「ソナタ」   三浦 作
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本作、三回目の感想になります。わっはー。
第五十六話まで更新されている。順調です。
着実に話数を重ねて作品を更新してくれるところに好感が持てます。
がんばって欲しい。


■前回までのあらずじ(透輝大学病院編/第五十一話まで)
病院内の極秘施設に入り込んだ透と光、その他の仲間が謎の実験に利用されそうになる。しかしその実験には、透や光の体質に通じる要素があった。何とか逃亡を図るも失敗に終わる。透を探して病院内をうろつく不良女子中学生真赭。隠し通路から研究所の中へ入り込んでしまう。そこで行くへ不明のさくらと遭遇する。
こんな感じだったかな……。



■各話ごとの感想

第五十二話 若芽繁その②
若芽の子供の頃の家族像。両親の姿を大人になっても引きずっていた若芽。犯した罪から逃げてきたおかげで、今彼はここにいる。
大人になったとき、人って親の像を自分とつくづく重ねてしまうものですよね。反省したり、自己嫌悪したり、反面教師にしたり……。親と自分は違うんだと言いきかせても、どこかで血は争えない。足掻くんですね。胸が痛い。認めて開き直れば楽かもしれないけど、過ちまを真似ねてしまうのは……あかん(ため息)

第五十三話 石竹霙その①
死体になったクローン人間を囲って、犯人を考察する研究所関係者たち。そこへぬっと姿を現したのがさくらと真赭だった。
コミカルに書かれているけれど、珊瑚と真赭の対決って内面的な熱さが全く違う。そこが面白いです。
強そうな相手に心躍る真赭と、過去を背負いさくらのことを絡める複雑な気持ちの珊瑚。けんかの経験値は両者の間に差はあるけれど、勝負がつくのはそれだけではないように見えます。真実、強くいられるとはどういうことだろうと考えさせられる。木村さん、まだもどってこないw

第五十三話 石竹霙その②
夜、人気のない母校へ忍び込む霙。あとを妹・小雪はこっそり追っていた。ばれてるけどね。
この姉妹、どこまで姉妹として良好な関係か謎です。そこがまた面白味があって良いのだけどw
姉さんの霙は何を考えているのかいまいち分からない不気味で妖艶な魅力。小雪のほうはほんわか系。どっちも共に魅力的。全く違う毛色の姉妹。仲がいいのかな。彼女たちの行く末をひっそりと見守りたいです。

第五十四話 石竹霙その③
霊感において突出していた石竹霙。彼女は子供時代から学生時代と、必ずしも自分の人生を謳歌してきたわけではない。
理解を得られないことについて、理解を求めるときの難しさを感じさせてくれる。他人では必ず測れない何かを説明するのは難しくて、それを分かってもらえるまでに時間をかけるなら、諦めるべきなんでしょうか。おおよそその方が軋轢は生まれないでしょう。けれど建設的回答にもならないでしょう。ジレンマですね。霙、大変だったんだなぁ……。


誤字(変換ミス)
塩谷憑りついた→塩田に憑りついた

第五十五話 石竹霙その④
高校入学。霙にはじめて山吹エリカという友人ができた。エリカは霙にとって宿り木となる。しかし……。
うってなりますね、ここは。こういうネタはもう、辛い。痛い。怖い。
身をよじられるような気持ちになって切ないです。女子の連携って怖い。
どんよりしてきます。テンションがどんどん下がっていくwww
どこまで下がるのか、この現象も面白い。

第五十六話 石竹霙その⑤
いきすぎる執着は異常に映る。小雪には姉の姿勢は歪んで見えた。霙のやりたいことは正しい事なのかそれは何で決まる?
よい姉妹で安心しました。
研究所側の人物についてはここまでで、かなり濃厚だったので読み応え十分です。
良く書かれていたと思います。やっぱりこれくらいないと本作では寂しい気がします。
ここからがまた新たな人物、まだ存在の薄い人物を書きこんで、物語を見せてくれることになると思いますが、楽しみにしたいところ。期待です!!



■今回更新分の総括的感想
透輝大学病院編に入り、そこでの群像劇がますます深まってきました。人物描写においても日常編とはまた違った趣があり興味深いです。物語の雰囲気はダークな方向へテンションも下がっていく。しかし、現在までの登場人物たち一人一人、どれをとっても大切に、個性豊かに描かれています。そこには作家さんの確かな力量を感じさせてくれる気がしました。加えて日常編ではうかがえなかった、豊かな文章面での彩を感じることもできます。登場する人物像に暗い影があっても、表現の伸びやかさに、日常編では見られなかった良さを感じました。石竹霙にまつわる彼女の過去の物語は憐憫に揺れる思いが募りました。
ここまでの透輝大学病院編、作品の暗さでいえば、10周年企画で読ませてもらったブッコロ大魔王先生のマッドトルネコの後半、ポポロによるモンスターの町掌握編にやや近い感じの闇を感じました。全く作品の中身は違うのですが、人物の人生の歩みを噛みしめる、味わい深さにおいてはどこか通じるものがあると思いました。ますます魅せられる作品になってきた感じがとてもする。
今後にも期待!長丁場連載、頑張ってほしい!!



■作中印象深かった箇所
・噛みしめるほどの幸せも、食いしばるほどの不幸もない。丁度いいのだ。
「普通」と言えてしまうところを、そうするのではなく、文章で表現されている。大切な小説執筆の心得を感じた。とても良い。


以上この作品に関する17日更新分の感想はここまで。