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「静寂の教室」   ichigata 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17875

個人的にはニノベで初見の作家さんです。
コメント欄をみるに、漫画かイラストもお描きになるのでしょうか。
作中の上手い挿絵は自前でよいのでしょうか。
固定ファンがおられるような気配も感じます。
感想企画の作品更新で新たに知った作家さんでした。



■各話ごとの感想
・静寂の部室
文芸部に所属する主人公・本間悔無(ほんまかいな)は、同じく文芸部員・馬路佳代(まじかよ)のいる部室の雰囲気を気に入っていた。
登場人物名ふざけている。笑った。挿絵上手い。凄い。
部室で本を読み耽っているようだが、その思考は馬路佳代のことを語る。本当に読書が捗っているのかってつっこみ入れたくなりましたw
部室で本間悔無と馬路佳代の二人きり。良い意味での質素な時の流れが新鮮です。


誤字(格助詞)
扉が開ける→扉を開ける

・静寂の教室
休日(土曜)本屋へ行くと馬路佳代に会う。目が合って恥ずかしくなる悔無は自意識過剰。
悔無という男、相当なうじうじとした性格とみる。相手に恋をしているわけでもないのに普通にしゃべりかけられないってイラつきます。嫌だなこういう男。共感できない。(明確な人物像を褒めている!)


誤字(変換ミス)
開いている→空いている

・喧噪の部屋
南田の誘いを断り自己嫌悪の悔無。しかし厄介なことに南田は文芸部に部活見学に来るのだった。
部室で起こる鍵のかけ違いのあるある感、微笑ましい。馬路佳代と悔無の間には会話が成立しないだけに、二人でいる間の悔無の心理描写に笑わされます。自己完結、自意識過剰っぷりのひどさ、救いようがない。

・静寂の世界
帰宅した悔無は文芸部の部誌を漁って読む。その中の一作に心揺らされ気づくと泣いていた。
過去の自分の作品、人前で読む勇気は絶対ない。絵の方はまだしも、文章はもう死にたいですねw

・喧噪の部室Ⅱ
馬路佳代とは対照的にコミュニケーションをとってくる南田夏菜。彼女の存在が悩みの種の悔無。馬路に良い部室環境を作ってやりたいと思うも、うまくいかず自己嫌悪は絶えない。
南田におすすめの本を聞かれて悔無は不平があるように見えるけど、いい加減書評とかを調べてお前も本を探せよという気になります。雰囲気だけが好きで文芸部にいる。それも去年から。何も自分から行動しないこの主人公に腹が立つw 殴りたい。

・鳴動の携帯
文芸部らしい活動のはじまり。ホワイトボードを部室に運び込み、部誌の発行について検討し合う三人。
この少ない人数で部誌を作るとは見上げたものと思った。馬路はともかく、新都社文芸作家陣の文フリ活動なんかをツイッターで垣間見る程度の私ですが、この三人による部誌の需要がどこにあるのかさっぱりわからないw 本格的に作る必要あるのか? 文化祭でもないのに? そういうもの?

・静寂の部室Ⅱ
南田のカラム(メッセンジャーアプリ)によってつながりができた文芸部員たち。部内では少しずつ変化が見えてきていた。
変わっていく文芸部内の空気に戸惑い、鬱々とする悔無が相変わらずウザイ。しかも部長なのに部のかじ取りもままなっていない様。なんだこいつはあー。何がしたい。ここまで物語進んでも同性の友人一人も出てこない。相談相手いないのか? 学校社会での人間模様や交友関係にちょっと物足りなさを感じるところです。

・清朗の休日
南田の電話から問答無用で駅に集合。悔無、馬路、南田は駅前をぶらついているもよう。
この三人が休日集まる必要性を全く感じない。主人公自身にもそれは語らせているけど、だったらなんでわざわざここで物語のネタになっているのだろうと疑問。
この物語、どういう形で収束するのでしょうね。

・未age分
本屋から帰ると南田からの電話。悔無は再び駅前に戻る羽目に。
一緒にいて場の空気が持たない相手と、日中会って何をするというのか。南田の無計画さが浮き彫りになる。普通そういう相手とわざわざ出かけたりしないと思いますけどね。意図があまり読めません。どこで笑えばよいのだろう。残念だー。



■今回の総括的感想
今回初めてichigata先生の作品を読ませてもらいました。更新もまめにされていたので本作もニノベの更新欄で確認していました。なんだか挿絵が豪華だなあと感じていたのが読む前の印象。読了してみて、じっとりとした文章、趣のある作風が新鮮でした。
ジャンルはラブコメとあります。そうくるとテンションが高くて文のテンポも軽快で賑やかなイメージなのですが、本作にそれは感じません。ライトノベルの態を成しているけど、ややもするとその中でも鬱ノベル。盛り上がる場面や騒々しい展開もなく全話通じて閑寂です。コメディーと言ってしまえるのでしょうか?……どうだろう。じわじわ笑える箇所はありますが、どっと笑いは起こりませんでした。ラブ要素もどこか曖昧。独特な雰囲気で面白い作品ではありますがラブコメのジャンルでは現状、悲しいかな推しどころ見つかりません。青春うじうじ日常系でしょうか、これだと。決して作品自体に魅力がないわけではない。誤解なく。
ステレオタイプのラブコメを期待して読むとアレ?な感はあると思います。
タイトルどおりぶれない一貫した静寂感。静々と進行する物語です。主人公(本間悔無)は直ぐ自己嫌悪で頭いっぱいになる。不思議系女子(馬路佳代)とお気楽系女子(南田夏菜)。三者三様な登場人物の関係が非常に微妙。つくことはない、だから離れもしない。はじめから対人での心理的絡みがない人間関係。個人的には主人公に全く思考を共感させたりはできないのだけど、読んでいる分には面白く感じました。
上手く書かれている良作ではあるけど、どこか少し損をしているかもしれないとも思えるのが惜しい。文章は平易で読みやすいです。
静けさやじわじわとした物語の進行に、退屈と感じる読み手もいるかもしれませんが、目線や価値観を変えて読んでみるにはいいかもしれません。
静寂の空気が漂う独特な作品。意外性として読んでみてもいいのではないでしょうか。



■作中印象深かった箇所
・パイプ椅子がガタッと鳴る。そうか、夕ガタか。
音良い。作品に映えつつそぐう。わびを感じた。



以上この作品に関する12日更新分の感想はここまで。


       

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