「夜の確率」   ホドラー 作

http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17768

ニノベで拝見するのは初めての作家さんです。
本作のジャンルはSFということです。
SF好きの読者層ではすでに注目が集まっているもよう。
戦争物と並び執筆での力量を試されそうな気がしますが……。
そのへんどうでしょう?


■各話ごとの感想


情景を浮かべるには感覚的に良さは伝わる。
ただ少し荒を感じる。出だしなので大切だと思ったから以下取り上げます。

>「たぶん有害な微粒子」更新ナンバー2~5の内容で散々凝った文句を使う割に大事な序文でこれだと残念感がある。どうせSF書くならこういう細部まで凝ってください。この世界での有害とされる微粒子はどんなもの? 

>「なんとなく落ち込み気味に」この理由にあたるものが何であるかによって後続「それを見てると」の「それ」にあたる内容も明確になる。現状だと「落ち込みぎみ」という気持ちがどこに向いているか分からない。焦点をどこにも向けていないなら、向けていないという事実も分からない。

>「湿気とたぶん有害な微粒子を吸いすぎて恒常性を保てなくなっているのだろう、」
この文はどこのことを指しているのでしょうか。ココのことですか。ひび割れている路面への推測でしょうか。

>「それを見てると余計に惨めったらしくなった。」ここでの「それ」はどこにかかっているのか。
→「湿気とたぶん有害な微粒子を吸いすぎて恒常性を保てなくなっているのだろう、路面のひび割れから緑色のゼリーがはみ出している。」この一文全体なのか。
→「湿気とたぶん有害な微粒子を吸いすぎて恒常性を保てなくなっているのだろう、」この読点までなのか。
読点前の文末語句「だろう」でかかる場所が分かり辛くなっている。
「だろう」があるおかげか、ココの落ち込んでいる理由が「湿気とたぶん有害な微粒子を吸いすぎて恒常性を保てなくなっているのだろう、」こうであるのかというふうにもとれる。そこらへんが曖昧。

>ココの叙情的な心の動きと、情景に対するココの心理があやふや。織り交ぜるにしても……現状だとややぼんやり。

第一章
ココ・ザムザールの仕事は殺し屋。しかし平常心と仕事場での気持ちの切り替えに悩まされるのが常だった。輪をかけて今回、ろくな仕事は回ってこなかった。
ミチってどんな人物なのだろう。背が低いのか、声が低いのか、テンションが低いのか……。表現からではわからないのでミステリアスです。
魅力的な文が沢山ある。確かにそういう意味では面白い作品であると感じます。


句点の三連使い(表現の妙)
離れなくちゃならない。。。→離れなくちゃならない……
好みもあるでしょうけど、基本は三点リーダです。
句点の三連にどれほどの魅せ方があるかここでは推し量れませんでした。


格助詞
仕事を干される→仕事で干される


設定の妙?
進化銃(エボルバー)
「進化銃」「エボルバー」という言葉を立派に作るなら、せっかくなので手を抜かず両方書いてください。どうせなら凝ってください。実在エボルバーとは意味合い、性能、違うのでしょう?
「進化銃」後半出さないなら、はじめから書かないとか。個人的には進化銃の方が作風にはあうと思います。


「!」の不思議
ドーム最高級の光!←ここの「!」そんなにびっくりすることなんでしょうか? です。


カタカナの妙
片仮名表記の言葉がどこまで自前か分かりづらい。固有名詞として使っているのか、英語をカタカナ表記にしているのか明確にしてほしい。作家のノリ(感覚に由来するもの)が多い気がすぎる。どこに凝った表現を使うか、カタカナとひらがなと漢字では表記から受ける印象が変わるので大事にするべき。SFを書くなら大事ではないだろうか?
以下具体例
エキスパート、タスク、ボンヤリ、オフィス、アオバ・ストリート、セーフハウス、など、ごちゃごちゃしている。


設定……未消化
>「彼女は進化の恩恵を受けていたのだ」「進化」
作品として、進化への警鐘みたいなのが書きたいのか、単に科学的な話題を取り入れたいのか、あるいはそれ以外の何かをやりたいとか、遺伝子の話が書き連ねてあるけど意図が読めない、いまいち伝わってこない。そもそもこの物語の世界観の書き方に物足りなさを感じる。しっかりと世界観が確立されていて、その中でどういうことに着目し、焦点を当てたいのかを伝えてほしい。ココがもつエボルバー(進化銃)で、エボルバー=進化銃としたことに意味があるなら、この言葉の持つ意味合いをもっと掘り下げて利用しないと、ただの雰囲気で使っているだけになる。



■今回更新分までの総括的感想
にわか知識を畳み掛けてくるような下りもある。いいですよ。悪くない。しかし物語の世界観の構築がぬるい。文章量が多い割にぬるい。SFで進化だの遺伝子だのをとりあげてくるなら、もっとこだわるべきだと感じた。作品を執筆するうえで、豊富に知識や情報を持っていることは武器になります。強みだと思います。誇るべきところでしょう。ただ、今回更新分までの範囲で読んだ限り、知識や情報を読み手に共有をさせる必要性はあまり感じない。どこに物語のどこに焦点が当てられているのか、今の段階では正直分かりづらい。
作者コメント欄では次回から少しずつ動きだす。とありますが、はなしの展開にくどさ、たるさを感じる読者もいると思います。かくいう私はそう感じました。決して悪い意味ではないので誤解なく。こういう作風も嫌いじゃない。冗長企画をやるくらいですから。冗長と一緒にするなって?w
しかし、これまで5回分の更新で物語は人物紹介ぐらいしか全く動いていない。更に次回になってやっと動くのかと思えば少しずつときた。これはもう、壁を作っている。好きな人にだけ読まれれば満足という姿勢もある。嫌なら読むな。これも納得できる。ただそれをいいきって余りあるほどの凄さは、残念だけど本作には現段階では感じられない。
SFで殺し屋を絡めることで何が書きたいのか、感覚だけで用語を使うのではなく、もっと作りこまれたものとして見えてくれば面白いのではないでしょうか。ただ科学を語りたいのであれば文芸でもよい。
読んでいて物語の世界観の作りこみ不足から、エンタメ性や親しみが湧く雰囲気作りには、今は欠ける感じがしました。コメントでふれられている、改行や読者がふっと一呼吸おけるような文体の挿入。この必要性はもっと作りこまれれば映えるのではないでしょうか。バランスは難しいと思ます。
「ディテールに拘りたい」で終わっている。「全てに拘る」くらいでぶつけてくる強さが欲しいです。まだ物語の序盤のようなので、作家さん次第で今後どうにでも発展はあるんでしょうね。
率直に、私はニノベのSF作品でこれだけは外せない!という意味で本作を現段階ではで推せません。今後次第です。
辛口感想だかもしれないけど、それだけ高みに取り組んでいるのを感じるので応援したいです。がんばってほしい! 



■作中印象に残った箇所
・アホはダメ。
濃くて強い感じ。バカじゃなくてアホと言う上から目線なところが伝わる。良い。
・今はこいつと距離をとりたかった。
ハードボイルド感の中にある、一息つきたい主人公の心の隙間。良い。
・これら小さな確率の積み重なり、神様がサイコロを振って振って振りまくった結果がこの世界であるわけです。
一生懸命なロマンチック感。良い。



以上この作品に関する17日更新分の感想はここまで。