Neetel Inside ニートノベル
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気が付くと朝になっていた。
ソファーに座っている間に眠りについてしまったようだ。
昨夜のことはあまり憶えてはいない。
まあ、忘れているということは特に何かが起きたわけではないのだろう。
足元に本が置かれている。
"人と円滑に付き合う方法とは?"
"素直になれない日本人"
「誰だよ。こんな本出した奴は。」
ああ俺か。
いくら引きこもりをやっているとはいえ、いや引きこもりだからこそ部屋は清らかにしておきたい。
不潔な部屋は嫌いなのだ。
本が床にあるなど、以ての外。
整理整頓された部屋でこそ理想の引きこもりライフを送れるというものである。
さてと。
本棚に本を戻し、テレビの電源を入れる。
これもまたいつも通りの日々。
画面には4月2日という日付が表示される。
ついでに時刻は午前8時。
最近のテレビはハイテクだな。
こうして引きこもりの1日はまた始まりを告げる。
それにしても昨日は1日だったのか。
引きこもりをやっていると日付感覚が狂う。
4月1日。
記憶の中のあの人は笑う。
「今日はね、」
そうか、エイプリルフールだ。
エイプリルフールは嘘をついても良い日。
「嘘をついても良い日なんだよ。今日の私は私であって私でないのだよ、諸君。」
お生憎様だが俺には関係のないことだ。
虚言を吐く相手はいないのだから。
俺にはそんな人は。
テーブルに目をやる。
そこには美しい包装紙で包まれた箱が置かれていた。
「これ。良かったら。」
隣に越してきたという女の顔が頭を過った。

       

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