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「彼女のクオリア」
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=16933


東京ニトロ先生作品。
本作の感想を書くのは三回目となります。
初回は昨年10月7日ニノベ感想にて。(2話まで)
二回目は11月3日ニノベ感想にて。(5話まで)
今回は完結して更新を合わせて下さいました。
この企画を知ってラノベデビューした上、企画終了と共に完結。
お見事と言うほかありません。
ちなみにツイッターのTLから流れてきた情報によれば、この感想がUPされたら作品消しちゃうと宣言されている模様。
残念だったな…既に魚拓はとってるぜ!w
(作品削除後、もし読みたい!って方がいらっしゃいましたら、私にDM送って下さいw)

作品通しての印象。
SF小説としては、序盤は難しくないが、後半やや難解。
私の頭が悪い為か、「お前ら何言ってんだ」と一部何となくでしか理解できなかったところもある。
難しい言葉も良く出てくるのでググりながら読んでいました。
それでも細部については理解できなかったので、感想というか分析は難しい。
なので総括だけします。

■秀逸な背景小説
ニトロ先生の漫画を読んだ事のある方はとっくにご存知の通り。
偏執的なまでの背景愛。
それは小説においても健在です。
絵と活字という違いはありますが、背景描写の濃密さに比べ、人物描写は最低限。
ゆえに全編通して思うのは、雰囲気小説、それを通り越して背景小説だなということ。
SF要素はありますが、それも背景の一部という感じです。
ヴォイジャーに関するニュースや別宇宙がどうのというSF描写がされますが、正確に理解する必要はないかと。
活字を詩のように追っていくとスラスラと読めるところがあります。
作中、モブの台詞は「」で段落区切られたりもせず、地の文で描写されます。
ヒロイン以外、キャラ描写は大変薄く感じるが、人物も台詞も背景の一部なんですよね。
で、その書き方が心地良い。
小説において背景を濃密に描写しすぎると、長くなり、くどく感じてしまいます。
それが人物と背景が一体化したような状態で進み、濃密な背景描写なのに簡潔でくどく感じない。
実際、文章量もそこまで多くはない。
そして最初から最後まで、物語は破綻もせず、横道に逸れる事もない。
ちゃんとプロットを立てて最初の構想通り、起承転結きっちりつけて終わっている。
絶妙なバランス感覚。
本当にこれが小説デビュー作かと思う秀逸さだと思います。
って、褒めすぎてますが、足立区のDQNのような感覚(クオリア)がない人は理解しなくて良い!
というぐらい、バッサリと本作を観測できない人を置いてけぼりにする冷酷さを感じる。(特に後半)
そういう意味では人を選びそうです。

■目標と目的、哲学的ゾンビ
普段からのニトロ先生のツイッター社畜ツイートの言動を見ていると常々思いますが…。
ニトロ先生もまたゾンビになっているのかなと心配してしまう。
作中に「哲学的ゾンビ」という言葉が出てくる。

哲学的ゾンビ
すべての面で普通の人間と何ら変わりないが、クオリアだけは持たない、という仮想の存在。

「クオリア」でwikiで調べたら出てきた一文。
一話から足立区の住民を形容して、ゾンビのようだと描写してきた。
目標と目的を持たず、ゾンビのように生きながら死んでいるような連中。
果たして本当に、ゾンビではなく人間として生きているのか?
そう、読者自身も強く問いかけられている気がする。
作中では、目標と目的を持っていた只一人の少女との出会いと別れが語られる。
主人公は一度彼女を見失い、典型的足立区住民、ゾンビ人生を選択する。
だが彼女と再会することで、彼女が好きだった自分を取りもどす。
SF要素も強いものの、青春要素もちゃんとあり、ボーイミーツガールしていました。
なので読後感は非常に爽やかなものとなっています。
あなたにクオリアはありますか?

       

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