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「ピーラー」
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53先生作品。
2012年の文芸インタビュー時にも読みましたが、あれから結構進んでいました。
遅筆ではありますが、女性の生々しさが武器というか惹きつけられるものがある53先生作品。
今回改めて最初から読み直してみます。

■退廃的JK日常
ピーラー、指の逆剥けを血が出るほどに剥く行為。
主人公・舞がイライラする時、随所に出てきます。
リスカに似た自傷行為の一種?
子供は母親のおっぱいを求めて指をしゃぶるけど、ピーラーはそれに近いようでいて逆の意味かもしれない。
舞は両親に余り頼れない身の上ですしね。
イライラをぶつけているだけのようだが、人生ままならないもどかしさからくる不安感がそうさせているように見える。
きっと舞が大人として自立して精神的に成長できたらピーラー癖は治るのだろう。
さて、本作の分類としては「日常系」になりますかね。
ただ、4コマ誌で連載されているようなポワポワゆるゆるなJK日常漫画とは違う。
どちらかと言えばサツバツ世界な退廃的JK日常です。
男とセックスし、煙草を吸い、心許せる友達は作らず、内心毒づきまくっている。
その時々でイライラしてピーラーしてますが、基本的に舞はマイペースですね。(上手い)
日常系漫画でも良く言える事ですが、ずっと同じ調子で話が語られるので、段々飽きてきます。
本作でも舞の内面描写が主ですが、生活描写が淡々と書かれる。
人によっては冗長に感じられ、飽きてくるかもしれません。
まぁ、十分レベルの高い文章力なので、普通にどんどん読み進められましたが。
内容については、舞が色んなものを切って捨てていくのが痛快に感じます。
彼女、誰にも依存せず、一人で逞しく生きていく方が幸せそう。
でもそこまでは達観できておらず、次々と様々な人と係わり合いになっていっている。
最終的に、誇り高い孤立を選ぶのか、誰か心許せる友達や恋人ができるのか。
そういうところに注目したいところです。

■女性目線の生々しさ
コメント欄でも良く「生々しい」と評されてますが、実際とても生々しい。
私のエッセイ漫画でも良く「生々しい」と言われますが…。
読んでいてどうしても舞=53先生に思える。
2012年の文芸インタビューでは「半々です」と仰ってましたね。
一人称小説って、どうしても主人公が作者の分身っぽくなります。
実体験部分、恐らく女子グループのくだりとかがそうなんでしょう。
あと、女性目線でのエロ描写がとても客観視していて冷めてて良い。
男の情けなさ、独りよがりが浮き彫りになる。
男としては読んでていたたまれなくなりますw
男の責め方がワンパターンなのは大体AVのせいです。
立花君のくだりなど、「もうやめてあげて!」とすら思いましたw
女性目線の残酷さゆえに、性描写は余り露骨にエロくは感じられない。
男性にサービスする為の性描写じゃないから当然ですが。
ただ、素人援交物とか好きな男性なら美味しく頂けると思います。
AVや風俗における素人の生々しさは、しばしばプロの仕事を上回りますからね。


以下、各話感想です。

■一、スロースターター
社会人の「お兄ちゃん」とのセックス、煙草、ピーラーという自傷行為。
主にそれらでストレスを発散させながら、高校入学から夏休みまで。
舞、よっしー、ナギー、セーラ様、花音の5人グループの出会いと決別までが語られる。
女子高生に限らないけど、女子グループってこんなんだよねぇ…。
とっっ……っても、面倒臭いです!!!(半ギレ)
もう身に覚えがありまくるというか…出島の長文メールとか本当「あるある」です。
出島は明らかに一番係わり合いになりたくないタイプなのに…見えている地雷を踏みに行っているなぁ。
椎名林檎が好きな保健室の先生が良い味出している。
舞は成長したらこの先生のようになりそう。
小学生だった舞に手を出したロリコンお兄ちゃんは死んでいい。

■二、ブルーサマー
ナンパしてきた営業マン、お兄ちゃん、カーセックスのヤンキー、そして立花君。
うーん、それぞれの男達のキモさが実にリアル。
で、特に描写に力が入っていた立花君。
私の高校時代に一部似ていて、めちゃくちゃ胸が痛いんですけどwwwwww
あ、いや。
マザコンでもないし、ここまでキモくはなかったと思いたいけど、小説など趣味での拗らせ具合が近い。
確実に黒歴史です。
「うわああああ」って枕に顔を埋めたくなる。彼を見てると。
実際、読んでて何度か目を背けてしまい、読み進めるのにすっごい時間かかった…。
途中、立花君の自作官能小説?が出てきますが、ここはもう本当に見ていられなかった。
良くそんなもん好きな女子に見せられるなーーーー。
何でこんなキモくて童貞くさい中二病男子をリアルに書けるんですか、53先生ッ!!!!!
まるで見てきたかのように…ハッ、まさか立花君にもモデルが…!?
そういえば53先生の他の小説「ケッテイを放棄」でもひたすらキモい男子高校生書いていましたよねー。
この女性目線の男のキモさは、男には書けないかと思います。
それにしても、ナンパしてきた男を退けたとは言え、良く立花君なんかに付き合ってあげたなぁ。
稚拙でキモい小説を律儀に全部読んであげて感想書いてあげるとか天使か。
カラオケボックスのくだりはどう考えてもご褒美じゃないか!!!!!
何だそのエロ漫画的展開はwwwww
舞はどうも見えている地雷を敢えて踏みに行っているよう。
二話を通して読んで思ったのが、「逆・耳をすませば」でした。

■三、アンチピーターパン
男達のキモさとは裏腹に、セーラ様が好感をもって描写されている。
ギャルな見た目とは裏腹に安定志向で勉強できて公務員志望。
いいわー、カッコイイ。
そして新たに現れる生物部のイケメン先輩。
また舞にぶった切られる男の一人になるのかw
タイトルの「アンチピーターパン」とは一体…。
年齢より十歳ぐらい大人びていると評される舞は、まさにアンチピーターパン。
早く大人になりたがっているように見えますね。
一学期、夏休みと続いて二学期が語られていくのでしょう。
プロットしっかり立ててらっしゃる53先生ですし、三話か四話でまとめて終わりそうな気配。
舞がどういう結末を迎えるのか、楽しみにしております。

       

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