「愛と笑いの夜」   ヤマダ=チャン 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17738

読切り作品です。
感想日程にあわせて新作を投稿してくださりました。
ありがとうございます。とてもうれしいです。
新しい作家さんの中では企画への参加や新作投稿と、とても勢いがあって頼もしいかぎり。
お祭り騒ぎはもうおしまい。これからは直球勝負で感想行きますよ~。
ご覚悟! (ほどほどに…)



『忘れてしまおう』

■各話ごとの感想

どこにでもいる普通のOL松川幸子。のんべんだらりのくうねる生活。いい歳こいてまだ独身。そんな彼女の様子がつれづれに描かれる。
「まあいいか」気の緩み、妥協を常習とする幸子。彼女の隙は肩がこらず、むしろ自然体で安心感を覚えます。良いところです。
二十代後半にも近づけば、ごく普通の女性の生活。熱心な趣味でもあればそちらにのめりこむでしょう。男女限らず、興味のあることに、自然と気持ちのベクトルが向く。結婚が漠然としか見えないうちはそんな気もします。自分に置きかえるとやはりそう。グルメ、お洒落、音楽、旅行、コレクション、オタク系他色々あるかと思います。しかし幸子にそれはない。あってもおかしくなさそうです。オヤジでも好きなものくらいある。彼女の人間らしい嗜好はどんなだろうかと思いました。
何かないのか――。
行動パターンは、私が作画を担当している「私とお酒の日々」のヒロインとよく似ています。共通するところがります。肩書はOLでそれ以外は何の変哲もない。しかし彼女はお酒が好き。とても好き。酒に入れ込んでいる女性。そこから引き出せる魅力が大いにあるので、幸子も何かに入れ込む一面があるといいかと思いました。細やかなものでも何でもいい。つまらんこだわりでもいい。何かあれば。

誤字
・まどうことなく→まごうことなく(粉うことなき)
この言葉、調べてみましたが用法や表記法が少し難しいみたいです。詳しくは各自調べてください。


ずぼらに毎日が過ぎ、季節は巡る。自ずと歳もとっている。そんなおり、コンビニで昔の同級生・山崎総一郎に出会う。
こうれはもう兆しととりました。しかしこれまでの幸子の描写から、にわかにチャンスと思えない。総くんには彼女がいるとか、結婚しているとか、期待を逸らされても仕方ないだろうと思いました。だって幸子の話だからしょうがないよね、みたいに妙に納得してしまいそう。そうそう現実うまくいくことないよと。
実際のところ、作中では総くんの彼女の有無、そこは微妙なぼかしを残しつつ上手く引きが施されていていました。
彼女がいたらあんなおんぼろ自転車は、さすがになかったわけです。あとで気づきましたw


高校卒業当時の回想。当時の総くんの気持ちと現在の自分の気持ちを重ねる幸子。その心は揺れる。
特別ではないけど割と仲が良かった二人。幸子の気持ちはなんとなく理解できる。総くんを受け入れていたら、違った未来があったかもしれない。けれど曖昧な返事をしなかった彼女へ、個人的に好感をもてました。自分に置きかえれば、そのほうが愁いはなかったろうと思います。幸子自身はモヤモヤがあったようですね。しかしそういう気持ちを経験するのも青春らしくていいと思います。
二人の再開がお互いに、飾らない年齢になってからで良かった。一人の大人として、長短両方受け入れあえるような関係が築けそうです。明るい未来を感じます。



■作品の総括
初のヤマダ先生の読切り作品。冗長短編作品企画へも作品をすでに更新済み。早いですね。今回こちらの作品を読ませて頂いて、いっそう企画の作品に期待が高まります。女性の内面や行動の描写は相変わらずです。よく心得ておられる。今回も幸子の心理描写から、しぐさに至るまで丁寧に書かれていました。「まあいいや」で済ませてしまう幸子の緩さ、ぐうたら具合は誰だって持っている一面。共感を覚えます。各話ごとの導入も文量はやや多め。しかし無駄があるようには感じませんでした。読ませる魅力のある文章だと思います。引きの部分においてもまた余韻が心地よかった。ただ、全体をとおして緻密な書き込みに疲れを感じる読み手もあるかもしれません。個人的には許容範囲でした。作風から、この緻密さを読んだ後に、用意されていた読後の解放感、物語の広がりを考えると上々の出来だと思いました。これから先の可能性を考えさせられる味わいある一作だったと思います。感服です。
まとまりの美しい読切り作品としておすすめしたいです。



■作中特に印象に残った箇所

・無駄に多い小銭を使ってぴったり払う、ちょっといい気分。
昔、飲食バイトをしていた頃、ランチメニューのお金を10円と5円と1円で払っていくお客様がいました。昼時にこれをされて泣きたかったのを記憶しています。
・「今日は特別綺麗に見えるね」
やらしいぞ!


以上この作品に関する18日更新分の感想はここまで。