Neetel Inside ニートノベル
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カーリー"の"エンジェル
呼ばれて飛び出てドドンと参上なのです

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   結局メルトは家で留守番することになった。それが不安で不安で仕方がなく、お袋に頼み込んで誰か一人はメルトについてやれればみたいな話をしたが、お袋は仕事があるしどうにもならないと、そしたら俺がしばらく家に残ると言ったらそれも却下されてしまった。理由を聞けば俺に真面目に学校に行って真面目に勉強してきて欲しいという親心でメルトに関しては「まぁ夕方までに帰ってくれば大丈夫でしょ」といういい加減な結論に至った。俺が幼少時代どういう風に育ったのか気になるが怖いのであえて聞かなかった。
  ただ、学校にいる間はやはりメルトのことが気になってそれどころじゃなく、休み時間も、暇をもて余したひさしが俺にちょっと話しかけるだけで1日は過ぎた。昼休みにメルトのことで真剣に考えていたら「いつもより顔が怖い」とか言う悪口が聞こえてちょっとブルーになったのは内緒だ。そして今はホームルームを終え、やっと解放されるはずだった。
「聞いて聞いてカーリー!実はわたしね!」
「ご、ごめんラムネちゃん今日はちょっと用事が……」
  俺に今全力で話しかけている娘は伊藤来夢音(いとうらむね)ちゃん。小さい背にショートカットの、いわば小動物系の可愛らしくていつも明るい元気っ子だ。ちなみに人生で初めて俺に自己紹介と世間話をしてくれた子で、唯一下の名前で呼べる女の子だ。確か伊藤という地味な名字で呼ばれるのが嫌らしい。全国の伊藤さんに土下座ものの話だが。まぁそんなラムネちゃん、俺の話を聞いてくれない。これは長丁場になりそうだ。
「最近スカイツリーに登ったんだけど……」
「へぇ、凄いね」
「もう!話の腰を折らない!」
  残念ながら作戦は失敗らしい。頼む、早く話を終わらせてくれ。そんな祈りも虚しく彼女は楽しそうにスカイツリーに登った自慢話をしてくれる。くそ!なんでこんな日に限って……
  話が終わったのが30分後。誰もいない教室からラムネちゃんはなんだかすっきりしたような笑顔で俺に手を振り帰っていった。ぬっとひさしが現れる。お前どこにいたんだよ。
「甘酸っぱいなぁカーリー」
「お前それで俺のことを呼ぶのやめろ」
「ラムネちゃんはいいのか?」
  ニヤニヤしながら聞いてくるひさし。否定できないのが悔しい。
「こーいーしちゃったんだ?」
「殺す」
「きづーいてるーんです」
  後で覚えてろ。そう思いながらスクールバックに教科書を放り込み帰宅の準備をする。
「ふぅ、ヤクザみたいな顔の男に純粋淫乱娘ピュアビッチの組み合わせはお似合いだとおもうんだけどなぁ」
  ガバッとひさしのブレザーの襟首を掴む
「だれだ!そんな酷いあだ名をつけたのは!」
「がは、くるしい……」
  ついつい力が入ってしまい、ひさしの足が空気を一生懸命掻いている。俺の顔の特徴的に明らかに非が相手にあるとしてもはたからみればカツアゲか、焼きを入れているようにしか見えないので仕方なく制裁はやめる。
「ゲホッ、くそ!クラスのなかでは結構流行ってるんだぜ。誰かれ構わず話しかけデートに誘ったりする様はビッチのそれなのに未だ彼氏いない歴=年齢。まさにピュアビッチ!って」
「名付けた奴を今すぐにでもシめてやる」
  入り口からヒッという短い悲鳴と廊下をダッシュする音が聞こえる。あと、デートに誘ってたりするのか、うらやまけしからん。
「まぁお前話し相手がいないからなぁ」
「うるさい余計なお世話だ 」
  それにしてもだ。あんなに人懐っこくて一生懸命な娘をビッチ呼ばわりなんて酷い話ではないか。最初こそはカーリー、カーリーなんて呼ばれるのなんて恥ずかしい話だったが彼女の笑顔をみたらもうどうでも良くなった。守りたい、あの笑顔。
  ふとメルトの顔が横切る。まずい、話しすぎた
「っと、そんなことしてる場合じゃねぇ!メルトぉ!待ってろよ」
  ひさしを置いて教室を飛び出す。

       

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