「ピーラー」   53 作
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読むほどに一体これは誰が書いているんだ? 本人か? と錯覚してしまう作風。それが53先生の書かれる作品の魅力ではないでしょうか。登場人物の思考にそのまま気持ちがのっかていく。そんな印象です。こちらの作品、連載開始は2011年6月2日というなんと長期連載作品。実感がなくて今回も、あれ? まだ完結していなかったのか? と思いました。こちらの作品を私が知ったのは数年前。後藤先生主催インタビュー企画の53先生の回でした。それから思うと割と作家歴の長い作家さんで当時私はこちらの作品を読んでいませんでしたのでインタビューをきっかけに読ませてもらうようになったのでした。実際のところ連載作品はいくつかお持ちですが、どれもゆっくりの更新をされているようです。しかしどれも浅い書き込みではなく、しっかりとした作家の個性を伺える作風になっていると思います。他作品に「ジェンガを続けるために」、「第五十三廃棄物最終処分場」、「臭い女とババア(完結)」他、過去企画へもちょいちょい参加されてましたっけ? 



■各話ごとの感想

一、スロースターター

この回はヒロイン舞が高校入学して、その性格からぼさっとしているうち思いもよらぬ友達グループに組み込まれ、そこでのよもやま話が主に書かれていました。


お、お兄ちゃんとやる話かと一瞬おもって期待したら瞬殺された。
女子高生のグループという面倒くさそ~うな代物。これからずっとこういうの続くのかな…気が重い。
ピーラーって最初どうしてこのタイトルなのかと思ったのですが、なるほど。確認した。


ヒロイン舞。この人の内面が面白い。というかむしろ女の子って、こんなこと多かれ少なかれ皆考えているの? と思うと面倒くさそうだなぁと思った。
そして舞の混ざったグループ、これもまた相当面倒くさそうで笑う。
1と2を通じて見えること、とてもかったるそうな女子高生の感覚。それが妙に現実味があって凄いと思った。


1、2、3まできたけど、更新一話分すごく短いのに、どれも内容が濃いですね~。
先生という肩書がなければ皆もっと学校の先生は気持ちも楽になるだろうし生徒とも上手くやれる? かと思ったが、実際そうなっても直ぐに何か変わることはなさそうとも思った。
だからここに出てくるような保健室の先生はどこでもいい調整剤なんだろうな。保健室の先生って女子アイドルユニットと同じ人数くらい保健室にいてくれると嬉しくないですか。AKBくらいでどうでしょう。


何やかんや内心では文句の多い舞。学校での社交辞令を学ぶのだ! 面倒くせーのは皆同じだ(多分)私が言っても説得力に欠けるが。
携帯電話とられても発狂しない大人です。でもPC取られたら間違いなく発狂します。
自宅でしばしば停電にあうのですが、そうするとPCは作業以外役に立たないツールなので機嫌が悪くなります。


女子高生というのは家の近所でいつも群れているおばちゃん連中と変わらないでしょう。断言。おばちゃん連中はきっとこのころから進化してないに違いない。そして自分もこのアホさは変わらない(自戒)


5でのグループ=島。舞の友人? ナギーのこの考え方にも笑ったけど、やっぱりこのつるんで何かしないといけないという感覚に笑ってしまう。


冒頭の料理をする所帯じみた下りがとても現実味があって良いとおもった。53先生料理されるのかな?
先生を内心でディスるとき、舞はいつもどんな顔しているんだろうって気になる。


高校生はどうして煙草をあんなに吸いたがるんだろう。高校生だけでなく日本人は煙草好きなんですね。それでもずいぶん私の親の世代なんかよりは喫煙者は減少傾向にあるようですが。
出島表現の次は中心北極行け表現。舞のお兄ちゃん(彼氏)上手いな。いや、これは作家が上手いんだけど。


語学は使って何ぼですから…。使わない勉強はクイズと同じで、ひたすら暗記で点を取れるのです。断言。
でもそういう勉強はいざ使わないといけないとき苦労するのです。経験をもとに断言。(あ、頭痛…)

10
舞は高校生活スタート時期に精神的に粘っこかったけど、とりあえずめでたしめでたしという気持ちになった。
彼女が生き生きしてきた感じがする。

二、ブルーサマー

この回はグループの悶着を終え夏休みに入る舞の生活、その目線は高校生らしい生活へ移りまた新たに立花という男子と親睦を深めていく話でした。


稀に表れる立花、なんか臭いです。笑う。 この男子は臭う。


学生の本分に触れてこない先生は人気者になれますね。全体主義、社会主義みたいな戦後の日本教育現場の様相を押し付けてこないので保健室の先生。やっぱり好印象。
東京事変てまた懐かしい……。


立花の精一杯ぶり爆笑。舞、もっと貶そう。踏んでもいいかも。


椎名林檎の次はイエモンて。懐かしすぎる。 こんな私も惰性でピアノを8年続けていた。あの8年はお金をどぶに捨てていたみたいなものだ。おかげで楽譜は読めるようになったけど。


男子の唐突な欲情行動とそれに理解できない女子の論理的思考の対比がとても良いと感じた。この作品、読めば読むほど、読者設定を高校生にした少女漫画雑誌で連載されそうな勢いを感じる。心理描写もだけど、女子の行動パターンとか本当に凄い。


ここまで読んでくるとすっかり舞の思考に馴染んでくる。ああ、この人こんなこと考えるんだろうなとわかってきます。作家の人物の作りこみの深さに感嘆。舞は安定の腹黒さ。


立花の行動、ちょっといけないことを女子にするのですが、このじらし方は悪くないと思った。もじもじ感を楽しめた。現実でも1回二回なら思わせぶりで終われる。毎回だとさすがにきついけど。あと、現実ではこの年頃だとなかなか異性に自作小説を読ませるのはハードル高いと思った。それをこの作品ではとても上手く取り上げて扱われている。良いな。


舞の友達にセーラ様という人がいます。この女子、当初から思っていたのですが絶対いい人。それをこの回でしっかり書いてくれていました。ここがなければ舞の友達関係が本当に薄っぺらいものだけで終わってしまいそうでしたがそれを覆してくれます。嬉しい。


53先生に中二表現コテコテの作品書いてほしくなりました(ネタです!)

10
立花、変わり身の早さよ。

11
立花の母参上です。怖いです。しかしニヤけます。舞の心描写、そして立花母とのやり取り、立花本人の行動、全部笑えます。緊迫したシーンだからこそ笑えるっていうのがありますでしょう。ここではそんな感じでした。
この立花母、大人の考えというのもあるんでしょうけど、やっぱりいけないでしょう。高校生相手に大人げなさすぎた。それが滲みでているのを実に良く書かれている。

三、アンチピーターパン

舞の入った生物部に留学中だった先輩がもどってきます。本作初のイケメンという人物登場。ちょっと、腹黒の舞とどんなふうに絡まっていくか興味深いです。


■女子高生・舞の高校生活を通じて見えてくる高校生の社会、人付き合い。青春ともよばれるのでしょうか。
女子高生をもとにした作品で文芸ではもう一作、ヤマダ先生の作品を既に読ませてもらいました。そちらのほうはまだ話が序盤でした。しかし53先生のこちらの作品はかなり話数も進んでいます。どちらがどうこうは今論外。しかし共通して言えことが一つ。人物描写。これにおいてどちらの作家さんも非常にいい表現をしてくれていると思いました。53先生に関しては、その作風からうかがえるようにいつも安定して登場人物の人物像ががっつり見えてきます。
小説、漫画といった広義でいう物語なら何でも、それを表現するうえで最も重要とされるのがこの人物を書くことだとよく言われます。登場人物がどういう人間で、どんな考えで動いているのか。人物がしっかり書けていないとその行動の意味を失う。行動の先に人物像が見えるのもまたしかり。しかしながら私は自分の作品でここまで表現してきたことがあるか。いや、ありません。むしろそれを言うならできていないほうでしょう。まあ、それだけ下手糞ってことです。その辺自覚はあります。そりゃね。
「ピーラー」は舞の目線で常に物語は進みます。彼女の思考、それは時にくどいくらいの描写で周りの人間に対する攻撃や疑問、賛辞などの表現として書かれています。彼女が周りの人から受ける刺激に逐一ああだこうだと自分の了見や主義を当てはめていきます。ですがそれも時には可笑しく、微笑ましく、つっこみをいれたりしたくなります。高校生らしい思慮の浅さもちゃんとあります。そこには読者が物語に入り込む隙を作ってくれている作家の誘導の巧さを感じるばかり。ヒロイン舞の目線に沿うような形で物語の世界観を魅力的に見せてくれました。
これだけのことをただ読むだけで思わせてくれるのですからこの作家の文章力の凄さはお分かりかと思います。
本作今後の動向へも目が離せないです。未読の方はぜひ読んでみて欲しい一作です。


■作中特に印象深かった箇所

・先生は笑いながら、保健室から一年の廊下は見えるのよと言った。
大人の目線、若さの目線、見るところの違いを強く感じることができた一文。
・生臭いけど生々しくない死に近い匂い、鉄の味、さらりとした口当たり、最後に美味しい体液だと思う。
この作家は中ニを書かせても絶対臭くいっちゃってるの書いてくれるのでは? と思った一文。
・独立記念日だ。インディペンデンスデイだ。
どういう道のりであったかは別として結果的には舞が勝ち取った自由という気がした。ここまで来るのに長かったんじゃないか彼女。とても言いえている表現で良い!
・暑いのと羽目を外すのに何の関係性があるんだよ。
これとても現実味のある一文だと思った。対面で何を考えている? と思うような。舞は正しいと思う。
・今のあたしはあんたに頼らなくたって生きていける、と足を踏みしめた。
舞がようやく自らの武器に気づいてくれた一文。インディペンデンスはここでも有効。
・動かしている手を見ていると指先の逆剥けが気になって毟り取りたい衝動に駆られる。
手コキのシーン。妙な現実感。小さなことなのに気になるとそればかりで頭の中が支配されていくのよく分かる。


以上この作品に関する13日更新分までの感想はここまで。