Neetel Inside ニートノベル
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空を闊歩せよ
翌日の朝は

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誕生日の翌日の朝は、やっぱりいつもと変わらない朝だ。ただ寝つきが良かったのか目覚めは快調である。
今日は押入れのドンの機嫌でもとってやろうか、お日様に当てればきっと防湿剤を入れてなかったことも許してくれるさ。
もしかしたらリモコンの機嫌も取った方がよかったかもな、家出だとしたら手が付けられない。本当にどこいったあいつ。

布団から這うようにしてにじり出る、にじり出るってのは膝を立ててじりじり出ていく様らしいが俺ほどになると気にしない。
テレビはつけられないから天気予報で確認はできないが、窓から漏れる陽光で大体わかる。
本日ハ晴天ナリ、今日も俺のためにご苦労。本日モ晴天ナリ。

気分がいいので今日の朝食はちょっとばかし豪勢にしよう。
電気ケトルに味噌汁一杯分の水を注ぎ、そのまま冷蔵庫に向かって卵を三つも出す。このいやしんぼめ。
ちなみに玉子は残り二つとなってしまった。貯まらざること金の如し。
本日は卵を二つ使って玉子焼きを作ろう、たまにはこんな贅沢も許される。めんつゆを出すのを忘れていた。

鼻歌なんぞを歌う性分でもなかったが今日は特別に皆様に披露することにする。
曲はエレクトリカルパレードのあれ、夢の国へご招待だ。二度寝は勘弁していただきたい。
始めの英語の部分までほにゃほにゃと再現しつつ流しへ向かうと目に入るのは流しの魔窟。
こいつ、まだ居座ってるのか。家賃を払ってもらった覚えはないのに図々しいやつである。
しかしまぁ、目に入ったなら仕方ないな。お湯が沸く前にぱっぱと洗ってしまおうか。どうせ一人分である。
玉子を傍らに置いて夢気分で皿洗いを開始、終了、拭く。この間精々五分である。今まで何を躊躇っていたのか。

そんなこんなで準備完了、玉子焼きなんてすぐ作れる。不味く出来ることもないしな。
しかしここで重大な問題に気付いてしまう。この曲、息継ぎができない。あと飽きる。
何より俺は夢の国に行ったことがなかった、これでは日本にNINJAとSAMURAIが現存すると思ってる外国人と同じだ。
もういいな、本日のお歌の時間はこれでおしまい。先生のピアノなしによく出来ました。
今日のパレードはこれにて終了、昨日よりよっぽど俺のことを考えていた。流石俺である。

変なことを考えているうちに朝食が出来上がる。あとはご飯に最後の卵をかけるだけ。
卵ふりかけなんてちゃちなもんじゃない。これこそが本当の卵かけごはんだ。
とくと味わうことにする、大地の恵みとインスタント味噌汁を送ってくれた母に感謝。送るものがピンポイント過ぎるぞ母よ。

今日の朝食は本当に豪勢だ、この玉子焼きのしょっぱさたるやそうそう味わえない。めんつゆ入れ過ぎだなこれ。
それに卵かけごはんに何もかけてないな、玉子焼きをおかずに卵かけごはんを食べるという不可思議な構図が出来上がってしまった。
そういった口の中のモヤモヤを母の愛情で一気に流し込む。あんまり美味しくない。母の味噌汁が飲みたい。

実家にいた頃を思い返してるうちに食事が終わってしまった、今日はすぐに歯を磨かず余韻を味わいたい気分。
ゆっくりしていてもいいんだ、なんたって今日は休日だ。
今日は何をして過ごそうか、まずは布団の機嫌取りか。その前に一眠りしてもいいかもな。
何をするのも俺の自由だ、風に身を任せなんてしない。俺が道を選べるのだ。
だって、俺にはこの足がある。この足さえあれば、空だって歩けるのだ。
あの道のない大空を、俺はいつだって歩いてみせる。

そうだ、まずは母に連絡をしよう。昨日はありがとう、味噌汁には助けられている。また母さんが作った料理が食べたい。だが帰るのは年末年始くらいだ。
送っても当日に返しなさい、この常識知らずめ。母を何だと思っているか。なんて怒られそうだ。そうなったらどうしようか。とりあえず放置だろうか。
それからそうだな、彼女にも連絡をしておこう。昨日はありがとう、ケーキは美味しかったです。明日はどこへ行きましょう。二人で決めましょう。
なんて、送ったらどんな返事が来るだろうか。そこは男が決めろなんて言うだろうか。
でも、自分達で決めた道を歩けるのが人間なんだ。休日の俺達はどこへ向かっても無敵さ。


母よ、あなたの息子は元気です。空をも闊歩する男です。あなたは誇りに思っていい。
愛する人よ、明日が楽しみだ。あなたの隣を歩く男は、屋上でばたつく不審者だ。あなたは気付かなくてもいい。

阿呆なことを考えてないで、そろそろ機嫌取りでも始めようか。歯を磨くのもその後でいい。
今日は休日。昨日は誕生日。誕生日の翌日は、きっと素敵な一日だ。

       

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