Neetel Inside ベータマガジン
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「サイ・ヤングの速さはどれくらい」
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ムラサ先生の青春小説。その後編について。
前編は「のんのんびより」か?と思うぐらい、田舎の情景やライフスタイルについて丁寧にゆるく描かれていました。
後編は隣県の高校野球部との練習試合を中心に描かれています。
それと共に、野球や絵といった「子供の頃から好きで熱心に取り組んできた事なのに、高いレベルを目指すと辛くなってきた」事への葛藤も描かれています。
冒頭、すみれが上手く絵が描けなくなってきており、絵を描く事が嫌いになりかけている。
ちひろも野球をなぜやめたのかを隠しつつ、すみれにはっきりと「野球はもう絶対やらない」とは言えず、野球の練習試合に出るはめになる。
隣県の野球部は真剣に野球をやっている連中で正直手ごわい。
一方、ちひろ達の青葉高校野球部は、正規の野球部員が補習で歯抜け状態となり、サッカー部やテニス部に助っ人に来てもらっている。
ちひろがいなければ中学生の女の子に出てもらうところだったという。
ピッチャーはスタミナが大事なのに走りこみをしてなくて9回を投げ切れるか怪しい。
そもそもエースの方のピッチャーは補習で遅れている。
マネージャーもスコアブックをろくにつけられない。
普段は野球漫画を読んだり、メジャーリーガーの真似をしたり、野球部が全員集まった事があるのは他校のチアリーダー目当てだったり。
野球部というより気楽な野球同好会のような青葉高校。
で、試合の結果についてはともかくとして。
ちひろは野球経験者といっても実は甲子園優勝してる超名門野球部出身だったのだ。
ただ、シニアでは将来を嘱望されて名門野球部にスカウトされたものの、高校ではまったく通用しなかった。
それでドロップアウトして田舎に逃げてきたのだ。
冒頭のすみれの絵の悩みとまったく同じ話。
子供の頃から9年間真剣に野球に取り組んできたが、勝利を求める野球についていけず、楽しくなくなってしまった。
ちひろとすみれは、野球や絵に対し、どう向き合えるようになるのか?
この小説のテーマはここらへんですね。
これは新都社という「草野球~社会人野球レベルが入り乱れるアマチュア漫画・小説サイト」で創作をやっている人達にも通じるテーマかと思います。
プロを真剣に目指して活動している人もいるし、青葉高校野球部のように楽しくプレイできればいいと考えて趣味でやっている人達もいる。
まぁ、ワンパンマンみたいに「真剣に趣味でヒーローをやる」のも良いと思うんですけどね。
前編ではまったく野球小説とは思いませんでしたが、後編は野球小説かなと思わせつつやっぱりちょっと違う。
でもとても良い青春小説でした。
短編にしては少々長いというか人によっては冗長(良く言えば丁寧)に感じるかもしれませんが、文章自体は読みやすいし良くまとまっている。
(でもやっぱり前編の部活体験入部巡りとか、ママさんバレー対決のくだりとかはもうちょっとショートカットできたんじゃ…?)
すみれと同じく、創作に携わる新都社の人達にとても共感できるテーマだと思います。
是非、読んで見てください。
私は感動しました。

       

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