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「相対性恋愛理論」   のば 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17910

のば先生の新作。
「事実は小説より…小説なり」は感想企画でずっと読ませてもらっています。
今回の作品、ジャンルは青春小説。わかりやすい!
少し前から新作の更新で勢いがあったので、気にはなっていました。
どんなのを読ませてくれるか期待していましたよ。
感想企画に更新あわせて下さり嬉しかった。
いや~、うん。今回の更新、一本取られた感がありました。
もしやのば先生、隠れた実力派作家?



■各話ごとの感想
・0.昔の約束
主人公・硲(はざま)には、幼馴染の女子・時枝がいる。その存在に今までさほど執着はなかったが……。
物語の導入、ぐっと主人公の視点に引き込まれます。口語が生きるように綴られている。
苗字のゴロをつくってもやっとなっている感情。幼さを残した思春期の表現に好感が持てます。そう、だからなんなのさで終れるのは百も承知。でもね、言葉にならない、飄々となりきれない気持ち、あるよな~。

・1.魔法の時計
1~2
才色兼備のクラスメイト上野は硲の友人。上野はちょっとしたきっかけで時枝に好意をもつ。時枝へのアピールから、惚れて一週間足らずで時枝家(時計屋)に入り浸る。
前話の硲の幼馴染への執着ぶりから、少し不思議になりました。高校生活は集団社会。そんな環境だから時枝に拘らず他に女子を見つけては? なんて思った。
そういう気持ちに持っていかないのがラノベ世界のいじらしさなんでしょうか。ありがちな感情ではあるけど硲のもやもやする気持ちが分かり易い反応です。

・2各々の時間
1~4
心のもやもやを時枝の親父さんに見透かされた硲。不思議な時計を押し付けられるも、どう役立てようかと考える。あれやこれやと試みてみるのだが……。
登場している時枝家に伝わる曰くつき腕時計。これ、同じ時間内で気になる面倒事と嬉しい事、複数並行して起きている場合、どの時間を拾うのだろう? と思った。物語で焦点が当てられているのは複数ではないだろうから、こういう考えは蛇足だけど実例であると……なかなか厄介な代物になるかなw

・3.時間の価値は
1~3
心折れそうな出来事のあとも、時枝の気配を探してしまう硲。折しも進路を皆が考え始める時期。
周囲の友だちから見えてくる硲自身がみる自分像の描写が丁寧でした。好印象。こういう掘り下げがあると主人公の内面へ気持ちが傾いていきます。
完璧に見える人間より少々難がある方が魅力的って何かで読んだから硲は大丈夫だと思う。と、フィクションの存在だからこそいえる無責任発言をかましておく。

・4.愛の絶対性
いよいよ始まった文化祭。休憩中、硲は喫茶(2年5組)に遊びに来ていた。
吹石ってきついけど、なんやかんやでアドバイスやヒントをくれるありがたい存在。硲の魅力ってなんでしょうね。おおよそ、こうなるのかな……という想像はしてしまいます。物語をまとめてくるのか、広げていくのか、いずれにしても今後に期待です。



■今回の総括的感想
幾度となくニノベの更新欄では確認していた作品です。本作を読ませてもらうのは今回が初めて。色々驚きがありました。おかげでコメント2~3残していますw
前作品「事実は小説より…小説なり」よりも、全体的に丁寧さを感じます。物語もシンプルで読み手を振り回さない優しさが感じられました。作家さんの個性なのだと思いますが、独特な例え表現もありますが、突飛過ぎないので不快感もありません。むしろ面白い。意図されているのか、小説という作品を作る上で、細部まで目が行き届いている気配を感じられました。のば先生の作品、二作しか読んでいないので、どうしても比べてしまいます。ですが本作の出来は以前のものより、格段に読み手に親切な作品だと思います。
文章でも主人公の口調がそのまま聞こえてきそうなくらい生き生きしている。人物像も明確。誤字他文法的におかしなところもない。テンポも良い。サクサク軽くてこれぞラノベ感があって読みやすい。いいことづくめ! 今回一読してびっくりさせられました。二作目でここまで違うのかと――。完結作品として仕上げてほしくなりました。
いや、ホント凄い! これだから文芸界隈面白い。
のば先生の作品を読んでいると、顎シリーズ(顎男先生作品)のサクサクノベルとよく似た文語シャワーを浴びる感覚になる。本作にも同じようにその心地よさを感じました。独特で軽快なテンポ。特筆しているといえるでしょう。読み心地は抜群でした。
作品のモチーフはシンプルでどこにでもあるようですが、この作品なら推せます。
未読の方は是非一読してみてください。
青春の一幕。読後甘酸っぱくロマンチックな気持ちにしてくれるかもしれません。



■作中印象深かった箇所
・青春の金太郎飴構造。
いつでもどこでもハンコ押したように完璧という上野クオリティーが伝わる。面白い表現。
・俺には趣味らしい趣味がない。
熱中したり夢中になれるものが欲しいのでしょうか。個人的には何もなくても悪いことではないと思う。ただ渦中にいると引け目はある。そんな曖昧な気持ち、青春らしいですね。



以上この作品に関する12日更新分の感想はここまで。


       

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