Neetel Inside 文芸新都
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パンドラボックス
パンドラのハコ

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むかしむかし、あるところに一人の少女がいました。

彼女は生まれた時から、ハコを一つ持っていました。

両親はその女に「決してそのハコを開けてはならないよ」と何度もきつく言っていました。

やがて少女は成長し、ある男の元へ嫁ぎました。

男は聞きました「そのハコの中には何が入っているのか」

「私は知らない、けれど決して開けてはならないと言われてきたわ」そう女は言った。

それから、男はそのハコの中身が気になって仕方がなくなりました。

ある日、女が出かけている間に男がこっそりとハコを開いてしまいました。

しかし、そのハコの中は空っぽでした。

男は失望し、ハコの蓋を閉じてしまいました。

それから男は、深い後悔の念に襲われました。

「妻が決して開けるなと言っていたハコを隠れて開けてしまった」

男は強く自責し、女に打ち明けようと思いました。

やがて、女が帰ってくると男は直ぐに打ち明けました。

「すまなかった」男は謝りました。

「いいんですよ」女は優しく諭しました。

「誰だって気になります、でも、何もなくてよかった」

女はそう言って、優しく笑った。

しかし、そのハコの中には、決して見ることの出来ない沢山のものが入っていたのです。

疑念、嫉妬、殺意、悪意、妄執、害意など。

ありとあらゆる見えない悪徳が詰まっていたのです。

それらは、ハコを開けると共に飛び出し、この世に蔓延しました。

世界を満たし、人の心から飛び出すようになったのです。

しかし、ハコの中にただ一つだけ残ったものがありました。

それは「希望」

あるいは「良心」とも言い換えられるものでした。

それだけは、ハコの中に。

人の心というハコの中に残って、決して飛び出していくことはありませんでした。

       

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