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新都社 漫画評論集
脳欽ちゃんふたたび(後藤先生の回答に対する発展的再回答)

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今回は、再度、脳欽ちゃん、えろき先生の漫画について触れよう。

こちらは、後藤健二先生が、ぼくの脳欽ちゃんに対する批評に対して、回答をされていたので、今回は、ぼくが再回答を試みようと思う。

このような、有意義な論証ができるときこそ、評論をやっていてよかったという
感慨を持つことができる。

このような機会を与えてくださった後藤健二先生に感謝させていただきたい。

で、今回のテーマは、「脳欽ちゃんは、果たしてキャラが立っているかどうか」である。

今回の回答に当たっては、
精神科医、斎藤環先生の著作「キャラクター精神分析」のキャラ論がベースにさせていただいた。

http://d.hatena.ne.jp/sakstyle/20111002/p1

めちゃくちゃ難しい本で、斎藤先生も力作なのにほとんど売れないと、どこかの雑誌で嘆かれてたので、買ってあげてください。

この本で書かれているキャラの定義は、僕自身も完璧だと思っているのだが、この文章でいきなり結論部分を書いてしまうと、何を言ってるのか、わからないと思われるので、今回の文章では、この定義をぼく自身の言葉で、わかりやすい形で、援用させていただいた。

1 キャラとは幽霊である。

キャラとは、存在していないにも関わらず、感情を誘発する何かである。幽霊が、存在していないにも関わらず、恐怖心を誘発するように、キャラは、存在していないにも関わらず、むしろ、存在していないからこそ、読者の愛情を誘発する。

萌えとは、存在していない対象に対して向けられる恋愛感情の一種である。
ただし、萌えるにはアニメ的な図像が不可欠である。
ちなみにサディズムも恋愛感情の一種であり、萌えに転化した場合、そのサディズムをリョナと呼ぶ。

日常の感情としては、動物に対して向ける愛情が、萌えの感情に近い。

2 キャラ立ちさせる条件とは何か?

これは、もう、結論から言ってしまおう。キャラ立ちの要件は、たぶん2点あり、それは、

① そのキャラについて言葉で語れること。
② キャラ間の差異。

ではないだろうか。

①について説明しよう。

立ったキャラと言うのは、スペックで表現しやすい。
例えば、しゃべり方に特徴があったり、身長が高かったり、低かったり、性格が、冷酷であったり、優しかったり、髪型がボーイッシュであったり、ロングであったり等々。

「スペックで表現しやすい = 言葉で語りやすい」

ものがキャラである。キャラの図像と言うのは、あくまでも、そのキャラが同一のキャラだとわかるための文字であると思っていただきたい。
ただし、本当に萌えの感情を読者に誘発しているものは、図像の方ではなく、この「言葉で語りやすい」方である。

これは、キャラが内面を持たないことの裏返しの現象である。

②について説明しよう。

キャラとは文字の一種である。恋愛感情を誘発する不思議な文字のことである。そして、その文字が、その意味を持つ条件は、ほかの文字間の関係性で決定されるのだ。したがって、キャラ立ての要件としては、キャラ間の差異や、その度合い、関係性が重要になるのである。

どのような尖ったキャラを考えても、そのキャラだけで、キャラ立てはできない。

で、これを、僕流に誌的に表現すると

萌え漫画家(リョナも含む)とは、そのキャラと言う文字を使って、ラブレターを書いている人たちのことである。
漫画家たちは、その愛情を、文字(キャラ)に向けているが、そのあて先は、萌えと言う感情を共有している人たちである。

そのような意味では、萌えとは、100%失恋で終わる切ない恋愛感情であると言っていいだろう。

このように、「図像=文字=キャラ」は重要であることは間違いないのであるが、図像の方に萌えの本質はない。

萌えの本質は、上記①、②である。

3 上記の仮定に立った時に、果たして脳欽ちゃんはキャラが立っているかどうか。

ぼくは、前回、失礼を承知であえてえろき先生に「キャラが立っていないかもしれない」という点を指摘させていただいた。キャラを立たせるには、図像的なクオリティ以上に、上記、①、②の条件が重要であると思われるからだ。

で、萌えと言うのは、恋愛感情の一種であり、萌え(リョナも含む)漫画家は、この恋愛感情を読者に起こさせて成功と言える。

えろき先生の漫画は、今でも十分に面白いのだが、キャラが立ってくると猛烈に面白くなる可能性を秘めているとぼくは勝手に思っている。

キャラが立ってくると、えろき先生の作ったキャラは、読者の恋愛感情(サディズムも含む)を自然と刺激してくるはずだ。

その段階で、脳欽ちゃんは、猛烈に面白くなる。









       

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