女から渡された箱を開けてみることにした。
薄桃色の和紙。
破り捨てるには勿体ない。
が、俺は男だ。
ここは豪快にいくに限る。
包装がズタボロになった時、顔を出したのは小分けにされたかりんとう。
味は桜、抹茶、みたらし、黒糖。
その内の黒糖を手に取る。
「君もかりんとう好きだよね。私ね、かりんとうを食べると懐かしい気分になるんだよ。」
karintou。
カリントウ。
かりん、とう。
水が頬を流れる。
勝手に。
知ってるんだ、俺は。
その感情は忘れて、無くしたことを。
そうでなければならないんだ。
そうでないと俺は…。
場違いな音が切り離された空間を繋げた。
ピピピという目覚まし時計。
不快な声。
俺はかりんとうを激しく床に投げつけた。
そして踏む。
かりんとうはかりんとうであることをやめたのだ。
「ああ、こんなに汚れて。」
掃除をしなければ。
これは、ただの生理現象なのだから。