出した取引の材料が弱いかな~~?
渡也にとっては脅しに使える武器だったようだが、人によっては「そんなの小学生の話だし」と一笑に伏される程度のもの。
客観的に見て、取引断られる可能性の方が高いだろって思いました。
もっと強制力を持つような脅しの材料を用意してほしかったですね。
例えば、株式投資研究部が廃部の危機!
「三雲くんの力が必要なの! もし力を貸してくれるなら私の体スキにしてくれていいのよ!?」
とか良くありません!?
ねっ!(マジキチスマイル)

■02.「魔術師」
ハイリスクハイリターンの世界。
私も昔、投資の世界に携わっていたことはあります。
商品先物取引、そこはまさに狂気の世界でした。
最近ではFX取引がもてはやされていますが、商品先物取引も同じレバレッジ取引です。
100万の資金でその100倍の1億円の取引ができてしまう。
鬼が出るか蛇が出るか。
どうして自分だけが負けないなんて思っていられるのでしょうか?
戦場に行って自分だけ弾が当たらないと思っている兵隊のような愚かしさです。
渡也は恐ろしさを理解したからこそ、投資の世界から降りたようです。
その辺の事を分かりやすく描写できていました。

>失敗を想像しないやつらは成功する。しかし、それは最初に限った話で、何度もふるいにかけられ、それでも生き残った者だけが天才と呼ばれる。

そんな生き残った成功者が魔術師という訳ね。
これは他の世界でも言える事かもしれません。
天才肌の成功者は失敗なんて考えた事もない。
でも、誰もがそんな天才ではない。
渡也は失敗を意識してしまった。
彼も小学生時代はぶいぶい言わせていた訳だから、才能はあるはず。
底を知ってしまったが、そこから立ち上がることはできるのか?
失敗を知って尚立ち上がれた天才は強い…はず。
投資というテーマは興味深いけどそれだけじゃ弱い。
この第二のテーマが含まれているので、本作は普遍的な面白さを勝ち取っています。
株式投資研究部の部室へ行く渡也。
そこで見たのは驚異的なリターンを弾きだす美雨の取引の様子。
渡也を再び立ち上がらせるには十分な衝撃だったようです。
美雨の取引に父の姿を見たようですね。
そうですね、脅されてではなく、やはり自発的に主人公には奮い立ってもらいたいところです。

■03.「手と足」
美雨のキャラクターは実に良い。
魅力的なヒロインです。
取引に没頭する様子は精密機械のようで、外見は可愛らしい小柄な貧乳美少女。
胸ポケットに入った紙を取るところは渡也でなくてもドキドキしちゃうでしょうw
いいね、青春してるなーw
どこか遠くを見ているような瞳。
投資マシーンと化している美雨は、渡也が天才のまま成長した姿なのかもしれない。
渡也が投資の世界へ本格的に戻ることを決意する。
しかし本人も言っているがあっさりしているね。
投資を辞めたきっかけ(トラウマ)とか説明されていないし…。
ヤニ中になるのが怖くて煙草をやめたけど、煙草の匂いをかいでしまってまた吸ってしまったという程度のあっさり加減。
もう少しドラマを膨らませられるところなので、劇的なトラウマが過去にあったと含ませた方が良いかと。
トラウマを克服する主人公はかっこいいから。
おじいちゃんとの対話のシーン。

>なにかをやれるってことはそれだけで幸せなことだ。だから恥や迷いなんて持ったらいかん。自分の手と足よりも大切なもんなんじゃろう。

名言来ました。
良き理解者です。
手足をもがれるより大切な事。
カイジの利根川はこうも言っていましたね。
「金は命より重い」と。
まさに狂気の世界です。

■04.「科学と魔術」
株研の部員達はみんなハイスペックみたいですね。
湯波はプログラミング超高校級のようだし。
音瀬さんも有能そう。
美雨は投資マシーンだし。
それでもコンテストにはもっと強いやつがいる。
いや、人間であればまだ良かったが…。
本物のマシーンが相手のようです。

■05.「折花美雨」
良い雰囲気である。
文化系クラブの見た目は静かだが内面は激しいというのが伝わってくる。
囲碁や将棋の漫画で既視感がある。
「ヒカルの碁」や「3月のライオン」で「神の一手を!」と追い求めている感じ。
渡也は美雨の期待に応え、覚醒できるのか?
こんなか細い少女が戦っているのだ。
これで立たなきゃ男じゃないぞ。
(私は別のところが立ちそうだが!)
一方で、美雨がなぜそこまでしてトレコン優勝を目指しているのか?
という説明はまだない。
でもそこははっきり伏線と明示されている。
続きに期待。

■06.「見えないもの」
今までと違い、株式の専門的な知識や数字が多目に出てきます。
でもそんなに難しい話はしていませんし、株式初心者でも全然ついていけるレベル。
やはりヒカルの碁に何となく似ている気がします。
あれも詳しい碁の知識がなくても面白かったですよね?
20何巻と続いた漫画ですが、碁のルール説明は殆どなかったし、なくても楽しめた。
人間ドラマが熱い漫画でした。
そう、例えると…。
渡也は進藤ヒカル。
美雨は搭谷アキラ。
沙耶は越智。
そう、投資のライバルなのか、BLの対象として見ているのか分からないぐらい執着してたw
沙耶なんか、美雨に恋しちゃって、渡也へ嫉妬しているようにしか見えないw
トレコンの行方より人間ドラマの方に注目しちゃいますねw

■07.「もうひとりの彼女」
子供時代の渡也と父との対話。
父がかっこいいではないか。
いかにも子供に夢を語る父親している。
でも父も投資をやめているのか。
何が原因だったのか…?

>「自分のルールが、世界のルールに負けたときだよ」

渡也も沙耶に対し、投資をやめた理由をそう語る。
良く分からないが投資に大負けしたってことだろうか?
さて、なぜか文化祭が始まります。
文化祭の展示って物凄くてきとーにやってる部多いよねw
株研はまさにそのようです。
彼らにとってはトレコンの方が大事だから、そんなのに時間割いてる余裕は無いってことね。
そんな文化祭の最中、暇を持て余した渡也が美雨と出会うが…。
これは意外な展開。
まさかまさかの二重人格?
単なる絶滅寸前正統派美少女ではなかった。
そういえば「科学と魔術」ってタイトルあったよねぇ…。
本物の魔術が出てくるのか!?
更に面白くなってきました。
続きに期待です!

       

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