5月7日更新文芸作品感想


★5月7日更新の文芸作品感想


更新されたのは全6作品
もっと沢山来るかと思いましたが、順当なところでしょう。
感想の存在、知ってもらえている? 奥ゆかしい更新作品数が文芸らしいです。
気圧されるくらい更新が来てくれると……死にますな、私。
これを機会に文章修行をしてみたい方。この場を利用するのも手かと思います。
同じく私も修行になっています。
いやホント、いろいろ学ばせてもらっています。ありがたい。
感想更新前に作品がageられた場合、その作品への感想更新を控えます。
毎度のことですが、よろしくお願いします。
今回の感想は以下の作品を書く予定です。(更新順に列挙)




「チーム・エレクテオ」
「新都社 漫画評論集」
「Sakiです、歌わせていただきました。」
「きっとあなたも独りです。」
「右手短編集」
「青春小説」




「新都社 漫画評論集」   DJ ERIERI 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17269

こちらの作家さん、私は個人的に初見の方です。
新都社では漫画やブログにと、積極的に活動なさっておられるようです。
既にご存知の方もおられるかと。
こちらはDJ ERIERI先生の漫画の評論集ということです。
文芸にはみんなで評論、『自説自論』というのが企画でありました。
評論は初心者でなくてもなかなかハードル高そうです。


■一作論評ごとの感想

・第一回 本当にあった後藤健二の話(21世紀のスポ根漫画)
気になったことを先に。
【以下本文抜粋】
『今後、ちょくちょくとWEB漫画の評論をこのブログで書いておこうと思う。
WEB漫画というジャンルもだいぶ定着し、作品も蓄積されてきているが、本格的な評論となるとまだまだという印象を持っている。あるジャンルが蓄積されて発展していく過程で、評論が果たす役割は決して小さくないはずだ。商業漫画の評論は数多くあるが、WEB漫画、しかも非商業系漫画のそれは、あまり読んだことがないと思う。だったら、この俺様がそれを書いてやろうじゃないかと言うのが、評論を始めようと思った動機である。
で、まず、評論の基本方針として、自分が褒めようと思う漫画以外は取り上げないようにした。これは、当然で、ぼく自身が漫画を描いているので、ぼくが他の作家を批判したら、批判の応酬になってしまうのは明らかだからである。
それと、評論する以上はちゃんと読んで、分析的な視点で論評するようにした。これは評論する対象の作者、そして作品に対する最低限の礼儀だと思ってる。』【本文抜粋ここまで】

上記の本文抜粋部分、序文で述べなければいけない内容。これは「本当にあった後藤健二の話」を論じる前にもってくるべきです。ここでいうなら、タイトル「第一回 本当にあった後藤健二の話(21世紀のスポ根漫画)」これの前。
なぜか――。
答えはこの序文中でERIERI先生ご自身が語っておられる。
この部分です→「これは評論する対象の作者、そして作品に対する最低限の礼儀だと思ってる。」この意識があるなら、ぜひそうしてください。
「これから私はこういう形式で以下に紹介する漫画作品を論評していきます」という意思表示は、この評論作品で対象とされる全ての作家、作品へ係るべき内容だからです。ゆえに、特定の一作品を論じる場にまとめて掲載してしまうのは安直です。
序文としてセパレートし、論じる意図を読み手へ明確に、分かりやすく掲載するのが賢明かと感じました。

作家と作品への愛に横やりを入れるようなことを述べるのは、少々憚られますが……。
ただ、私はこの評論は作家への私的ファンレターではないという見方をしています。
同時に、私はこの評論著者、ないし評論対象となる作家、作品全てへ敬意を払う旨があることもご理解願いたい。その上で、以下のことに言及したい。それは個人的な感想でもある。

後藤健二先生(作家)が好きなのは分かります。愛があるのも分かります。
後藤健二先生(作家)の作品へ真っ向真摯なのもよく分かります。
ですが、注意してほしい点が二つあります。
本評論作品で、後続して紹介されるすべてに同じことが言えます。
まず一つ目。「本当にあった後藤健二の話」という作品を論じる場合、作中登場する後藤健二(敬称略)と後藤先生ご本人を、明確に区別できる呼称を使って評論を書いてほしいと思いました。
理由は簡単。この作品を知らない読み手は混乱・混同する。
実録作品が評論対象なのは、序文で理解できています。だから評論本文中で「先生」という敬称を、全てにつけると後藤先生ご本人のことを論じている作品を読んでいるのか、「本当にあった後藤健二の話」の登場人物である後藤健二(敬称略)についてのことを読んでいるのか分かり辛い。勘違いを起こします。私はこの評論の読み手ですが、いつのまにか後藤先生ご本人についての考察を読んでいるのか???という妙な気持ちになりました。どういう事かというと、実録漫画の評論ではあるけれど、そこから外れて四六時中監視されている後藤先生ご本人に関する自論や考察を読まされている感覚です。これ、違いますよね。
そして二つ目。これ大事。評論本文中、幾度も使われる「後藤健二先生の漫画」、これを「本当にあった後藤健二の話」とちゃんと評論対象である作品名を記すこと。
こちらの理由も簡単。第一回のタイトル通りです。ここでは「本当にあった後藤健二の話」の評論ですから、「後藤健二先生の漫画」とすると、すべての後藤先生の漫画作品全般という意味にもとれます。そうではないはずです。「本当にあった後藤健二の話」という作品への愛があるなら、尚のことでしょう。特定の作品を論じるときは、ちゃんと文脈をとりながら、タイトルを明示するべきです。論旨がどこにあるのか、評論では明確にしておくことです。

・第二回 日々徒然(砂漠に咲く一輪の毒花)
ここでもやはり第一回と注意点は同じ。
作品名、明示してほしい。「GaS先生の漫画」→「日々徒然」。
人物。GaS先生ご本人か、「日々徒然」作中のGaS先生か否か分からない。
因みに私はGaS先生のことを知りませんでした。作品も知りませんでした。
ここでの評論を読む限り、どんよりとした作風なんでしょうか。面白そうですね~。
ただ、ERIERI先生の評論文ではさらに、私の知らない作品名や人物名が出てくるので、評論からだけでは作品を把握することはできませんでした。
②のジブリのたとえ、つっこみどころは満載でしたw
③④は作品の評論なのか何なのか、ぶっ飛んでいた気がしますwこれは漫画の内容のことを書かれているのでしょうか? 「日々徒然」を読んでいない私は全く分からない。
普遍性を追うなら、ERIERI先生独自の言葉で作品を説明してもらえると、「日々徒然」という作品をなんとなく把握できたかもしれません。ここから把握できたのは、「日々徒然」がプチプチ並みの扱いしかされていないという侘しさでした。そういう作品なんでしょうか?
多分違うでしょうね……。なにか切ないものを感じます。
これを機会に読んでみたい作品になりました。そういう意味ではこの評論大成功!


誤字・脱字
Web漫画→WEB漫画(表記をどちらかに統一するべき。序文含めて)
小説だと太宰治→小説家だと太宰治

表現
ツウィッター→トゥウィッター
Wを「ウィ」と書くならどうせならTもこれくらい発音しましょう。(照れない!)

・日々徒然追記
第二回で論理性が足りなかったことへの追記でした。
ここのタイトル、「第二回日々徒然への追記」かと思います。
コメント欄でもありましたが、追記がむしろ分かり易く、共感できます。
ERIERI先生の言葉や考えが丁寧に書かれていたので、自論として読めました。
でもやっぱりプチプチは譲れないポイントみたいでしたw 気泡緩衝材というそうです。
この追記あって良かったのではないでしょうか。


「Web」の妙
Webで掲載→Webサイト(ウェブサイト)で掲載
Webは没入感→Web漫画は没入感

・聖ブランカ女子高校 美術科(ひよこ踊りで哲学を)
タイルからしてもう外している。「第〇回」を今までつけていたのは何だったのでしょうか。
そして評論から哲学へ転身ですか。謎です、この評論。
一様、作品名らしきものはタイトルにあるが作家名がない。
どの作家さん、どの作品へもちゃんと同等にタイトルを割り振ってほしいです。
類似作家の名前を出してくる前に、評論対象作品の作者名をちゃんと記載するべきです。
作者と作品への愛を疑う。
商業作家の例えばっかり出してこないで、ノウノ先生にしかない魅力を著者自身が語れやコラ!と思っていたら①②③でちゃんと書いてくれている。そうそうこれこれ、こういうのが欲しいのです。
ノウノ先生の作品へ興味が湧きました。
けど、評論というより作品紹介な気がしましたw まあ、良いでしょう。

・アルコリス(空間の魔術師)
タイトル、作品紹介ザルです。
作品の評論のはずです。
「キャラクターが自分好みである。絵も好みである。」
好みを語るのも良いでしょう。しかし足りない。
これでは評論の読み手が、この作品を知らなければどんな作品なのか、想像つきません。
細い線なのか太い線なのか、柔らかいタッチなのか、作風の臨場感を伝えて欲しい。
作者についてはOK! 良い紹介でした。
論評としての着目点、切り口もどこにあるか明確でした。ERIERI先生がこの漫画のどんなところについて論じたかったのかよく書かれていて、そこから興味をそそられることができました。


■今回更新分までの総括
文芸では企画の「自説自論」は面白いので必ず読んでいましたが、実際こうして評論作品の感想を書いたのは初めてです。思うところは多々ありました。私自身もこの評論作品を通じて知った作品がありました。確かに、本作の序文であるように、漫画評論がもっとあってもおかしくはないですね。発見がある。
読み物としては、笑えるところが沢山あり、ネタも豊富なので面白いです。これは誇るべきところだと思います。しかし、ざっくり切りますと、評論としては未熟です。評論がたとえブログ形式であっても、こういった作品登録の場で公開するのであれば、評論作品として全体の統一感が欲しいところです。
文芸作家でブログだと、ノンストップ奴先生が書評等を書いておられます。鋭い切り口でご自身の意見や感想、考察を書いておられるのでその点は、参考になるかと思います。
文章での漫画作品の表現力、自分の精神面の表現や描写においても、もっと具体的に書いて欲しいと思うところがありました。何が、どんなふうに、どうして、なぜ、にあたる答えを、もっと濃厚に読みたいと思います。
手厳しいことを沢山書いたと思いますが、それだけ期待があるという事です。
初作の評論作品としてはなかなかの健闘ぶりだと思います。これからが楽しみです!
これを機会に、知らない漫画を知ってみたい方は、一読のほどいかがでしょう。



以上この作品に関する7日更新分の感想はここまで。






「チーム・エレクテオ」   嶋野 項 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17807

こちらの作家さんも初見のかたです。
作者コメントを見る限り、連載雑誌の移動でしょうか。
新都社の漫画雑誌で休載中の作品を、文芸で書いてみたとのこと。
試みとしては悪くないです。漫画のノベライズ。
今回は第一話のみで更新。挿絵漫画つき。手ごたえ次第で文章勝負という事でしょうか。
文章量少ないので感想をまとめました。



■感想
場所はインターネットカフェ。男性会社員コウタとタクロー、女性会社員ミキは強い破壊力をもつ男たち二人に追われていた。しかし何とか危機を切り抜ける。『指名する者』が『選ばれる者』をチームメンバーとして選び、ねずみ講式に能力者が増えていく。能力バトル小説でよいのでしょうか。
内容自体は面白そう。ビジネスマンが戦ってもいいじゃやないか! という気迫、嬉しいです。第一話、序盤に緊張感もあり、終盤にはいいシーンもありました。どちらかと言えばニノベよりの作品。
一話だけなので、なんとも全容を把握できませんが、物語の「起」にあたる部分、さわりはなんとなく把握できました。話数が進めば、面白い起伏に富んだ内容も見えてくるでしょうね。
ただ、惜しいのが文章力。拙いです。おかしな表現が多々散見されます。読み辛いかというと、そうでもない。好感をもてる文章です。挿絵は上手なので勿体ない。文章で連載を続けるなら、修行が必要かと感じました。文章作法や違和感のある文になってしまうのは、書く経験を積めばすぐ矯正できそうです。このまま連載しても読めそうな作品だと思います。
作家さん次第ですね。個人的には、続けて上手になってくれると嬉しいです。
ブンゲイナーに新しい作家さん欲しいです。切実。
励みになるよう、以下おかしな表現一部あげておきます。
こんなのでくじけず頑張ってほしい!



構文と表現の妙
「反射的にタクローが男に殴りかかっ…たものの、ミキから手を離した次の瞬間には茶髪の腕を掴んでおり、掴まれたと気づいた次の瞬間には空に投げ出されていた。」
>三点リーダー、どう読むか分かり辛い。リーダー使い方、慣れないうちは奇抜に使わないのが、得策かと思います。他にも「‥」を使っている箇所、読み手へ配慮が欲しい。
>「ミキから手を放した次の瞬間には茶髪の腕を掴んでおり、」
→「ミキから手を放した男に次の瞬間(タクローは/彼は)腕を掴まれており、」
三人称視点、殴りかかたタクローの視点から、突然男の視点へ移り、また投げ飛ばされたタクローの視点に戻ってくる。誰の視点で書いている一文なのか統一した方が読みやすいです。読み手混乱。


表現の理解困難
「人差し指で?を押し当てながら」
?て何だ。


文末の妙
「~~であった。」「~~である。」
→「~~た。」もしくは「~~だった。」
地の文の形態が突然変わっている。急に笑いのネタに入ったかと思った。


格助詞(脱字?)
コウタは二人だけ聞こえる範囲で話した。
→コウタは二人だけに聞こえる範囲で話した。


言葉使いの妙
体が巡る→体に漲る(みなぎる)
めぐる感覚→みなぎる感覚
「体が巡る」だと、体がどこかへ動く状態だと思います。でも体(身体)の内側と表現したいのなら、おそらく言いたいことは「漲る」だと思います。「エネルギーが漲る」、「パワーが漲る」とか。
あとこの言葉が出てくる箇所、文の人称が少し曖昧でした。



以上この作品に関する7日更新分の感想はここまで。




「Sakiです、歌わせていただきました。」   ハッチ 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17621

またも初見の作家さんです。
確信はありませんが、どなたかの別名義かもしれません。
作品の連載開始は3月22日から。着実な更新で順調に話数も進んでいます。
企画にあわせての更新で読ませていただきましたが、衝撃的作品でした。
なかなかの文才。手練れ感があります。
唸りました。
コメント少ない。どうしてでしょうか。



■各話ごとの感想

1.
1~3
京都の文系大学卒で、IT企業に就職したヒロイン稲枝咲子(いなえさきこ)。持ち前の性格から、社内の自己紹介でさっそく恥を書く羽目に。マナー講習実践の折には、同じ部署のオタク先輩河瀬彰人(かわせあきひと)から「惚れた」発言をかまされ困惑する。しかしなんとそこには彰人の企み?があった。
引っ込み思案で、他人との交流もさほど上手くない咲子の無様具合が、詳しく綴られています。実録OL奮闘記のようですね。ビジネスライクの社内風景も鮮明に浮かびます。咲子本人は大変でしょうが、はたから見ていると彼女のような存在は逆に癒される気がしました。
一方、仕事は抜群にできるが、人格に難ありの先輩社員彰人。こちらの人物描写も秀逸。こういうオタク男性多いでしょうね。職場にフィギアを置けるかどうか、日本の職場事情を知らない私は想像の域を超えます。詳細な彰人のデスク周りの描写には笑しまいました。本作7個目のコメントも私です。退社後に咲子を追い、横断歩道ですっ転ぶ彼のダサさ。ホントにみっともない。目も当てられない。けれどいいじゃないですか。自分にも似たようなところがあるのですから。憎めない男です。
読み始めて驚いたのが、突出した文章力の高さでした。少し読んだだけで、人物像がくっきりと見えてきます。しぐさや言葉、身の回り、いたるところから、咲子と彰人の人物像が伝わってきます。舞台も明確で分かり易いです。情景描写にいたるまで、どこか卓越していて書き慣れている。物語の流れに緩急もあり、笑える場所ではしっかり心掴んで笑わせてくれます。まるで、取材をしたような、観察眼のある社内風景には感服しました。
読んでいて震えました。作家さん何者?

2.
1~3
職場では彰人に指導員として付いてもらいつつ、自宅では彼に教わった動画サイトへログインし、あれこれ動画を視聴する咲子。彰人の趣味を了承したが、実物を見て打ちひしがれてしまう。そんな彼女へ彰人は丁寧に気持ちを整理できるように誘導する。咲子は徐々に彰人の趣味へ傾倒していった。
今までの話から匂わせるセリフで入る物語の導入、とても心地よかったです。トリック的な技法でしょうか。文章力、ただ者でない感じがうかがえます。咲子が知らない世界へ、足を踏み入れていく心境、緊張感もリアルに書かれていて好感が持てます。不安な彼女のもとで鳴る彰人からのネット電話の着信音、彼女の安堵の気持ちがひしひしと伝わってきました。また、咲子が創作をする人間へ変貌し始める様子など、密度のある会話が交わされるところでは、共に白熱する気持ちになれました。登場人物が主に咲子と彰人だけなのですが、女性的な価値観と男性的な価値観が、ちょうどよく分配されているように感じます。絶妙さ、凄いです。セリフにも重みや説得力がある。
読ませるな~。魅せるな~。作家さん何者?(2回目)

タイプミス(削除ミス)
ごみごみしたとした→ごみごみとした

3.
1~3
彰人の指導の甲斐あってか、咲子は職場で意図せずデキる新人になっていた。趣味のほうでは相変わらず、彰人の真摯で用意周到な取り組みに驚かされつつ、精神面では支えられていた。一人でのカラオケは不安もあったが、胸に抱く曲への気持ちを整理することもでき、歌の収録に挑んでいく。
私もカラオケできない人です。ここでの咲子の気持ち、とてもよく分かりました。ボーカルのない演奏、恐怖ですね。共感できます。閉鎖空間でマイク片手に歌うのも、鼻歌なんかと違って敷居が高い。お付き合いでカラオケに行くときは、よく頭を抱えていたものです。
彰人に関しては、自分の欲望を満たすために、咲子がストレスなく歌えるよう誘導しているふうにも見える。彼女の気持ちに紳士的な対応しているのかは謎。策士なんでしょうか。ふるまいからでは彼の内面は見えてこない。けれどもそこに、読み手が憶測を入り込ませる余地があって面白いです。

4.
1~2
日々の仕事と趣味の両立。彼女にとってそれは難儀か。歌うことの次に訪れた咲子への課題。それは作詞だった。読書の経験を活かそうと、頭をひねるもアイディアは浮かばず。そんなとき彰人から作曲した曲の一部が送られるが……。
新しい楽しみを見つけて、思考がそっちへ加速している咲子の様子。誰にでもある現象だと思います。しかし、そればかりを許されないのが社会人の世界。社会人の立場にあるとき、まず消化しないといけないのは目の前の現実。咲子にとってのそれは、職場での仕事。それを差し置いて趣味へ意識を走らせるのは、社会的立場の信用を失う第一歩になりかねない。この物語だけでなく、身近な出来事としても納得できました。
反面、創作意識が急激に増す咲子へも、創作家としての気丈な振る舞いに感嘆させられます。彼女の今後と、彰人との関係が、どういう方向に行くのか非常に楽しみになります。
今後の展開に期待!



■今回更新分までの総括
タイトル一目でわかる内容。登録ジャンルでも同様。本作は歌う話です。稲枝咲子というOLが今まで知らなかった動画サイトに、自分の歌を公開していきます。発端は職場の先輩河瀬彰人に、声を惚れこまれたのが始まりでしたが、いつの間にかのめりこんでいく。彼女の心境が少しずつ作家のそれへ変化していく様子が丹念に描かれていました。IT企業のOLがヒロインなのですが、職場風景などもなかなか鮮やかで詳しく、臨場感があります。オフィス風景に疎い私には、新鮮であるとともに、イメージしやすかったです。まるで作者自身が、この職場にいるのではないかと思わせられるほど。大よそある程度の経験がないと書けないだろう思われる事柄も、親切に分かり易く書かれています。文体は長文を読み慣れないと、やや冗長に感じる箇所もあるかもしれません。ですが至極読みやすいです。そこから文章力の巧みさだけでなく、作家の読み手への配慮がうかがえました。淡々としてはいるけれど、そこに魅せられる。情景描写だけでなく人物のしぐさや心理描写なども秀逸で、咲子と彰人がくっきり見えてくる。二人はどちらも完璧人間ではなく、それぞれに欠点のある人物。ですがそこを掘り下げ、しっかり書かれていることにより、キャラクターの魅力がよく出ています。セリフからくる説得力や、人物の内面描写は、読み手に入り込む隙が作られているようで、物語の中へ自然に引き込ます。作品全体の構成を見ても、更新ごとに非常にまとまりが良い。驚くべきことに、現実のシーズンと更新内容がシンクロしている。そう簡単にできることではないと思います。以上のことから本作、完成度の高い作品だと感じました。作家さんの力量、かなりなものです。
作品への期待やハードルを上げるようなことを言えば、完結を強く望みます。ですがむしろそれすら可能かと思わせられる一作です。文芸作品として心揺らされたり、思い巡らせられる作品です。作品のモチーフ以上に読みごたえがありました。
良作です。
こんな作品、ポッと出てくるところ新都社文芸界隈、怖いですね。



■作中印象深かった箇所
・無口、無愛想だと聞いていたが、おそらく自分の趣味のことになると口が回るのだろう。
手厳しいオタメンへの一文。いや、男全般そうだろう、もう許したってと思う。女性もそういう一面あるんだし。
・特別意識する必要もないのだが、咲子は妙にそわそわしてしまう。
小さな人情の機微、とてもかわいいと思った。
・むしろ安易に褒めたりお世辞を言わない正直な意見を聞けて嬉しかったぐらいだ。
ダサい反面もあるけど仕事がデキる彰人。こういう側面にも好感が持てます。
・デスクの上の美少女フィギアは養護できなかったが、仕事は真面目で優秀、趣味の作曲を真剣に取り組む姿には尊敬さえしていた。
運転免許の更新に行ったとき、自分のデスクにゼルダの伝説や進撃の巨人他、自作イラスト飾りまくっているオフィスレディがいました。声をかけてお友達になればよかったでしょうか。勇気がでませんでした。彼女のメイクは素敵でしたが、お尻は自分の5倍くらいあって、ちょっと怖かったんです。ホントに。
・ボーカルのいない曲はただ騒がしく、部屋の中に響いた。
共感。
・僕は稲枝さんが歌う『赤ずきんの幕間劇』がききたい
彰人殺したいと思った瞬間でした。
・動画投稿サイト/ボーカルシンセザイザー
ニコ動とかボーカロイドとか外してくる表現、良い。

他にもありますが、書きだす箇所として文量が多くなるので割愛します。



以上この作品に関する7日更新分の感想はここまで。




「右手短編集」   右手 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=2569

なんと、8年前の作品のサルベージ&再利用と作家コメントにあります。
ちょっとした驚き。古参の作家さんです。歴史を感じます。
右手先生は漫画の作品もお持ちのよう。
漫画と本作、いずれも未読でした。
ご本人のブログの情報では、ひっそりと文芸作品を更新とのことでした。
小説と漫画。両刀使いの未来、応援したいところです。


■各話ごとの感想

・ROOM
水中世界にいる男の奇妙な体験談。
世界観が独特で面白いです。登場人物もコミカルなタッチで描かれていて、漫画を読んでいるように感じられる。セリフもシンプルながらに笑わせてくれます。右手先生ならこの作品、漫画で書けそうですが、文章になっていても楽しみる要素があり興味深いです。
人物像もしっかりしていて、短い作品ながらなかなかどうして味わい深い。
この物語、続きがあるのでしょうか? 最後のおわり方がそんな雰囲気ですがどうなんだろう。

・数字の話
「―」、「二」、「三」、「四」、漢数字の話。
四がなぜこの漢字になったのかを、二人の女子が話題にしています。「ほほう、なるほどなあ」と頷けるものがありました。ここに書かれていることが、実話なのかは分からないけれど、惹かれるものがあります。
作家さんの感性だけで書かれているとしたら凄いなあと思いました。

・食通植物
捕食して生きる植物の話。
サクサクと読めました。落ちは想像つくのですが、悪い気はしません。軽快な文章で読みやすいところも好印象。先が分かっていつつもクスッと笑えるところや、つっこみどころもありました。

・理想郷S
小さい生き物の世界。
本作のなかで一番好きかもしれません。序盤の文からうかがえる世界観が幻想的。しかしその世界には、どことなく血なまぐさい戦の気配も感じられる。何が書かれているのか最小限の情報。ぼんやりとぼかす伝え方が、抽象的ではありながら、終盤一気に種を明かされます。ちょっと可愛らしいと思えました。


■今回更新分の総括
どの作品にも共通しているのが、個性的な雰囲気作りです。奇抜というのではなく、作品の個性を出せるだけの表現力が十分にあると思わされました。物語の構成もとくに問題なく、よくまとまっていると思います。ところどころ違和感を覚える言葉使いもありますが、そこは人それぞれの感覚の範囲で、私が個人的に気になる程度。全く気にならない方も多いと思います。短編集としてちゃんと成立していました。漫画も書きつつこうして短編小説も書けるという力量、貴重だと思います。ぜひ誇って欲しいです。増長しない程度にw
各作品、どれも短いショートストーリーなのですが、その短さが問題なく普通に良い。好感が持てます。前述しましたがサクサクと読めてしまう感じが心地よかったです。
こんごもどしどし作品を書いて欲しいと思いました。期待!


■作中印象深かった箇所
・……太陽が、青い。
冒頭一文目。ストレートかつ鮮烈。良い。
・洗濯機のなかから説教されるとは思わなかったな
笑った。このシーン、コミカルで良い。
・もしうっかり誤字ったら首が飛ぶかもしれないのだ。
古代の中国、特に王宮に使えていた人たちの規律は厳しそうだから、本当にそんな気がしますね。



以上この作品に関する7日更新分の感想はここまで。





「青春小説」    ヤマ=チャン 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17567

10周年感想企画以来、今回二回目の感想になります。
順調に更新しておられるので、前回の感想を書いたときから物語に少し進展がありました。
物語序盤だけの感想と、ある程度話数を更新してからの感想。
作家さんはまた少し違った参考などが得られるでしょうか?
お役にたてれば良いのですが……。
私なんぞはへなちょこ作家ですので、如何ともし難いところでしょうか。
因みヤマダ先生は、別名義の作品をお持ちなのでしょうか。裁量から可能だと思う。
実は既になさっている――。……なんてねw



■各話ごとの感想
2.灰空
同じクラスではあるけれど、馴染のなかった女子・笹本秋桜(ささもとあきお)と親睦を深めていく理緒。しかし、一緒に行ったカラオケボックスで、彼女からの思わぬアプローチに困惑。逃げ帰ることとなった。
学校でやることが、その後の人生どう役に立つか、立たないか。まだ一歩も二歩も、大人へおよばない理緒の青い思考が、表現として生き生きしているように感じられました。自分のことは棚に上げ、友人を非難する彼女の姿。そこにも浅はかな歪みがあり、中途半端な未熟さのあらわれを感じられます。依然として彼女の人物像にぶれはなく、好感度高いです。物語がぐっと動いてきたおかげか、前回ときよりも軽く読めました。
本作だけに限ったことではないのですが、新都社文芸界隈、同性愛嗜好の波があるのでしょうか。ふと、そんなことを考えてしまいました。

3.P.S. I miss you
笹本秋桜の同性愛の目覚めは12歳の頃。相手は女子高生のサッちゃんというお姉さん。しかしその恋は実らず。その後の理緒との出会いは、高校生になった彼女にとって、強い南風となったもよう。
理緒にとっては何気ないことだった秋桜への好意。そのシーンの書かれ方が印象的でした。理緒の本質的な性格は、そうあってほしいとうまく誘われます。作品に引き込まれる。現実にもありそうな出来事としても共感できました。無意識の好意を、周りの人が憶えてくれていることってありますね。逆の場合もまた然り。
ちょっとしたことでも、役に立てることが自分にもあるといいなあと思わせられました。なんか、あるんかな……(遠い目)

4.墜落
髪を染めたことについて、学校で指導を受ける理緒。クラスでは文化祭の準備で盛り上がり始めるころだった。そこへ秋桜との仲を気遣う日比佑(ひびなたすく)に話しかけられるも……。
ここでもやはりマイペースの理緒、クラスの行事では最低限の交流ははかるものの、深くかかわることはしない。彼女は近い将来、人からの好意を素直に受け入られるようになるのかな……少し心配です。
続き期待!


■今回更新分までの総括
コメントはつきにくそう、しかし読者は確実にありそうなのが、本作の傾向でしょうか。作家さんの文をここまで読んできて、見えてきたこともありました。ヤマダ先生の本作に感じられた特徴。それはある程度緻密な情景描写、事物の説明、具体的な人物の心理描写や機微、一つ一つの台詞の丁寧さ(人物の気持ちが反映されている)、これらにおいてしっかり書かれていると思いした。稀に冗長(ネガティブではない)な時もある。読んでいてそれらは不思議と苦になることはなく、読み心地は普通に良い。
また、作品を読んでいるのとき、文面から場面を心に描き、物語を追う行為は当然あるのですが、その先にある、人物が内側に持っている複雑な感情や、想いを感じさせられます。端的に言えば、読む行為に奥行きがある。情景描写や事物の説明文でも、その場に漂う空気と人物が感じている刺激、心の変化がしみじみ伝わってくるのではないでしょうか。読んだ先にある、感じさせるという文学的表現に、モチーフを乗せることに長けた作家さんだと思いました。あれ…? なんか似たようなこと最近他の作品でも書いた気がする……。まあいいや。
物語の内容では、新たに登場人物もありましたので、理緒の青春模様がどう発展していくのか、更に楽しみなところです。感受性豊かな年頃の少女をモチーフにしている部分、力量の見せどころでかと思いました。今後も楽しみにしたい。


■作中印象深かった箇所
・私の人生なのに、私がいいならそれでいいじゃない。
今こういうふうに思うことを悪だとは思わない。けれど理緒が、この先過去を省みることがあったとき、どんなふうに思うんだろうと、興味をそそられた一文。
・彼女の持つ魅力というのはスタイルがいいだとか、顔が整っているとか、そういった言葉ではなかなか表せないもので、私の感性によるものが大きいと思う。
「好みのタイプ」とせず、「私の感性によるもの」と書き出す上等なしっくり感。良い。
センスを感じる。
・足音ってこんなに強く響くんだ。
嫌なことから意識を懸命にそらすしぐさ。意識を完全に音に向けて内面を消す姿勢。イラついている感じが滲む。良い。



以上この作品に関する7日更新分の感想はここまで。



5月7日更新分の文芸作品全体を総括します。

どの作品を読んでも、つまらないものなんか無い。そこは変わりません。
個々の作品にちゃんと魅力あり、個性あり、密度ありで面白かったです。
今回の文芸では、ある程度話数が進んでいる作品が主でした。
作品序盤で感想日程にあてるか、話数が進んでから感想日程にあてるか、その辺は作家さんのニーズで決めてもらえれば良いかと思います。
私の感想がどんなふうにお役に立っているか、自分では分かりづらいのですが、自分の文章の肥やしにもなれば一石二鳥とかせこいことは考えていますよ、当然!(ゲス顔)
もう少し感想でも端的に書けるようになりたいと思いますが難しい。
語彙ないし、文章力ないしで泣きたいんですけど!
以上短いですが総括終わり。



ちょっと書いておくことできたので以下。

コメント欄、[42]さん。「感想を書く日がわかりずらい」とあったのですが、これの解釈として、私が作品の感想を書くのが何月何日(いつ)かということについての要望でしょうか?
だとしたら、具体的に「この作品の感想をこの日にかきます」という宣言を前もってするのは不可能。そこまで専念できません。感想書く時間配分も作品によってまちまちなので。
しかしおそらく言いたいことは、ハルノ先生のように「次回の感想は〇月〇日更新の文芸orニノベ作品」とトップに明示しろってことなのでしょう。
トップで書いておくのは毎回画像作らないといけないので、その手間と時間を感想執筆へ向けたいのでおそらくやりません。でも教えてくれてありがとうございます。

そこで以下、[43]さんの要望。「もしくは作者コメントに次の感想日を書くだけで良い。」
こちらについては、今後作者コメント欄でお知らせします。
気づいてくれてありがとうございます。助かった。
後藤先生からも、さり気なく示唆をいただいてました。
まだまだ感想の連載未熟者ですがよろしくお願いします。




次回感想はニノベ作品。

5月 17日 に更新された作品の感想を書きます。
(18日へ日付が変わるまでに更新してください。)







sage