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「魔法の国の少女」
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今西美春先生作品。
どうも「時計の国の少女」「夢幻の国の少女」に続く作品のようですが…。
タグに「国の少女シリーズ・外伝」とありますし、これ単独で読んでも問題ないのかな?
初見なので最初から読めるところまで読みたいと思います。

■序章
凄惨な戦場から。
良いですね~この雰囲気、好みです。
余談ながら私も「魔女の詩」っていうファンタジー小説を書いているのですが。
それに似たダークさがあります。
世界を呪う魔法少女メディア・リターナーはどうなるのか!?
甘言を弄して近寄ってきた使い魔「ネームレス」との契約、そして計画とは?
「世界を滅ぼす」ことのようです…!
おー素晴らしいですね。闇堕ち魔法少女が主人公ですか!?
メディアかぁ…私の小説の主人公メディナと名前まで似てるや。
メディアならギリシャ神話でも魔女として名高いしね。
関係ないけど、私の小説のメディナの名前の由来は「イスラムの聖地」から来ています。
メディア・リターナーという名前にも意味があるんでしょうね。
好みの雰囲気と主人公の名前から、一発で最後まで読み続けたくなりました。

■第1章 最弱の魔法少女
ネームレス、改めビスビリオ。
古語で「囁く者」か。
多分猫みたいな容姿をしているのだろう。
気まぐれで主人に忠誠を誓うタイプではなく、あくまで共生関係、いやここでは共犯関係。
まぁ、安直な感想だけど「魔法少女まどか☆マギカ」のキュウべえみたいだよね。
使い魔としてのビスビリオの能力は魔力吸収。
使いようによっては最強の力を得る事もできるが、今現在では何の能力も持たないので最弱。
それをメディアに説明して、突っ込まれたビスビリオが話題を逸らそうとするあたりは正直くすっとしましたw
序章前半のダークな雰囲気に比べ、序章後半から第1章にかけては割と軽妙な文章で、これが本来の作者の書き方なのだなと分かる。
重くもなく、軽くもない。
丁寧な文章という印象。
ライトノベルだからって世界観を無視してやたら軽くする人もいますが…。
話の進め方とテンポ、登場人物の紹介と絡み、世界観の説明、そのバランスがとても良いです。
教官のサラ・モリス、新しい上官セシリア・トリスケイル、行き倒れていた家出少年ヴィットーリオが登場。
みんな善人であり、それぞれから励ましや優しい言葉をかけられる。
だがそれに対し、メディアが考えを改める様子はない。
ビスビリオはそんなメディアに対し、一人暮らしの孤独な老魔女を狙って魔力吸収をしようと提案。
卑劣だが効率的だ。
メディアは世界を滅ぼそうとしているのに、モラルにとらわれて躊躇する。
口先だけで、まったく覚悟ができていない。
真っ当に良識人です。
幾ら凄惨な戦場を見て、親友を失ったからと言って、いきなり闇堕ちするには無理がないかな?
勢いで「世界なんて滅んじゃえ!」と口走ってしまい、引っ込みがつかなくなってしまっているのでは?w
もっとゲスな主人公かと思っていましたw

■第2章 目覚め
メディアが老魔女ルイーザから火の魔力を奪うまで。
や~っとこさで、悪い事ができました。
ルイーザの背景についても丁寧に書かれています。
疎遠となった娘のこと、孫ができたこと、インコのような使い魔のこと。
だから余計に殺してしまうのは忍びない。
これって使い魔の魔力を吸い取るだけなら、魔女は殺さなくても良いのでは?
今回は目の前で使い魔の魔力を奪ったから、魔女の方も目撃者ということで殺さなくてはならなかったけど。
深夜に魔女の家に忍び込んで、使い魔の魔力だけ奪っていくとかじゃ駄目なのかな?
あ~いや、魔女が魔法を使う瞬間を狙わないと、魔力を奪えないのか?
覚悟できたつもりでもまだまだ良心の呵責に苦しむメディア。
そんなに苦しむならやらなきゃいいのにね~。
ビスピリオがいなければ何もできないくせに、いちいち皮肉っぽいし。
ぶーぶー不満を言いつつ、状況に流されているだけのような感じがします。
でもそれが普通かな?
どちらかと言えば余り優秀ではないメディアがいきなり大立ち回りできる訳が無い。
これぐらいのスローペースの方が自然ですね。
さて、第2章最後では思わせぶりな謎の魔女と使い魔が登場です。
メディアの行動をしっかりと見ている模様。
とすれば、メディアの今の状況も、手の平で泳がされているだけなのかもしれませんね。

■第3章 北へ
誤字脱字が数箇所。
ドズラフェル(老人キャラ)の台詞で不自然というか関西弁っぽくなってるところが。
セシリア(お姉さんキャラ)やドズラフェルのように、口調が特徴的なキャラクターは「誰が喋っているか」を分かりやすくしてくれるけど、地の文と違う口調になるからミスもしやすいのかもしれませんね。
この章は名前の無いキャラも含め、今までに比べて大勢のキャラが喋っていましたし。
更に言えば、「洋燈」という単語がありましたが、ハイファンタジーの本作ですから和洋など関係ないと思います。
ファンタジーでもワンピースみたいに「和の国」があるなら別ですけど。
さて、第3章で色々と話が転がってきました。
上官セシリアと共に、敵である鋼鉄の国に与する恐れがある中立地帯の少数民族マハルバの民がどう動くのかを偵察する任務。
マハルバの民は神への信仰(宗教)に篤い民族。
だがそれゆえに民族的に劣化してしまっている模様。
一方、鋼鉄の国は宗教を利用し、国として伸長著しいと。
この辺りの宗教への考え方はあっさりしていますが実に興味深くて面白い。
現実の宗教問題の真理を突いていますね。
また、鋼鉄の国は政略結婚を推し進め、マハルバの民を取り込もうとしている。
帝国主義国家として実に優秀です。
そんな大きな歴史のうねりを感じる章となっていますが…。
メディアは新人、しかも凡庸な魔女です。
話の展開に対して蚊帳の外というか、まったく見せ場がありません。
一方、セシリアの凄さは色んな場面で丁寧に描写されている。
けど、そんな彼女から魔力を奪えるのか?
まったく隙がありませんし、メディアがいつセシリアを裏切るのかとか気になりますね。
この章でも世界観・ストーリーの説明は本当に丁寧。
これまでずっと三人称一人(メディア)視点で進んでいましたが…。
後半、三人称神視点で、鋼鉄の国の様子も描写されています。
鋼鉄の国のボンボンっぽい皇子ナブッコス、脳筋っぽい皇女ギネヴィア。
短い文章でさらっと語られていましたが、それぞれ特徴的で記憶に残るキャラクターです。
ギネヴィアなんか国で大人気というのも頷ける。
「鋼鉄の国の戦乙女」なんて外伝でも読みたいぐらいw
会話中心ですが、国際情勢が緊迫しており、本格戦記ファンタジーとなってきました。
やはり私好みな作品です。

■第4章 反抗
誤字脱字がまたありました。
あと、近代オリンピックがある訳でもないのに「マラソン」という単語はどうかと思う。
%とかケセラセラも「こちら側の世界」の表現です。
ファンタジーなんですから他の言葉に言い換えられないかな?
比喩的な表現だとしてもうっかり出てくると興ざめです。
いや、意図的に現代的な表現を好むファンタジーだってあります。
それが誤りとは言わないけど、本作の雰囲気にはそぐわないと思う。
でも、もっと作者は軽くしたいのかな?

>「作戦名……、「花婿誘拐大・作・戦~どうしよう、僕の花嫁が魔法の国の少女だったなんて~」、よ」

いや、セシリアが軽いだけかw
でも使い魔達も調子を合わせているし、更に笑いを誘いますw
メディアちゃん、もう世界を滅ぼすとか物騒な事考えるのやめて、玉の輿狙っちゃえよw
ナブッコスって多分良いやつだし、かなりお似合いじゃないか?
作戦で偽装花嫁なのが勿体ないwww
それにしてもセシリアは随分と独断専行やっちゃう人ですね。
この作戦、成功すれば良いけど、失敗すれば魔法の国にもマハルバの民にも相当痛手のはず。
魔法の国の単独犯行とは鋼鉄の国も解釈しないでしょう。
「シュターリア皇国」というのが鋼鉄の国の正式名称なのかな?
魔法の国にも正式名称があるのかも。
文章的にはナブッコス、セシリア、メディアと視点がころころ変わります。
そのせいか、今までと少し雰囲気も違いますね。
戦記物としても実に面白い展開になってきました。
ナブッコスとギネヴィアを捕らえるのに成功した後、今度はナブッコスを擁立して鋼鉄の国の皇位を簒奪とは!
セシリアは軍神と呼ばれるのに相応しい発想と行動力です。
鋼鉄の国の魔法の国への侵攻の理由、これは物凄い言いがかりですねw
アメリカがイラクに大量破壊兵器を隠しているだろう!って言いがかりつけるようなものかw
ギネヴィアはがっちがちに頭固いですねー。
もっと魅力的な人物かと思っていたけど、テンプレな姫騎士だったので残念。
さっさと「くっ殺」を発動してレイプされてしまえとすら思ってしまいました。

さて、最新話まで読みました!
ところどころ気になる箇所はありますが、基本的に非常に面白い。
何より、私好みな作品です。
続きも期待して待っていますね~!



       

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