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「黒兎物語」   バーボンハイム 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18317

漫画でもお馴染みのバーボンハイム先生の作品。
「アサシーノス」は漫画作品に無知な私でも有名と知る。
因みに、バーボンハイム先生の漫画はいずれも未読です。
感想企画終了後読ませて頂こうかと。
そして今回なんと小説のほう、正直驚かされました。
文章作品において他の文芸作品と全く引けを取らない書きっぷり。
感服するところが多かった。
更新話数が多いのでいくつかの章をまとめながら感想を書いていきます。



■各話ごとの感想
1アルフヘイムの深淵~3ダニィとディオゴ

アルフヘイムは亜人のユートピアか。否違う。その世界には一つの悲しみを背負う種族がいる。洞窟の中、密やかに愛を確かめ合う若い男女の黒兎人族の姿があった。
生物学的に悪い影響を受けることなく子孫を残せる強い遺伝子を持って生まれた黒兎人族。しかしその強者が迫害を受けてしまうという構図が皮肉で不謹慎にも興味をもってしまう。
有能でも受け入れがたきものは叩くというのは現実でもある。どこか重ねてしまう現象があり初っ端から物語に引き込まれます。
こわごわとするモニークの挙動が拙いセリフからうかがえました。情報量が少なめの文章。悪くない。
洞窟の閉鎖的で静けさを感じる空間で交わされる二人の密かな声や動きが滲み出ている気がする。
モニークの辛い過去がディオゴの心に闇をつくり、彼は戦場で狂人と化した。
ディオゴの背負う妹の苦しみが、彼の見せる悪辣ぶりからうかがえます。良い。

4神にのぞむ幸せ~6ダニィの音色
愛する恋人はそばにいても遠い。モニークが抱える傷は恋人関係に暗い影を落としていた。一方モニークの兄ディオゴも戦場で心は荒れていた。
ダニィの我慢を強いられるところ、物悲しい切なさを感じます。同情のような。そう思いながらも彼が神に祈る痛烈な台詞さえ、え?それ男の本性じゃないよねと疑ってしまう自分のゲスぶりも自覚しました。
ディオゴのほうはむしろ嫌われ役を買ったのではないだろうかと思っていた。
モニークの為に奏でるダニィの音楽。音は彼女の心に届き、寄り添う事のない身体の代わりに魂と添い寝しているのでしょうか。優しく書かれていたように思った。

7セキーネの苦渋の進言~9メラルダの腹の内
甲骨国軍丙武の蛮行は亜人たちを震え上がらせる。甲骨国軍の危機が迫りくる中、兎人族は白と黒、和睦を成立できるのか。
エロ黒兎のディオゴに交渉が務まるのかと少々心配しましたが、彼よりもむしろ、ダートの爺さんのほうがエロかったw

10平和のための止むを得ない犠牲~12許し合うこと…
和睦交渉が進む中、ディオゴには拭い去れない懸念があった。
ディオゴがダートスタンに向けてはなった台詞。争う者たちの心情を映す力がこもっていて良かった。
台詞からうかがえる彼の印象、ずっと芯のある男だと感じられ見直したところでした。直情型の発情兎ではなかったこの男の株は上昇の一途。
セキーネはあんまりいい亜人物ではないと見ていたけど、12話で印象よくなりました。
男として話し合えばこんなにも分かり合えることが出来たのかと思うと、黒兎と白兎の味わってきた苦渋という汁の味は苦すぎて、腹に重い痛みを残す毒だったと思うとホントやるせない。
10~12話は一際内容が濃く重かったです。
あとミハイルさんのギトギトした嫉妬に期待している。

13マルネ・ポーロとダニィの優しい音色~15君こそ僕の故郷なれ 僕こそ君の故郷なれ
白兎族と黒兎族の和睦成立より、ダニィは再びディオゴに以前ように好感を持つようになっていった。そんな彼の奏でるロンロコの音色は優しく、遠く残してきた恋人モニークへの思いを忍ばせてか。
なんとも言えない恋人の新たな再出発を見せてくれたのでshないでしょうか。それでも互いに近くにいられないという歯がゆさにうたれます。
ダニィ無事に帰れるといいですね、そしてモニークには何も起こりませんようにと願うばかり。いつか普通にラブシーン見たいと思いますね。

16コネリー高原の攻防~18スカイナイト、空の英雄
丙武軍はコネリー高原・トレイシーフォレストにて兎人たちの猛反撃をくらい苦戦を強いられてリタ。白兎族と黒兎族、和睦によって結ばれた援軍を得た兎人にもはや勝ち目はないのか。空の英雄ゼット将軍現る。
丙武の醜く悪態をつく姿が戦線の血なまぐささを彷彿とさせます。対してディオゴとセキーネの別れ際の美しさは眩しいほど後世まで美談となりそうな絵図。
使われている単語に一々笑うのはもう、仕方ないですね。こればっかりはw

19屈辱の咆哮~20白い悪魔
苦戦の中、撤退を強いられる両軍の雄丙武とディオゴ、敵に背を向けるしかない二人には同じ屈辱が残った。
丙武とディオゴ、次会いまみえるときがあるのでしょうか。あるとすればどんな形で終わるか楽しみです。
最終20話目ではさらに迫る驚異の観測! どこまで行くのか奥が深待ってくるこの物語。
兎人の未来は如何に……。
作家さんにはぜひ頑張って欲しいです。期待!



■総括的感想
一話ごとが短くて読みやすいのでサクサクと読めてしまいます。ミシュガルド戦記を先に読んでいたせいもあってか、「黒兎人族」には馴染易かったです。パッと思い描きやすいキャラクターが主役だととっつき易さがある。
加えてディオゴの生みの親である作家さんの執筆している作品ともなれば、丹念に描かれる人物像に俄然目が行きました。登場人物たちの台詞にも説得力を感じられるものが多く、それぞれのキャラクターが魅力的に映ります。
ディオゴの行動からは、彼がモニークのことで抱える切なさと、はがゆい思いがひしひしと伝わってきました。
モニークは、もどうにもできない辛さから、義理の姉との会話をきっかけに再び恋人への熱が燃え上がるところは情熱的で、彼女の待ちきれない気持ちを良くうつしていたと思います。
ディオゴも序盤は戦場で見る強姦魔の化身的扱いかと思いきや、和睦交渉あたりから彼が冴えてる切れ者だということが馴染んできて作品に読み応えを感じはじめます。
内容は部族に焦点を置いている物語ですが、そこには舞台としているアルフヘイム内での各兎人の立ち位置や複雑な人間関係を面白く群像劇として描いてくれていて読ませてくれました。先の感想で書いたミシュガルド戦記とは全く違った楽しみ方ができていたと思います。
フィクションとして、本作は部族差別闘争が出てきますが、現実でのモデルになりそうな出来事があるだけに考えさせられる部分もいくつかありました。日本にいるとそれこそあまり意識はする機会はいのですが、多民族国家だと、暗黙の了解のルールとして社会に溶け込んでいる部分はないとは言い切れない。センシティブな部分だけに闇を感じさせてくれる臨場感のある作品であったもと感じます。



以上感想終わり!


       

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