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「ミシュガルド戦記」   ミシュガルド・サーガ 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18210

更新きてくれると思っていました!
一番乗りありがとうございます!!
前回本作の感想を書いた際、ご丁寧に作品のほうでもコメント頂いておりました。
リンクまで貼っていただきいやはや恐縮の極み。
以来話数も順調に進んでいて読者をしっかり捕まえておられるもよう。
文芸ファンタジーの頭をになうか一翼をになうかいずこといったところでしょうか。
ミシュガルドの風、まだまだ熱く吹いているもようです。
頼もしい! これからも期待。



■各話ごとの感想
5話 迫りくる脅威
無事任務を終えたゲオルクは亜人の城へ戻る。一方、亜人を非人道的に扱う丙武軍の野営地では荒んだ光景がお決まりだった。
この回で登場した「幻肢痛の一種」。この言葉がとても人間らしい奥行きを感じさせてくれました。機械にこそなってはいるものの、こういう感覚があるのこそ、人として自然だと説得力を感じる。読み手としては感覚を作中の人物に重ねることができてよい。
丙武の目的を果たそうとする姿勢、目的のためには手段を択ばない武人ぶりはどこか研ぎ澄まされたストイックさを秘めている。非道ではあるけれど信念が伺えて良い。

6話 戦う理由
広がる戦火を逃れ、幌馬車移動をするアルフヘイムの民たち。手狭な馬車の中、仲睦まじい子供たちは微笑ましい。
ゲコの奇異な口調が印象的です。気色悪く書かれている。良い。
少し出てきたセンチなウォルトと潔癖なヨハンもいいキャラクターで、今回ちょい役での登場だけど味がありました。

7話 流血の河川
丙武軍の多くは密林侵攻で難儀していた。メゼツは別所で部下と安穏としていたところ……。
ヴォルグランデの「御意」ばかりに草。
ガザミの腕が生えてくるという現象いいですね。困ったときはおかずにできますね。

8話 空に舞う
空軍と海軍の出番が長かった戦況は近年陸軍の活躍へも移行を見せる。先進を見ない陸戦兵器での戦いに甲皇国軍の勝機はあるのか。
ジィータの理想に首をふるゲオルクの姿と台詞が心に沁みます。現実を突きつけることから抗えない。戦争って悲しみの遺産しか残せませないのか。
いや、違う。先に戦争は技術開発の母であると本文でふれている。
されど人々に残される悲しみの傷は深い。技術はこんなにも辛い中で革新して行くのだ。この無情観を綴られているところに好感が持てました。人の業を感じます。
丙武の心残りの最後の面が浮かぶようでした。彼の殺戮への執念が復活はあるのかと期待せずにはいられない。この人良いキャラクターだ。

9話 甲皇国の闇
丙武軍勢を退けたゲオルクたち。ゲオルクの若き日の物語が始まろうとしている。
ゲオルクと言う人物を見ていると、現実のおっさん世代の面々を見ている気持ちになります。自分なんかよりもっと年配でそれこそ真の中年。30代はおっさんに非ず。(壮年期の何かいい呼び方ないかな)ファンタジーも一つの社会で舞台とすると、何ら変わらないと感じさせる。
ゲオルクの、彼のこの世界のあり方は、世の中(戦場)で場数を多く踏み、様々な責務を潜り抜けてきた。しがらみや重責に立ち向かってきた威風を感じさせます。これこそ彼の持つ魅力でかっこいいところだと思います。この人物の過去だからこそ見てみたい何かがあると期待する。

10話 ミシュガルド計画 1~4
報われ難き恋に目覚める若きゲオルク(19歳)は丙家台頭へむけてその身を投じることとなる。
ゲルに笑いかける優しさ溢れるホロウィズ。真の腹内に抱える闇は誰よりも暗そうです。このお爺さんをこれからどんなふうに扱ってくれるのか楽しみなところ。駒使いを見極めたい。



■総括的感想
甲皇国の内政にも触れてくる部分が多くなって内容的に分厚さを感じました。非常に楽しめたと思います。登場人物の使い方もよくて、人間味を感じさせてくれます。それだけ書き手がちゃんと人物を操っているからなのでしょう。人物の扱いになかなか隙がない独自性を感じます。
汚い奴もいて腹黒い輩もいて……、そう、それが戦争。それが戦記になると思わせてくれたのではないでしょうか。
小粋な設定なども見受けられ妙に説得力を感じる場面もありました。甲皇国の荒れた内情(貧富の差からくる民の暮らしぶりの様子)は圧巻といえました。
前回感想を書いたときに物語の雰囲気や軽さから、ニノベよりかと感じていたのですが、今回読んでいく中で、やっぱりこれは本格的に文芸の雰囲気だわと納得できる気持ちに変化しました。
個人的に感じる範囲なのですが、作家さんの言葉選びや文章作りが文芸っぽい。文芸に傾倒のある文章。そんなふうに感じたところもあります。時には大河ドラマを思わせるような下りもあり、筆筋に憎らしさを感じたところもありましたw
「戦争は新たな技術開発の母だ。」なんて格言に近い。これをドーンと頭に持ってくる強さがなんとも言えません。
他、本文内容にふれると、各話ごとに導入部分が親切に読み込みやすく連ねられているので物語に入りやすいです。
本作の軸にはゲオルクという武人がくっきりある。しかしそれだけでなく様々な人物が既に登場し命をもやし消えて行く。戦記らしくどこまで歴史を繋いでくれるかこれからも楽しみなところです。ミシュガルドキャラがどこまで登場するのか。期待が込められている作品ではないでしょうか。キャラが終わるか、戦記が完結するか。作家は書き続けるこの世界の記録を。
相変わらずミシュガルドの世界設定・人物設定は詳しく読んでいないのです。
それでも十分本作を楽しめています。これはもう作家さんの力量と言えるでしょう。
作家さんがんばれがんばれ! 今後に期待!!



以上感想おわり!


       

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