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「はは、ははははは」
 一人、自分の部屋に戻り笑うボク。我ながら気持ち悪いと思う。この姿を
普段のボクを知るクラスメートたちに見せたらどう思うだろうな。けれど
も今日だけはこみあげてくる喜びを抑えることなんてできない。不断の努
力、苦痛でしかなかった生活が報われる日がついに来たのだ。
 周囲からの評価、培ってきた実績、さらにはボクと席を争うべき候補者が
神となる資質に欠ける弟たちであるということ。もはや憂いはない。これ
で欠けたボクは完全になれる……ようやくボクの心は満たされるのだ。

 ボクは部屋の隅に置かれたベッドへと横たわる。明日は生誕祭の準備の
ため早く家を出なければならない。早く寝るに越したことはないのだが、
どうにも今日は眠れそうにない。

 いつも心には焦燥感があった。小さいころはそれの正体が一体なんなの
か分からずにいた。次代の神となるべく作られたボク達兄弟。ほかの天使
達と比べれば明らかに恵まれた環境で育ってきた。何か不自由があればウ
シエルが世話してくれる。何かをやろうと思えば最高の設備が用意しても
らえる。長男ゆえ神様候補として最も有力視され、周りからの期待はボク
の行く末を矯正する。

 努力しなかった日なんてない。そして結果も残してきた、だけど。
 やってもやってもやってもやっても!! ボクの心は満たされない、感じ
ない、動かない。
 そしてようやく実感した、ボクが欠陥品だということを。

 自分に欠けた感情、それはボクの致命的な弱点となりうる。埋める方法は
一つ、神になり自分を完成された存在とするしかないのだ。
 
 そして明日。神の生誕1000年を祝すこの日こそ、神の座の継承が行われ
る日でもある。神の能力全てが選ばれた天使に継承されそのものがまた新
たな神となる。神の能力、すなわち『全能』。それを生命に行使することは
基本できないが、その対象が自分自身であれば例外だ。『全能』さえ手に
入ればボクの心ひとつなんとでもなる。もちろん神の業務もきちんとこな
すつもりであるがそんなものは二の次。今のボクにはボクの渇望するもの、
欠けた感情しか目に映らない。


 ボクは高鳴る鼓動を何とか抑え布団をかぶる。まるで遠足前の子供みた
いだ。自分で自分に苦笑し、ふと幼少時代の自分を思い返す。自分の欠陥を
自覚したあの日、ボクはここまで努力し続けることができた自分を思い描
けたのだろうか。当然無理だろう。『達成感』無きボクがそれでも努力し
続ける辛さをその時からボクは知っていたのだから。

 興奮ゆえ、いらぬことまで考えてしまう自分にあきれながらボクは静かに
目を閉じるのであった。