Neetel Inside ニートノベル
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やっと出会えた、
でもずっと一緒に居た気がするのだけれど、
ちっとも思い出せないの。




白の部屋  第二話

「ローズハニー」



「ずっと、こんな風景が続くのかな。」

リコはぽつりとつぶやきました。
三人でいるのはとても心強くて、どんな困難でも乗り越えられそうな気持ちでしたが、
やっぱり、周りの不気味な模様や生き物は、不安にさせました。
相変わらず、ばっちーはずんずんと前を進みます。

「だ、だいじょうぶだよ・・・ロゼもバッチーもいるんだし。」

おずおずとエンサーが答えます。
優しく微笑んではいますが、彼もまた恐怖を感じているようでした。
長く、ウェーブのかかった髪がふわりふわりと揺れます。
リコは、エンサーがほほ笑んでくれると、不思議な安心感を覚えるのでした。

「そうそう!もうすぐ、灰色の空間に着くよ。」

にこにこと太陽のような笑顔のロゼがスキップをしながらリコの隣を進みます。
肌が白いせいなのか、妖精だからなのか、ロゼは淡く光を放って見えます。
「灰色の空間?」と分からない顔をするリコとエンサーに、
ばっちーがこちらに顔を向けてぶっきらぼうに答えます。

「今、ここは【黒の空間】っていうんだ。カンセルって悪い奴がリコを狙ってるんだって。」
「カンセル・・・?」
「カンセルにつかまると大変ことになっちゃうんだって。だからあたいたち、急いで会いに来たの。」
「大変な・・・こと?」
「具体的にどうなるかは、俺だって知らないよ。」

リコもエンサーもさっきよりも不安な顔をして寄り添います。
こんな気味の悪い空間で大変なことになるだなんて、想像もできません。
だって、この場所自体がもうすでに『大変』なのですから。
ぽわぽわと光を放つ赤い髪の妖精は、にっこりと二人に微笑みかけます。
彼女の笑顔は心があったかくなります。

「皆でいれば平気平気!でもね、そのカンセルについて行っちゃう人、多いんだって。」
「ええっ・・・こわいね・・・どんな姿をしてるんだろうね?・・・男性かな?女性かな?」

エンサーは怖がりながらも、まだ見ぬ敵を想像します。
他の三人も、うーん、と考えます。
あ!とロゼがひらめきます。

「すっごーくイケメンだったりして!」

その一言に、今度はばっちーがひらめきます。

「いやいやっ!やばい美女かもしんないぜ!」
「でもでもっものすごく悪い魔女かも・・・」
「わかんねーぞ、見たことないバケモノかもっ!」
「あははは・・・リコ?」

妖精たちは無邪気に盛り上がります。
エンサーがふとリコをみると、リコは何だかぼんやりとして元気が無いようでした。

「・・・え?」
「どうしたの?大丈夫?」
「うん・・・」

リコは何だか自分の体がだるくて、まぶたが重たく感じました。
エンサーが心配そうに顔を覗き込んで、彼女の頭をなでました。

「ねえ、ロゼ、ばっちー・・・リコ、つかれてるみたい・・・」
「ありゃ、大丈夫?」
「ええ?もうちょっと歩こうぜ!」

妖精たちはトコトコと集まってきました。
リコはなんだか心配をかけてしまって申し訳なくなりました。
自分で自分に、きっと気のせいだと言い聞かせます。

「まだまだ、歩けるから大丈夫。」
「無理しなくて大丈夫!ゆっくり行こう。」

ロゼがリコの手を握ると、なんだかあったかくって、
とってもうれしい気持ちになりました
元気が戻って来るようです。

「・・・ふふ、ロゼの手、あったかい。」
「そう?」
「何だか元気が出たから、まだまだいっぱい歩けるよ。」
「ほんと?大丈夫?」

何だか羽が生えたように軽くなりました。
自分が進んで前へと歩きはじめます。
エンサーはほっとして後に続きます。
ばっちーはなんだか、エンサーの右手が気になります。
じっと見てみましたが、何故か右手はコートに隠れて見えません。

「・・・ばっちー、どうしたの?」

その目線に気付いたエンサーは、ほほ笑んでばっちーに問いかけます。

「・・・いや、なんで右手だけ見えねえのかなっておもって。」
「ああ!右手はね、むかしむかしにものすごいやけどを負ってしまって・・・
ほら、手袋をしているんだ。うまく動かすことが出来ないから、
ほとんど左手で生活してるんだ。」

言われてみれば、なるほど、真っ黒な手袋をしていて、
手首のあたりから痛々しい火傷の跡がのぞいています。

「うわあ、痛そうだな。」
「うん、ちょっと不便だけど、もう慣れっこだよ!」
「そうかあ、おれも人と違う手だけど、全然不便じゃないよ・・・」

”人とちがう”ということは、はたから見れば恐ろしくても、
共通点になってしまえば話題となって、
二人は何だか楽しく会話をすることが出来ました。
四人は前へ進みます。
白の部屋に向かって真っすぐに。

でも、それを見ていて面白くないと思う、
何かの存在はずっと一緒でした。











       

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