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「青春小説」    ヤマ=チャン 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17567

10周年感想企画以来、今回二回目の感想になります。
順調に更新しておられるので、前回の感想を書いたときから物語に少し進展がありました。
物語序盤だけの感想と、ある程度話数を更新してからの感想。
作家さんはまた少し違った参考などが得られるでしょうか?
お役にたてれば良いのですが……。
私なんぞはへなちょこ作家ですので、如何ともし難いところでしょうか。
因みヤマダ先生は、別名義の作品をお持ちなのでしょうか。裁量から可能だと思う。
実は既になさっている――。……なんてねw



■各話ごとの感想
2.灰空
同じクラスではあるけれど、馴染のなかった女子・笹本秋桜(ささもとあきお)と親睦を深めていく理緒。しかし、一緒に行ったカラオケボックスで、彼女からの思わぬアプローチに困惑。逃げ帰ることとなった。
学校でやることが、その後の人生どう役に立つか、立たないか。まだ一歩も二歩も、大人へおよばない理緒の青い思考が、表現として生き生きしているように感じられました。自分のことは棚に上げ、友人を非難する彼女の姿。そこにも浅はかな歪みがあり、中途半端な未熟さのあらわれを感じられます。依然として彼女の人物像にぶれはなく、好感度高いです。物語がぐっと動いてきたおかげか、前回ときよりも軽く読めました。
本作だけに限ったことではないのですが、新都社文芸界隈、同性愛嗜好の波があるのでしょうか。ふと、そんなことを考えてしまいました。

3.P.S. I miss you
笹本秋桜の同性愛の目覚めは12歳の頃。相手は女子高生のサッちゃんというお姉さん。しかしその恋は実らず。その後の理緒との出会いは、高校生になった彼女にとって、強い南風となったもよう。
理緒にとっては何気ないことだった秋桜への好意。そのシーンの書かれ方が印象的でした。理緒の本質的な性格は、そうあってほしいとうまく誘われます。作品に引き込まれる。現実にもありそうな出来事としても共感できました。無意識の好意を、周りの人が憶えてくれていることってありますね。逆の場合もまた然り。
ちょっとしたことでも、役に立てることが自分にもあるといいなあと思わせられました。なんか、あるんかな……(遠い目)

4.墜落
髪を染めたことについて、学校で指導を受ける理緒。クラスでは文化祭の準備で盛り上がり始めるころだった。そこへ秋桜との仲を気遣う日比佑(ひびなたすく)に話しかけられるも……。
ここでもやはりマイペースの理緒、クラスの行事では最低限の交流ははかるものの、深くかかわることはしない。彼女は近い将来、人からの好意を素直に受け入られるようになるのかな……少し心配です。
続き期待!


■今回更新分までの総括
コメントはつきにくそう、しかし読者は確実にありそうなのが、本作の傾向でしょうか。作家さんの文をここまで読んできて、見えてきたこともありました。ヤマダ先生の本作に感じられた特徴。それはある程度緻密な情景描写、事物の説明、具体的な人物の心理描写や機微、一つ一つの台詞の丁寧さ(人物の気持ちが反映されている)、これらにおいてしっかり書かれていると思いした。稀に冗長(ネガティブではない)な時もある。読んでいてそれらは不思議と苦になることはなく、読み心地は普通に良い。
また、作品を読んでいるのとき、文面から場面を心に描き、物語を追う行為は当然あるのですが、その先にある、人物が内側に持っている複雑な感情や、想いを感じさせられます。端的に言えば、読む行為に奥行きがある。情景描写や事物の説明文でも、その場に漂う空気と人物が感じている刺激、心の変化がしみじみ伝わってくるのではないでしょうか。読んだ先にある、感じさせるという文学的表現に、モチーフを乗せることに長けた作家さんだと思いました。あれ…? なんか似たようなこと最近他の作品でも書いた気がする……。まあいいや。
物語の内容では、新たに登場人物もありましたので、理緒の青春模様がどう発展していくのか、更に楽しみなところです。感受性豊かな年頃の少女をモチーフにしている部分、力量の見せどころでかと思いました。今後も楽しみにしたい。


■作中印象深かった箇所
・私の人生なのに、私がいいならそれでいいじゃない。
今こういうふうに思うことを悪だとは思わない。けれど理緒が、この先過去を省みることがあったとき、どんなふうに思うんだろうと、興味をそそられた一文。
・彼女の持つ魅力というのはスタイルがいいだとか、顔が整っているとか、そういった言葉ではなかなか表せないもので、私の感性によるものが大きいと思う。
「好みのタイプ」とせず、「私の感性によるもの」と書き出す上等なしっくり感。良い。
センスを感じる。
・足音ってこんなに強く響くんだ。
嫌なことから意識を懸命にそらすしぐさ。意識を完全に音に向けて内面を消す姿勢。イラついている感じが滲む。良い。



以上この作品に関する7日更新分の感想はここまで。


       

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