「蟲籠Ⅱ」   黒兎玖乃 作
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2014年の岩倉キノコの個人的文芸・ニノベアワードで大賞を獲得した一作の続編になります。実はこの作品蟲籠Ⅰから書きかえをなさっています。元の作品は「蟲籠 -deity world-」でいいでしょうか。こちらの連載はかなり前。読んでいたかもしれませんが記憶にない。闇鍋先生の挿絵がついていたのはこれだったのでしょうか…。蟲籠 -deity world-のほうもぜひ読んでみたいと思います。
黒兎先生も文芸作家ではかなりの速筆の類。2015年3月現在では4作を並行連載中という多産ぶり。別名義の作品を含めると…もう一作あるっぽい。
文章書きビギナーはこの作家さんから学べる所たくさんありますので研究していきたいところです。

■各話ごとの感想

よくわかるあらずじ
蟲籠Ⅰを読まずしてⅡを読めるのか。答えは「読めはします」。そりゃね。因みにこのあらすじを読んだ時点でⅠを読んでからⅡを読む選択をしたのは他でもないこの私。ですがこの選択がなかったら蟲籠Ⅰは2014年の私的アワード大賞はなかったかもしれません。つまり、Ⅰから読め。おかげでバカ正直に一話ごとにコメント投入して蟲籠Ⅰをホット入りさせたのも今では良い思い出。がははははー。

零幕 少女の試練 
いいですか皆さん、「零幕」ですよ。これ普通パッと使えますか? この字面だけで作品のニュアンス、足音聞こえませんか?
あるとき‘お姉様’を失い、それ以来満たされない気持ちを引きずる本作ヒロイン蓮水瑛理香の描写から本作は始まります。かなり病んでるっぽい瑛理香。女性は憧れの対象である同性を真似る傾向にあるらしいのですが、瑛理香はそこへすっぽりはまってる。 意地らしい。
お姉様こと能美火澄はなぜ消えた。「――必ずや消息を掴んで見せます、お姉さま」 ギイイイィ―バタン!

壹幕 影への誘い
一方、主人公の秋月静馬は瑛理香のもとから消えた張本人、火澄に中二風おちょくりを受ける習慣。蟲籠Ⅰから相変わらずですね、うざそ~。
人の心の闇とは何か――
そこに生まれる感情を餌に蟲は人へ巣食う。そのとき人に残された選択は――
蟲籠Ⅰを読まない選択をしたとしても、この幕を読めば世界観は一発で把握できるかと思います。

弐幕 眼球
静馬が自分の蟲から受けた後遺症、想像するとウグッオエェ。肉だけでしたら…一興? かもしれませんが血も混じるとなると難しい。大量の鼻血を経験したことありますか? あれを飲んでしまっとき結構辛いんですよ、味もさることながら胃が重い。感覚近いでしょうか。
蟲籠Ⅰですったもんだの末見事? 蟲使いになった静馬、そのアジトである雑貨屋アトランジェへ火澄と向かいましたがそこで何か違和感にふれた模様。さてさてなんだろう。

参幕 土屋という男
蟲使いだからって、そう、人だから色んな人いますね。新都社作家だからって、そう、人だからいろんな人いますね。会ってみるとアラ意外~。普通の人。怖い人。イケメン。やっぱりクソ。そういうの面白いですな。ああ、オフ会とか行ってみたい。
静馬を取り巻く蟲使いが個性的であることから、紹介された隣町(春壁市)の蟲使い土屋正博も彼にとっては意外なほど定型な一般人に映ります。この土屋、本作では誘導役になるのかな。
今回静馬たちの仕事は土屋の担当区域での協力らしい。ほほう。
静馬はそこで知らない誰かと組む。馬が合うといいのですがね、どうなんでしょうか。火澄の笑いが意地悪めいていて気になります。

四幕 目醒め
アトランジェを拠点とする静馬の蟲使い仲間、瀬川祐二彼の物忘れ癖は蟲の後遺症でしょうか? 私もよく物忘れます。眼精疲労からと勝手に解釈してますがどうなんでしょう。目は第二の脳。関係ある?
前作蟲籠Ⅰで大暴れした女子、雛沢未咲が登場。瀬川、目覚めたばかりの怪我人になに言ってるんだ! 病院で、そのセファッションセンスで、そのセリフ、恥ずかしい。笑った。

伍幕 隠れ家の水月
静馬がおもむいた先の春壁市は彼の住む三城市と違って都会だった。人ごみに酔いながら土屋の話、ちゃんと聞いてるのか~? 無理っぽい。そして一緒に組むことになる蟲使いの少女とであうことになる。
瑛理香は蟲使いだったんですね。火澄の笑に妙に引っかかったのは…。なるほどやられた。
ここで自棄の悟りに入ってる静馬に泣けてきます。

六幕 傀儡師
「かいらいし」ですか? 蟲使いの反対勢力ということで。そいつらが春壁市に潜んでなにか企んでいる。
お姉様への気持ちを引きずっている少女とは思えない瑛理香の静馬への強気な態度。良い! 当事者大変でしょうが見てる方は面白い。

七幕 軋轢
瑛理香と静馬彼らはお互い協力できるのか。ははは。なんとなく先はみえる。
火澄の習慣的おちょくりも相まって静馬の心労絶えない模様。いいぞ。もっと心踏まれろ。

八幕 蟲より団子
女子ってなんであんな菓子好きなんですかね。絶対鞄に菓子もってますよね。本能ですねあれ。
この作家さんホント女子高生の特性よく掴んでる。よく観察されてますね。よく観察されてますね。
よく観察されてますね………………ぷっ

九幕 誘蛾のささやき
カフェの描写とても良かった。それだけではなく他にも多々ありますが、前に出てきた酒屋の下りでもこの作家さんの地の文にはいつも想像をかき立てられる非常に丁寧な文章構成が施されています。どういうモチーフを持ってきたとしてもそれは変わらず、書くうえでの言葉を選び使うということの凄さを見せつけられます。
「パーカ」
「パーカー」
どっちなんでしょうか? どっちでもいい?

拾幕 影が欲しかったモノ
瑛理香、とりあえず汗ふいて落ち着くべき。 そういう隙が彼女をダメにする。
街中を巡回していた静馬に傀儡師が動き出したとの連絡がきます。静馬完全孤立状態に笑う。
火澄もいるのでまあいいやん。

拾壹幕 不知火
>蟲を駆逐してしまえば、お姉様も私を認めてくれるはず
う~んそう決めつけてしまうのは違うんだな…。一生懸命すぎ瑛理香は盲目になってる。そう思うのならなぜすぐに目の前にいる静馬の首ひっ掴んでお姉様のこと聞かない? 
その盲目さもまた若いが故の青さなんだろうな。だからいてもたってもいられず走り去る。

拾弐幕 思惑
お姉様火澄の言ってること分かりたくない瑛理香。もうこれ独占欲ですかね。
「私の」という思いが先行して色々間違っていってしまう人物の思考が深く書かれていました。
痛い気持ち。
瑛理香にある兆しが表れます。
そして静馬は瑛理香が一緒にカフェへいった童門深琴とであう。静馬はそこで何を感じたのでしょうか。

拾参幕 開闢の火花
傀儡師、童門深琴とぶつかることとなった静馬ですが火澄の協力を得て瑛理香を探しに行きます。
この幕でややぼんやり気味だった火澄がやっと本腰入れて表に立ってきてくれました。今まで黒い背後霊みたいでしたからねぇ~。せっかくの中二ですから中二らしい活躍もしてほしいです。期待高まる。

拾四幕 昏
期待裏切りません。火澄の存在感いよいよ大きくなってきます。瑛理香の中にある彼女の存在にしても、静馬との関係にしても。
アトランジェ蟲使いメンバーは静馬と火澄がいればやっていけそうな気さえしました。
琴子(そんな子もいるんですこの話は)にいたってはテレビショッピングで「うーん」、「ああ~」と相槌うってるだけみたいな存在になりつつある。
瀬川、電話音声のみので久々に登場です。

拾五幕 鬼の素顔
この物語で双子がくる想像はしていませんでした。いや、アリですよアリ。こういう出方なら全く問題ない。
静馬の兄、秋月創魔の登場です。

拾六幕 刀槍矛戟
静馬のお兄ちゃんですから直ぐには死にそうにないですね。瑛理香を探しに行きたい静馬はお兄ちゃんを相手にしている場合ではありません。
ここで作者人員投入してきました。わはっ! キタ彼女。
何で笑えるんでしょうか。あははははは――っ。

拾七幕 譲れない正義
なんやかんやで静馬って女子に構ってもらえてますやん。
彼、リア充指定でいいと思いました。建前がどうあれ自分のために何かしてくれる女子がいるのはそれだけでもう良しとしましょう。逆もまたしかり。
ホワイトデーにむけガトーショコラつくっていた作家を許すな。

拾八幕 眠り鬼
火澄のほぼ一人語りで綴られるものすごい幕。よくこんなん書いてくれる! このシーンの尋常じゃない程の凄みある空気がハンパなく伝わってくる。ビギナー作家研究材料になりますよ。
作家も完全に世界に入ってると思われる。火澄になりきって部屋中練り歩いてたとすると……。想像したら色んな意味でコワイです。(褒めてます)

拾九幕 悦び
「ように表現」というのは時として実に難しい場合があります。人と同じ感覚を共有しつつ、それでいて世界観にマッチして、違和感なく物事を例え、間接的にそれを表現する。文章を書くうえで多用される表現でごく当たり前にそれらは日常でも使われます。
この幕では例にもれず作家の苦悩がよく見てとれました。(キノコ偉そうにテメーなに様?)
文章ビギナー作家は向学のために自分の好きな作家の「ような表現」逐一全部書き出してみるといいですよ。ここで私は何が言いたいか。
作中での野球選手の肩がそうであるようには斬新だったかもしれん。笑った。

弐拾幕 一転攻勢
人はなぜ相手をフルネームで読んでしまうのでしょうか黒兎玖乃先生。
そこには何か強い感情があるのでしょうか黒兎玖乃先生。
相手をキメているってことなのでしょうか黒兎玖乃先生。
三回フルネームで呼びかけてみましたが、ちょっと恥ずかしいですね。
まあ、その、なんというか素朴な疑問は上手な人に質問するとそれらしい回答を得られると思います。

弐拾壹幕 業火の怪人
瀬川さんも一様仕事をする気はあるようですね。安心しました。まあ、初心者駆りだしておいてほったらかしというのもないでしょうからきっちり働くべきですね。
悪役の格言を吐き捨て敗走していく創魔。この後また会いまみえるのでしょうか…。

弐拾弐幕 光と光
破壊の限りをつくしつつも息が切れないのでしょうか。瑛理香に静馬、戦いながら二人ともよくしゃべります。
マックで喋るテンションよりまだ高い。
そこへ現れる火澄、この物語いよいよ終盤でしょうね。うう、見逃せない!

■己に宿る蟲を使い新たなる蟲の出現に立ち向かう「蟲使い」たちの異能ノベル。
この物語のキーとなる文字それはおそらく「異」であると思われます。作中に出てくる奇怪な恐れるべき存在たる蟲の数々を作家は異形とも表します。「異能」「異形」「異質」「異様」「奇異」など…。巧みにこれらを一作の中で自由に、かつもったいぶらず表現しているのではないでしょうか。異能ノベルは数あれ本作ほどその「異」という意味合いに磨きがかかっている作品、そうそうお目にかかれるものではありません。見聞のいる特殊な漢字の使い方もこの作家にはただ物語の世界観を作りあげる一要素でしかなく、憎たらしいくらいさりげない使い方です。自分の作風に合う言葉を選んで違和感なく随所に盛り込んでくるところなんかも見事な判断力と経験がものを言っているところではないでしょうか。新参で文章に磨きをかけたい作家さん、これから異能ノベル執筆を考える作家さんはぜひ一度この作家さんの文章にチェックを入れながら読んでみて欲しい。
いや~濃かった。他にも紹介したいことあるけど書ききれない。欲というか勝手ではあるのだが、私はこの作品の蟲籠Ⅰを昨年のアワード大賞に選んだ。そこには今後の蟲籠シリーズへの期待も重々に含めてのことだ。だから今後の展開この作品のさらなる発展、可能性を大いに楽しみにしている。その辺黒兎先生にはよろしくたのみたい。頑張ってほしい。

■作中特に印象深かった箇所
・三城に住み慣れた人は別段、この景色を神秘的に思わないものだ。
風情があるのは理解できるが観光都市として京都を持ち上げられないほど私は残念な人です。故に共感。
・今日もその‘影’が、ぬらりと浮上する。
脳の視界に広がる黒い影。それは揺れながら瞬く間に黒の紗を覆っていきます。
・蟲というのは元来日本で生まれたものなんだ
人口ランキングとの比較、静馬はいい目線だと思った。しかし人の負の感情から生まれる異形なら、日本は自殺大国であることを先に考えてしまった。悲しくもストレスを抱えるのが得意な国、それが日本であると。
・狂っているのだが、無秩序な狂い方ではなく至って正常に狂っているのだ。
タチ悪いのわるいサイコパス。こういう人模範的失病患者になれないので担当医を意図せず苦しめそう。
・じゃきじゃきじゃき、と無数の刃が腕から伸びる。
音良い!
・全身を赤々と燃える炎が舐める。
「舐める」に火の色と形と勢いを乗せてるい魔術的表現。良い!


以上、この作品について13日更新分の感想はここまで。