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「あいたたた」
「おばあさん、大丈夫ですか。僕が荷物持ちますよ!!」




「どこ行ったのかしら」
「何か落としものですか? 一緒に探します!!」




「悪いねえ。道教えてもらうだけでよかったのに送ってもらっちゃって」
「困っているときはお互い様。僕だって皆から支えられてますからね」




「本当に申し訳ありません。ありがとうございました」
「子供さん向こうで遊んでましたよ。これからは気を付けてくださいね」




「お兄ちゃん、ありがとう」
「一人で偉いね。お使いかな?」











「能力使えよ!!!!」
「ごめん。人助けに夢中で忘れてた」
 かれこれエイダに能力を与えてから3時間が経過した。
 その間、能力使用したのは家の中での使用3回のみ。ボクはその間、エ
イダの行う人助けを見せつけられ辟易していた。


「せめて移動ぐらいはなあ」
「それだとアーエルがついてこれないじゃないか」
「まず行きたい位置を決め能力発動、次にボクと位置交換。最後にもう一
度目的地付近の対象物と位置交換すれば二人で移動できるだろ」
「ええ。めんどくさい」
「……あのなあ」
 もう飽きてきたのだろうか。最初に与えた能力、力鼓舞のときははしゃ
いでぶっ倒れるまで能力行使し続けたというのに。ボクは内心ため息を吐
きエイダの方を見る。


「でも、さっきから能力も使わず人助けばかり。エイダ。君はいつもこん
な生活をしているのかい?」
「いつもと言うわけじゃないよ。目の前に困っている人がいなければ人助
けは成り立たないからね」
「……」
 わかっていた答えとはいえさすがに閉口してしまう。
 エイダの中では人の役に立つことが最優先事項なのだろう……なら、ボ
クの頼みも聞いてくれよ。
 ボクは心の中で毒づく。



「エイダ。君はどうしてそこまで人の役に立ちたがる?」
 出会った時から聞きたかった質問。ボクはこの際だと口にしてみる。

「前も言ったかもしれないけど人の役に立ちたい気持ちに理由なんてない
んだよ。困った人がいたら助ける。人として当然のことさ」
「それはそうかもしれないが、何かきっかけはなかったのか? その考えに
至るきっかけが」




 人の善意には必ず悪意が潜んでいる。

 愛には淫蕩が。

 慈愛には傲慢が。

 正義には憤怒が。
 
 忠義には盲信が。

 平和には怠惰が。

 忍耐には怯懦が。

 勇気には野蛮が。

 憧憬には嫉妬が。

 
 人の善行は自身の欲求不満を昇華させただけに過ぎない。現にエイダも
人助けから達成感を得ている。

 ならば必ず、欲求の解消手段として善行に行きついた経緯がどこかにあ
るはずなのだ。ボクはエイダにその答えを求めていた。
 この質問はエイダからの心象を悪化させる危険をはらんでいるが、それ
でも。達成感無きボクゆえなのか。ボクの口はエイダへの質問を紡いでい
た。


「……しょうがないな。分かった、話すよ。ボクの中で人助けが特別で無
くなった理由」
 エイダの目が憂いを帯び、その口から彼の思い出が語られだした。