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「週末のロストマン」
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=15812


硬質アルマイト先生作品。
この企画始まって以来、初めて更新合わせて下さいましたね!
古参の文芸ニノベ作家を語る際には外せない作家さんの一人。
文藝ではおなじみのアルマイト先生ですが、何気にニノベではデビュー作のようです。
ニノベを意識してか、文藝の過去作よりかなり読みやすかった。
初見ですから最初からの感想です。

■粗筋
少年時代、ギターを手に戦う少女のアニメに憧れ、音楽を始めた主人公・鳴海。
大学生となった彼は、この先訪れるであろうつまらない現実に打ちひしがれ、夢を諦めかけていた。
そんな鬱屈した鳴海の前に現れたのは、あのアニメのようにギターを手に戦う少女。
これは、どういう道を歩めば良いのか迷子(ロストマン)となった青年による…。
楽器を手に戦う能力バトル物・現代ファンタジーです。

■心理・内面描写が秀逸
2012年の文藝インタビューでアルマイト先生とお話した時に、「Pure and Easy」というバンド小説を読んでいました。
あと、その後につばき先生との合作「涙雨」も読みました。
それらの作品でも強く思いましたが、本作でも心理描写はとても巧みです。
繊細で、自然で、強く感情に訴えかけてくる文章。
楽器バトルを行うプレイヤー達は、それぞれがネガティブな感情を抱えた人達。
主人公・鳴海が最たるところですが、ヒロインの律花共々、心理や内面描写が実に丁寧。
戦えない主人公に随分とイライラさせられましたが、戦うまでの理由づけや布石は着実にされていました。
序盤からすぐ派手にバトルするのかと思いきや、主人公ずーっと戦わないんだもんなぁw
でも派手なバトルは律花がやっていたからそこまでストレスは感じない。
八話でようやく満を辞して主人公が覚醒した時は喝采しました。
実に堅実な物語の運び方です。
恐らく、しっかりプロット立てて書いてらっしゃいますね。

■楽器バトルがシュール
過去作でのアルマイト先生は、心理描写は巧みだけど背景が少ない少女漫画的というか、情景が浮かびにくいところがあったんですよね。
でも本作は全然そんなことありませんでした。
まぁ、バトル物ですからそうでなくっちゃね。
ありありと情景がイメージできます。
それもギターで物理的に殴ってくる少女ですよ。
もうそれだけで絵になりますよね。
ムーンマーガレットの衣装も実にホットホットホット!
これ、絶対FA映えしますよ。(漫画作家さん注目!)
で、そんな楽器バトルですけど実にシュール。
音符が矢のように「音撃」として飛んでくる。

m( ゚皿゚)m‥‥…━━━━━♪ピーーー!

AAで表したらこんな感じ?w
そしてギターやベースでチャンバラする!w
漫画やアニメ化されたらめちゃくちゃ面白そうですwww

■現実とどう折り合いをつけるのか?
物語の鍵となっている要素だと思いますが、現実で鬱屈を抱えた人間がプレイヤーとなる。
では、そんな彼らが戦いを終える時はどうなるのか?
鳴海や律花は現実での問題を解決していけるのか?
完結まであと少しのようですが、そのあたりが語られないと話は終わらないでしょうね。
結局、あのモッシュピットでのバトルは現実逃避のようなものですし。
また、創作者としても見逃せない部分もある。
音楽も漫画や小説の創作と似た世界。
成功するのはごく一部でお金になりにくいし、でも好きだからと趣味で続けている人達は多い。
絶夢エンドにはなりそうもないから安心して見ていられますが、そう甘くもなさそう。
恐らくビターエンドになる予感。
どういう結末を迎えるかは大変興味深いところです。
アルマイト先生は最高にイケメンですが、鳴海はそれに及ばずとも匹敵するイケメンのようです。
きっとイケメンな選択を取るでしょう。




以下、各話感想です。

■第一話「ライドオンシューティングスター」
まだ情熱を失っていない友人の沙原に対し、うだつの上がらない現実に挫折しかかっている鳴海。
鳴海みたいなキャラ、アルマイト先生、好きそうですねw
結構、既視感があるのだが…。
で、今度のヒロインはギターで殴ってくるのか!
てっきりバンド物が始まるのかと思ったので意表を突かれました。
グーッドです!

■第二話「ムーンマーガレット」
律花のキャラはまぁ、割と良く見る「表面を取り繕うお嬢様、実は内面に熱いものを抱えている」ってやつですね。
あれ、やっぱり既視感が…って、あんどーなつっぽい?w
単にアルマイト先生の好み…?w
ホットパンツにすらりと伸びた足、帽子を目深に被り、ギターを手に戦う時にちらりと見せる不敵な笑み。
うーん、様になる。
やはりFAを描きたくなるビジュアルです。
律花に感化され、鳴海にくすぶっていた少年時代の夢が蘇ってきた。
能力バトルと正統バンド物という違いはありますが、根っこは「Pure and Easy」に通じるものが。
屋根裏のこやしにした偽リッケンバッカーを取り出す時か!?

■第三話「ローファイボーイ・ファイターガール」
堅実な話運びですね。
律花の憂鬱な家庭の事情、鳴海の覚醒、次々と現れるプレイヤー達。
起承転結の「承」の部分でどんどん世界が広がってきています。
仲間になりそうなジョニー・ストロボ。
ラスボスになりそうなラストホリディ。
中二的ネーミングが心地良い。
オーディエンスの正体についても概ね分かりました。
でもプレイヤー同士が戦う理由は何なんでしょう?
単なる縄張り争いってだけ?
その辺が三話までを読んだ段階では不明で…。
「お前ら音楽を戦争の道具にするんじゃねぇ!」
って、マクロス7のバサラのような気分になりましたw

■第四話「レモンドロップス」
律花の学校生活、週末の姿とのギャップ激しいな~w
こりゃネガティブパワーも溜まるわ…。
レーベルについての説明、プレイヤー同士が戦う理由。
その辺についてもおおまかに説明される。
なるほどねぇ、ブッキングするのは好戦的なプレイヤーって感じか。
マジで縄張り争い&ストリートファイターかw
オーディエンス専門で戦うレーベルは善玉って感じで、主人公がつく勢力としては適切だ。
ここまでで大体の音楽用語を能力バトル物に置き換えられた感じかな?
やはり丁寧な話運びです。
バンド物をバトル物にしたらこうなるんだなぁ…。

■第五話「ブラック・シープ」
自殺しようとした少年のくだり、結構読んでいて辛いところでした。
心理描写が巧みだから、こっちまでネガティブになっちゃいそう。
モッシュピットに迷い込んだ一般人の悩みに干渉すべきかどうか。
レモンドロップスと鳴海の会話がとても考えさせられる。
まぁ、プレイヤーはオーディエンスをぶん殴るだけの社会的責任はあるかもしれませんが。
別にカウンセラーではないですからね。
干渉すべきではないかと思います。
そもそも音楽やってるやつなんて大体がろくな奴らじゃない(偏見)
アイドルに入れ込むドルオタも、麺に惚れるバンギャも、大体不幸になりますからねw

■第六話「バッドドリームス」
冒頭の律花のバトル。
まるでストリートパフォーマンスしてるみたいですね。
やはり週末のムーンマーガレットは輝いている。
しかしリアルの白部律花はどんどん淀んでいく。
白部家の緊迫した様子は、読んでいて胃が痛くなりそうだった。
律花の兄、初登場時もいやなやつって印象でしたが…。
デッド・オブ・ナイトの正体も予想通り。
律花、これは辛い。
優等生が隠れてやんちゃしてるのをリアルばれするのはねー。
もう、やめてあげて!って感じ。
流石にそこから薄い本展開にはなりませんが、ムーンマーガレット大ピンチ!
そこで満を持して主人公登場!
いやー、燃えますね!
ところでレモンさんは姉御肌なのに実際は鳴海より年下だったんですねぇw
もうこれはレモンさんじゃなく、レモンちゃんだわ。

■第七話「プリーズ、ミスターロストマン」
主人公覚醒は燃えますね!
アニメのドラゴンボールZでセルに対してブチ切れた御飯ぐらいかっけえ。

>響くような低音と共に突如上がった土煙

ここ!
ここ、是非アニメで見てみたいですね。
アニメが無理でもサウンドノベルで読みたい。
痺れます。
というかこの小説全編に言えますが、サウンドが欲しい。
私、普段は小説読む時は邪魔にならないよう、大人しいジャズやクラシックをかけています。
でもこの小説だと…BGMは何が適切だ?
やっぱりロックか。

■第八話「リトルバスターズ」
いや…もう散々やってきたから分かってるんですけどねwww
楽器を武器にしたバトル、やっぱりシュールwww

>ギターを構える奏汰に唐竹、右袈裟、左袈裟と次々に斬りこんでいく。リーチの長いベースはギターに比べて少々振りが遅いが、それでも一撃一撃の威力はギターよりも優れているらしい。

爆笑www
もはやこれには流石のバサラも苦笑いwww
熱いのだけどシリアスなのだけど…やっぱりシュールw

       

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