Neetel Inside ニートノベル
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したためたん
30分即興作品「タイトル/落ちているもの」

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そこに落ちているものは何だろう。
例えばきみにとってはなんだ?
思い描いてみるといいかもしれない。何もない場所に落ちている自分にとってひつようなもの。それって何?
欲しいものだろうか。誰かにあげたいものだろうか。捨てたいものだろうか。
作りたいものだろうか。発見したい何か? 答え? ふうむ。
考えさせてばかりではなんだろうから例えば私にとって何が落ちているかを書いておみようか。
そうだな。ここには……ライターが落ちている。こいつは必需品だ。火をつけるのにいるものだし。BBQのランバーに火をおこすときに使うのに絶対いる。また、たばこを吸う客がきて手持ちのライターがなかったら貸してあげなきゃいけない。ライターは貸すけど喫煙スペースは貸さない。私は意地悪だからな。たばこは室内では吸ってもらわないことにしている。だから外で吸ってもらう。
他にもインフラは整った場所に住んでいるけどこう見えて(見えてないだろうけど)停電がしばしば起こる。そんなときに蝋燭へ火をともすのにも使うのだ。
ほらな、もうだいたいこうして書き連ねているうちにそこに落ちているもの、ここではライターだが頭の中に浮かんできたのではないだろうか。
それでは一体そいつはどんな形状をしているだろう。
短く小さいものだろうか。それとも長い? 色は? 素材は? 重さは?
因みに私のそれは結構大きくずっしりしている。素材は取っ手が青いプラスチックで火の出るチムニー部分は黒い金属でできている。長いのでちょっとした銃のよう。ほらさ、長くないとBBQをするとき火元へ手が近づきすぎて火傷するからあぶないだろう。だから大きいライターを持っているのだ。察しがよい人なんかはBBQという言葉を見て形状が長いくらいには気がついていたかもしれないな。
しかし忘れないでほしいのは実際にそのライターはここにはない。
私はそのライターをこの目で見てはいない。
不思議なもので、こうして書いているうちに目の前にないものも特徴を上げてみるとさもそこにあるのではないかと思えたりする。実際は目のまえにないし触れてもいない。だけれどそれはあたかも存在するかのように心の中でちゃんと見えている。
実におもしろい。
しかも私は冒頭落ちているといっておいたのでライターはちゃあんと落ちている。
どうしてだろう。思いえがくものが物体だからだろうか。……はてさて。
ならば物体でない何かではどうだろう。
落ちているものは……そうだな、ちょっとかっこよく勝利とでもしてみようか。
これはいけない。たちどころに筆が止まりそうだ。たちまちそれが落ちているのか、それすら分からなくなった。何じゃそりゃ、だ。
そしてこの言葉をどう扱えばよいかもわかんねえ。なんと言葉使いまで悪くなったぞどうしてくれる。難易度あがったぞ。私はね、それほど文章表現にもので長ける人ではないだよ。だからからっきしこいつの扱い、表現方法がわからないね。こんな短い時間で即興書きしているせいもあるけど余計に文が浮かばない。ひねり出しても出るわけがないだろうと投げたくもなる。はっきり言って泣きたい。まあそれは置いておく。
その……、落ちている勝利ってものだが……。
落ちているからには誰かが、あるいは自分が拾うのか。拾う前に何処かへとばされてしまうのか。流れるのか。そもそもそんなもの落ちているのか。見えるものであるのかもわからない。
さてどうしたものだろう。
物体じゃない。これといった形も重さもないものを思い描くとき、書き下すのはなんて難しいことだろう。
言葉を尽くせばそれはそこにあるように見えるのだろうか。多分違う。そもそも尽くす必要はないのかもしれない。何せ測りようのないものなのだから。勝利へ導くシチュエーションもない。
何をどれだけどうこうやれば書けば勝利がそこにあると感じられたり見えたりするのか。
残り二分になってしまったのでそろそろタイムアウト。もう書けない。
回収できる答えの見つけられないままこのお題はとじておくことにする。
30分。なるほど書けないものだなあ。
ああこれが時間に負けたってことなのか。私は勝利を拾い損ねたな。
ありゃりゃ。

       

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