Neetel Inside ニートノベル
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「ただいま。」
 家の中に向けて小声で言うが当然中からは返事はない。
 靴を脱いで玄関を上がるとそのままテレビのある居間へ。
 鞄をおろしテレビのリモコンへと手を伸ばした僕は腰を下ろしながらテレビの電源を入れる。

『ご覧ください。この人の数。明日にクリスマスを控えた今日、ここ○×広場は
多くのカップルたちでにぎわっています。夜には大量のイルミネーションが輝く……』
 そういえば今日は12月24日。多くの人たちにとって重要な意味を持つこの日。
そんな日でも僕はいつも通り一人きり。今日は母さんも夜勤のため明日の朝までは帰らない。
何とも言えないくすぶった感情。僕は渦巻くそれらを内に抱えながらカーペットの上へと寝転ぶ。
見上げれば木目の天井。小さいころはその木目にいろいろな動物や人の顔などを見出したものだが今はそんな気力もなくただただ天井の一点を意味もなく見続ける。

『犠牲者が相次ぐ絞殺魔ハングドマン。彼はカップルばかりを標的としています。
この聖夜、浮かれる気持ちもわかりますが外出の際は十分注意してくださいね……』

 つけっぱなしのテレビから聞こえてきたのは昨今世間をにぎわす絞殺魔、『ハングドマン』の名であった。
 ニュースをあまり見ないため詳しいことは知らないが犯行は夜にしか行われていないと聞いていたから
いままであまり気にしてこなかったけど。ふと、母さんのことが思い浮かぶ。
けれども心配してみたところで僕に何かできるわけではなくハングドマンが
狙うのはカップルだけだと思い直しテレビの電源を消す。

 心配しているよりも家の片づけでもやってあげた方が喜ぶよね。
 そう思い直し僕は腕まくりをするのだ。

       

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