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「新都社 漫画評論集」   DJ ERIERI 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17269

こちらの作家さん、私は個人的に初見の方です。
新都社では漫画やブログにと、積極的に活動なさっておられるようです。
既にご存知の方もおられるかと。
こちらはDJ ERIERI先生の漫画の評論集ということです。
文芸にはみんなで評論、『自説自論』というのが企画でありました。
評論は初心者でなくてもなかなかハードル高そうです。


■一作論評ごとの感想

・第一回 本当にあった後藤健二の話(21世紀のスポ根漫画)
気になったことを先に。
【以下本文抜粋】
『今後、ちょくちょくとWEB漫画の評論をこのブログで書いておこうと思う。
WEB漫画というジャンルもだいぶ定着し、作品も蓄積されてきているが、本格的な評論となるとまだまだという印象を持っている。あるジャンルが蓄積されて発展していく過程で、評論が果たす役割は決して小さくないはずだ。商業漫画の評論は数多くあるが、WEB漫画、しかも非商業系漫画のそれは、あまり読んだことがないと思う。だったら、この俺様がそれを書いてやろうじゃないかと言うのが、評論を始めようと思った動機である。
で、まず、評論の基本方針として、自分が褒めようと思う漫画以外は取り上げないようにした。これは、当然で、ぼく自身が漫画を描いているので、ぼくが他の作家を批判したら、批判の応酬になってしまうのは明らかだからである。
それと、評論する以上はちゃんと読んで、分析的な視点で論評するようにした。これは評論する対象の作者、そして作品に対する最低限の礼儀だと思ってる。』【本文抜粋ここまで】

上記の本文抜粋部分、序文で述べなければいけない内容。これは「本当にあった後藤健二の話」を論じる前にもってくるべきです。ここでいうなら、タイトル「第一回 本当にあった後藤健二の話(21世紀のスポ根漫画)」これの前。
なぜか――。
答えはこの序文中でERIERI先生ご自身が語っておられる。
この部分です→「これは評論する対象の作者、そして作品に対する最低限の礼儀だと思ってる。」この意識があるなら、ぜひそうしてください。
「これから私はこういう形式で以下に紹介する漫画作品を論評していきます」という意思表示は、この評論作品で対象とされる全ての作家、作品へ係るべき内容だからです。ゆえに、特定の一作品を論じる場にまとめて掲載してしまうのは安直です。
序文としてセパレートし、論じる意図を読み手へ明確に、分かりやすく掲載するのが賢明かと感じました。

作家と作品への愛に横やりを入れるようなことを述べるのは、少々憚られますが……。
ただ、私はこの評論は作家への私的ファンレターではないという見方をしています。
同時に、私はこの評論著者、ないし評論対象となる作家、作品全てへ敬意を払う旨があることもご理解願いたい。その上で、以下のことに言及したい。それは個人的な感想でもある。

後藤健二先生(作家)が好きなのは分かります。愛があるのも分かります。
後藤健二先生(作家)の作品へ真っ向真摯なのもよく分かります。
ですが、注意してほしい点が二つあります。
本評論作品で、後続して紹介されるすべてに同じことが言えます。
まず一つ目。「本当にあった後藤健二の話」という作品を論じる場合、作中登場する後藤健二(敬称略)と後藤先生ご本人を、明確に区別できる呼称を使って評論を書いてほしいと思いました。
理由は簡単。この作品を知らない読み手は混乱・混同する。
実録作品が評論対象なのは、序文で理解できています。だから評論本文中で「先生」という敬称を、全てにつけると後藤先生ご本人のことを論じている作品を読んでいるのか、「本当にあった後藤健二の話」の登場人物である後藤健二(敬称略)についてのことを読んでいるのか分かり辛い。勘違いを起こします。私はこの評論の読み手ですが、いつのまにか後藤先生ご本人についての考察を読んでいるのか???という妙な気持ちになりました。どういう事かというと、実録漫画の評論ではあるけれど、そこから外れて四六時中監視されている後藤先生ご本人に関する自論や考察を読まされている感覚です。これ、違いますよね。
そして二つ目。これ大事。評論本文中、幾度も使われる「後藤健二先生の漫画」、これを「本当にあった後藤健二の話」とちゃんと評論対象である作品名を記すこと。
こちらの理由も簡単。第一回のタイトル通りです。ここでは「本当にあった後藤健二の話」の評論ですから、「後藤健二先生の漫画」とすると、すべての後藤先生の漫画作品全般という意味にもとれます。そうではないはずです。「本当にあった後藤健二の話」という作品への愛があるなら、尚のことでしょう。特定の作品を論じるときは、ちゃんと文脈をとりながら、タイトルを明示するべきです。論旨がどこにあるのか、評論では明確にしておくことです。

・第二回 日々徒然(砂漠に咲く一輪の毒花)
ここでもやはり第一回と注意点は同じ。
作品名、明示してほしい。「GaS先生の漫画」→「日々徒然」。
人物。GaS先生ご本人か、「日々徒然」作中のGaS先生か否か分からない。
因みに私はGaS先生のことを知りませんでした。作品も知りませんでした。
ここでの評論を読む限り、どんよりとした作風なんでしょうか。面白そうですね~。
ただ、ERIERI先生の評論文ではさらに、私の知らない作品名や人物名が出てくるので、評論からだけでは作品を把握することはできませんでした。
②のジブリのたとえ、つっこみどころは満載でしたw
③④は作品の評論なのか何なのか、ぶっ飛んでいた気がしますwこれは漫画の内容のことを書かれているのでしょうか? 「日々徒然」を読んでいない私は全く分からない。
普遍性を追うなら、ERIERI先生独自の言葉で作品を説明してもらえると、「日々徒然」という作品をなんとなく把握できたかもしれません。ここから把握できたのは、「日々徒然」がプチプチ並みの扱いしかされていないという侘しさでした。そういう作品なんでしょうか?
多分違うでしょうね……。なにか切ないものを感じます。
これを機会に読んでみたい作品になりました。そういう意味ではこの評論大成功!


誤字・脱字
Web漫画→WEB漫画(表記をどちらかに統一するべき。序文含めて)
小説だと太宰治→小説家だと太宰治

表現
ツウィッター→トゥウィッター
Wを「ウィ」と書くならどうせならTもこれくらい発音しましょう。(照れない!)

・日々徒然追記
第二回で論理性が足りなかったことへの追記でした。
ここのタイトル、「第二回日々徒然への追記」かと思います。
コメント欄でもありましたが、追記がむしろ分かり易く、共感できます。
ERIERI先生の言葉や考えが丁寧に書かれていたので、自論として読めました。
でもやっぱりプチプチは譲れないポイントみたいでしたw 気泡緩衝材というそうです。
この追記あって良かったのではないでしょうか。


「Web」の妙
Webで掲載→Webサイト(ウェブサイト)で掲載
Webは没入感→Web漫画は没入感

・聖ブランカ女子高校 美術科(ひよこ踊りで哲学を)
タイルからしてもう外している。「第〇回」を今までつけていたのは何だったのでしょうか。
そして評論から哲学へ転身ですか。謎です、この評論。
一様、作品名らしきものはタイトルにあるが作家名がない。
どの作家さん、どの作品へもちゃんと同等にタイトルを割り振ってほしいです。
類似作家の名前を出してくる前に、評論対象作品の作者名をちゃんと記載するべきです。
作者と作品への愛を疑う。
商業作家の例えばっかり出してこないで、ノウノ先生にしかない魅力を著者自身が語れやコラ!と思っていたら①②③でちゃんと書いてくれている。そうそうこれこれ、こういうのが欲しいのです。
ノウノ先生の作品へ興味が湧きました。
けど、評論というより作品紹介な気がしましたw まあ、良いでしょう。

・アルコリス(空間の魔術師)
タイトル、作品紹介ザルです。
作品の評論のはずです。
「キャラクターが自分好みである。絵も好みである。」
好みを語るのも良いでしょう。しかし足りない。
これでは評論の読み手が、この作品を知らなければどんな作品なのか、想像つきません。
細い線なのか太い線なのか、柔らかいタッチなのか、作風の臨場感を伝えて欲しい。
作者についてはOK! 良い紹介でした。
論評としての着目点、切り口もどこにあるか明確でした。ERIERI先生がこの漫画のどんなところについて論じたかったのかよく書かれていて、そこから興味をそそられることができました。


■今回更新分までの総括
文芸では企画の「自説自論」は面白いので必ず読んでいましたが、実際こうして評論作品の感想を書いたのは初めてです。思うところは多々ありました。私自身もこの評論作品を通じて知った作品がありました。確かに、本作の序文であるように、漫画評論がもっとあってもおかしくはないですね。発見がある。
読み物としては、笑えるところが沢山あり、ネタも豊富なので面白いです。これは誇るべきところだと思います。しかし、ざっくり切りますと、評論としては未熟です。評論がたとえブログ形式であっても、こういった作品登録の場で公開するのであれば、評論作品として全体の統一感が欲しいところです。
文芸作家でブログだと、ノンストップ奴先生が書評等を書いておられます。鋭い切り口でご自身の意見や感想、考察を書いておられるのでその点は、参考になるかと思います。
文章での漫画作品の表現力、自分の精神面の表現や描写においても、もっと具体的に書いて欲しいと思うところがありました。何が、どんなふうに、どうして、なぜ、にあたる答えを、もっと濃厚に読みたいと思います。
手厳しいことを沢山書いたと思いますが、それだけ期待があるという事です。
初作の評論作品としてはなかなかの健闘ぶりだと思います。これからが楽しみです!
これを機会に、知らない漫画を知ってみたい方は、一読のほどいかがでしょう。



以上この作品に関する7日更新分の感想はここまで。





       

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