「探偵ロックンロール」   七瀬楓 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17422

ニノベの重鎮であり、投げ作家の重鎮でもあるこちらの作家さん。投げの潔さに関しては誰よりもそのセンスに秀でているのではないでしょうか! その投げ時の見極め、鮮やかさは右に出る者なし。あ、投げてなかったら申し訳ない。しかし、投げることはそもそも悪いことではない。完結作品が善と決めてしまうのもこれまた違う。そういう意味でこちらの作家さん、その自由な姿勢というのは賞賛に値すると言えるでしょう。投げてはまた作品を生み出すエネルギーは何度も甦る不死鳥を思わせます。実に発想力豊か。社会の歯車の中にその身をおきながら悲鳴をあげつつも苦悩しつつ、置かれている現実を投げずに立ち向かう? その姿はハードボイルドを目指す作家としてあまりにも有名。固く茹で上がるその時を皆まだかまだかと待ちわびているのではないでしょうか。いや、あまり気張りすぎず、半熟でもいいかもしれませんね。現実でも程々にうまく手を抜いてください。
今回の更新ではミステリ。以前の作品で探偵小説もありましたね。そちらのほう未読ですがいずれ読みたいところです。


■各話ごとの感想

0 黒髪ストレンジャー
クラス内でのちょっとしたトラブル。その犯人捜し。
冒頭の三行だけでも学生の倦怠感が素直によく出ていると思わされました。学校の授業って眠いですね。あれどうしてでしょうね。興味のある無しにかかわらずひたすら詰め込ませる受験のためばかりの知識。そりゃ嫌にもなりますねぇ。
高校時代は私も授業中よく寝てました。しかし辛うじてノートはとっていました。後で見たらどこかの国の筆記体の文に自動変換していたようです。それほど優秀だったのですね、わはっはっはー。
主人公の栗林相互にいきなり黒髪ロングの助手ができちゃった。

1 セレナーデ‐愛しのアンブレラ‐
ロックで探偵。新しい。
時雨架子の男子を選ぶ基準もけったいだけどロックで探偵も充分けったい。しかしこれが面白い。
友人のバンドメンを絡めつつどう物語が進むのか。う~ん、これ投げられなかったらすごくいい作品になりそう。
ロックの精神がいい味になって もりあがってくれるといいなあ。


■自覚はなかったのに探偵として努める羽目になったロッケンローラーを目指す栗林相互の物語。
とっつきやすくて受け入れやすい。それがこちらの作家さんが書かれる文(作品)の最大の魅力だと思います。
ミステリなんか色々入り組んで凝ってそうだから書くにはハードルが高さそう。読む側にしてもつまらなかったら悔しいなどと考えてしまいがち。しかしどうでしょうか、この作品を読んでみるとそこにあるのは飾らない役柄に素直な登場人物ばかりです。主人公はロックだなんだとはいいますが、結局のところは普通の男子で当たり前のように誰でも思うようなことを自然に考えている。栗林の友人にしても特にこれといいて奇抜すぎる人物も今はいません。ではこの物語はありきたりでつまらないのかというと全くそうではないんです。面白いんです。
これはもう作者のキャラクターの使い方や、見せ方が上手いんだろうとしか思えない。セリフやしぐさ、心理描写その一つ一つが登場人物個々にぴったりと手堅くはまっていてぶれない。隙がない。だからどんなキャラクターが現れてもすんなり受け入れられる。物語の流れに違和感がない。これ凄いことで、作品を書くうえでとても大事なことだと思います。当たり前のことを当たり前に書ける。できるようで形にするのは難しい。特に文章を書きなれないうちは尚のこと。今回更新された話数はわずか二話分。ですがその短い更新分の中に出てきた登場人物の数は決して少なくありません。しかしその誰もがちゃんとそれらしい顔とそれらしい個性を持っているように書かれていました。栗林の表には出さないようだけど「こうなんだぜ」的な思考の描写も巧妙。なかなかのものです。
不思議でしょうがそういう意味でもこちらの作家さんの力量は計り知れないと感じます。
ただなぜかよく投げる。どうして? 去年完結一作しかなかったじゃないですか……なんで? まあいいけど。


■作中特に印象深かった箇所

・学生なんてこんなもんだろ? 普通はさ。
そうだ。それで普通だ。だけど概ね皆それを言わないようにしたり、考えないようにするのが美徳みたいになってる。我慢や努力という美しい? 言葉に変えて。それ宗教かな、念仏かな? 好きじゃないな…。
・俺がいきなり英語をしゃべりだしたみたいな目で見る。
とても分かり易く受け入れやすい表現。目に浮かぶ。良い!
・「あの場ではああするのがロックだとおもったの」
この作品ならこういう下りがあるのは当然だけど、そこが新鮮。それでいて自然で違和感がない。


以上この作品に関する13日更新分までの感想はここまで。