Neetel Inside ニートノベル
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「あらら、かわいいじゃない」
  クリーム色のズボンに、水色を基調としたチェック柄の長袖Tシャツに黄緑色のパーカーに身を包んだメルト。尻尾はズボンからはみ出ていない。なんとかごまかせそうだ。耳も……まぁフードを被ればなんとかなりそうだし、防寒用の耳当てやら被り物はそこらにあるのでなんとかなるだろう。うん、なんとかなる。
  お袋はまじまじとメルトを見つめたと思ったら両手で抱え込みたかいたかい、メルトは最初こそは驚いた表情を見せたが俺やひさしよりも目線が高くなったと理解した瞬間身体全体できゃっきゃ嬉しそうに表現し、俺らに向かって「がぁおー」なんていってくる。大変可愛らしく微笑ましいのだが、その「がぁおー」なんていったときの口の形がまさにひさしを丸焦げにしたときと同様の形であり、さすがは空の王者と言われる竜の娘だなと、将来は安泰だなぁなんて思わせてしまう。まぁこの娘だいたい150歳なんだけどね。
「まぁ、キョウ君の言うことは信じてあげるわ。どう考えても尻尾が生えてる上に人の耳の代わりに爬虫類の耳がついてる女の子を誘拐してくることはほぼ不可能な訳だし」
「あの……友達の前でキョウ君はやめて。せめて恭兵って呼んで」
  となりでひさしが笑いを堪えているのがわかる。あいつ後でぶん殴る。
「まぁ、キョウ君はそんなことしないって信じてるし、そんなことしたら一生家には入れないつもりだしね」
  はぁ、と一言生返事。残念ながら俺のお袋は38になっても人の話を聞かない。それのせいで良く喧嘩になるのだが。まぁそんな性格だから老けないのだろう。しかし、派手な格好で表を歩き若い男にナンパされる姿をみるのは息子にとっては複雑であるし、今は行方知らずの親父にも気の毒な話である。
「それにしてもこのこどうするの?」
「いや、まぁ俺が面倒みるけどさぁ」
「ええ!あんた学校どうするの?連れていくわけにはいかないでしょ!」
「ま、まぁそうだけど……」
  一瞬だけ留守番という文字が浮かび上がったが、ぽっかり穴が開きプライバシー保護の役にたつことはなくなってしまった俺のドアと黒こげの部屋をみて一瞬で砕け散った。
「とにかく!学校にはいってもらうからね。」
  前途多難な日々の幕開けである。

       

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