Neetel Inside ニートノベル
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悲しいことも苦しいことも、痛いこともひとつもない。
さあ、怖くなんかないんだよ。わたしはみんなのそばにいる。



白の部屋  第三話

「漆黒の友達」




「あれえ、扉がない・・・?」

森にそびえたつ大きな壁が冷たく立ちはだかって、何故か絶望的な気持ちになります。
ロゼはというと、ぶつぶつ呟きながら壁のさまざまをたたいたりなでたり。
特に変化も反応もありません。
リコはぜえぜえと激しく息をしながら、真っ黒な木の根元にぺたりと座り込んでしまいます。
エンサーはどうしたんだろう、まっくろで怖がりで気の弱い彼。
けがをしたり、苦しくなったり、していないだろうか。

「エンサー、大丈夫かな。」
「大丈夫だとおもうけど。」

隣にばっちーが座ります。
不思議な事に、妖精の二人はまったく息が上がっていません。
なんだかこころがもやもやします。

「なんで大丈夫だってわかるの・・・?」
「・・・だって、エンサー自分で大丈夫って言ってただろ。」
「そっか、そうだよね・・・。」

リコはうつむいてだまります。
隣の蜂はたちあがって、赤い妖精と壁の調査を始めます。
たたいたり、念じてみたり。それでも変化は有りません。
――どうしてふたりは心配じゃないんだろう?
もやもやが大きくなっていきます。
でも、バッチーの言う事も確かです。
信じてあげなきゃ、友達じゃありません。
疲れてしまったのか、なんだかまぶたが重たくなってきました・・・

・・・とんとん、と優しく肩が叩かれます。
驚いて振り向くと、樹の幹からのぞきこむ、笑顔のエンサーではありませんか。
リコはめいっぱい驚いて思わず声を上げようとすると、
彼は”シーッ”と人差し指を薄いくちびるに当てます。

「ふふ、おどろかせようとおもってこっそりついてきたよ。」
「だいじょうぶだったの?」
「うん、消えろ、消えろって念じたら、少ししてからきえてなくなったよ。
・・・ところで今、何してるの?」
「よかった!・・・あのね、扉が見つからないんだって。」
「扉が?うーん・・・ここに来る途中で見たあれかな?」
「見かけたの?」

うん、と彼はうなずいて、

「こっちだよ!」

とリコを案内するのでした。
足取りはとても軽く、走ってきた道から少し外れた所に
まっ白で金の装飾の入った扉が見えてきました。

「ね、きっとあれだよね!」
「うん!きっとそうだ!素敵な扉!」








「オッカシーなあ、ここら辺にあったよね、扉・・・」
「・・・あれ?リコ・・・?」

ばっちーは周りを見まわします。
リコの姿が見当たりません。
さあっと、二人の血の気が引きます。

「や、やだ、リコ?どこにいるの!」

ロゼの悲鳴にも取れる一言をきっかけに、二人は当てもなくリコを探し始めました。
自分が目を離したからだの、手をつないでいなかったからだの、
後悔ばかりが口から落ちて行きます。
ばっちーがふと、リコの居た木の根元をみると小さなの足跡が続いているのが見えました。
二人は今までにないくらいの速さで、
その足跡を追うのでした。

















       

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