Neetel Inside ニートノベル
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「以後、ウーエルとオーエルは互いを助け神事を務めていくように。では、
続けて継承の儀に移る」
 神の間のさらに奥、神に選ばれたもののみが通される継承の間へとウー
エル、オーエルが呼ばれる。

「は、はは。俺がアーエルに勝った……ざまねえなぁ兄貴ィ!!」
「ごめん、ごめんよアーエル兄さん。でも……でもどうなったって僕は兄
さんの味方だから」
 目の前で何か口を動かす弟たち。ウーエルの顔には笑顔、オーエルの顔
には涙が浮かんでいる。神はと言えばすでに継承の間へと動き出しており
部屋全体が神が動くたびにわずかに揺れている。ウーエルはボクへと近づ
いてくる。今までに見たことのないほどの満面の笑み、良かったなウーエ
ル。そんなに笑って何かいいことがあったのか? 何か言っているようだが
今のボクにはなんだか関係が感じられない。神だとか、勝っただとか。ま
あ、ウーエルが喜んでいるんだ。ボクもうれしいよ。
 一方泣き顔のウーエル。そんなに泣いてどうしたんだ? また誰かにいじ
められたのだろう。一体誰にやられたんだ? お兄ちゃんが懲らしめてやる。

 しばらくすると二人も神に続き奥の部屋へと入って行ってしまう。残さ
れたのは何もない部屋にボク一人。改めて部屋の中を見回してみればやは
り豪華な装飾に広い空間。ボクもこんな部屋に住んでみたいな。

 そうか、神になればこの部屋も自由に使えるんだった。




 何かの崩れる音。それは心のうちから聞こえた音。壁が崩れその奥には
とても醜いものがある気がした。だから目をそむけ蓋をしようとした。だ
けどそれは次第にふさいだ隙間から溢れ出してくる。見たくない、触れた
くない。いくら逃げても事実はかわらず、何より自分自身がその事実の正
体をうっすら気づいてしまっていた。破滅の足音、それはすぐ背後にまで
迫ってきている。どこかに逃げなきゃ。でも、どこに。とにかく逃げなきゃ。

 ボクはゆっくりと神の間から這い出す。


 外に出る。けれどもそこにボクの求める救いはなかった。ならどこに行
けばいい? ボクは歩を進める。


 もう、すぐ後ろまで迫ってきている。見なくてもわかる、見たくなくて
もわかってしまう。前方にボクの家が目に入る。早く帰ろう、帰らなきゃ!!



「ああ、お帰りなさい、アーエル様」
 扉を開けば迎えてくれるウシエルがいた。自然とボクはウシエルへと歩
み寄る。すがりつくようにウシエルに抱き着くボク。触れたウシエルのきゃ
しゃな体、けれどもウシエルはボクをしっかりと抱きとめてくれる。

「……アーエル様。ご夕食の用意ができていますよ」
「う、うう、えぐ」
「まずは食べましょう。その後、話は聞きますから」
「ありがとう、ウシエル」
 崩れゆく心。ボクはこの後どうなってしまうんだろう。いまだ実感の伴
わない破滅を抱えボクはウシエルの後に続いた。

       

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