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「あっ、アーエル君。おはよう!!」
「ああ、おはようハミエルさん」
「えっ、名前、憶えて……きゃああああ、アーエル君に名前覚えてもらっ
たああ」
 一人で盛り上がり走り去っていくハミエル。どうやら友達が廊下の陰に
控えていたようだ。一応プレゼントももらった相手(中身は見ていないが)。
普通名前ぐらいは覚えるだろう。何をそんなにうれしいんだか少し理解で
きないな。
 学校に着きだいぶ落ち着いた感情。けれどもまだ走った余韻か体が熱い。
勢いとはいえ走ったのは失敗だったか、今から神の像の設置などの力仕事
があるというのに。ボクは集合場所である倉庫前へと向かう。


 倉庫前にはすでに幾人かの生徒。そして担任のカシエルの姿があった。
カシエルはボクの姿を認めると声をかける。

「来たかアーエル。今日は頼むぞ」
「おはようございますカシエル先生。もう始めてたんですね。すみません」
「いや、教員の集合時刻は生徒の半刻前だ。何もない状態ではお前たち生
徒も始めづらいだろ。だから私が先に初めていたんだ。よって気に病むこ
とはない」
 相変わらずの堅苦しい返答。この人も難しい性格だ。ボクは先生の今運ん
でいる箱の片端を持ち手伝おうとする。

「ああ、すまんな」
「いえ、早く終わらせてしまいましょう」
 式典は正午から。今から始めればだいぶ早く終わるだろう。

「そうか、アーエルは神様のところに呼ばれているのだったな。よし、では
なるべく早く終われるように」
「いえ、お気遣いはありがたいですが神様から呼ばれているのは夕刻です。
式典の始まる時間ぎりぎりまで準備がかかっても十分間に合いますから」
「そうか、わかった。では最後まで手伝い頼むぞ」
「もちろんですよ」

 先生にはそういうが、実際は完全に個人的な理由での了承であった。そ
う。いまは何かをしていたいのだ。あの声が聞こえないように。思考しな
いように。


 準備を進めていると続々とほかの生徒たちも集まってくる。先生は彼ら
にも指示をだし準備は着々と進んでいく。皆での共同作業、神となればこ
ういった作業もできなくなるかもしれない。そう考えると感慨深いものだ
が、ここで涙を流すのはボクのキャラではないだろう。黙々と作業を進め
るうちにとうとう会場の用意が整う。


「みんなお疲れ様」
 先生の前に整列するボクら生徒。この後式典が始まるまでは自由時間で
ある。大概の生徒は学校外で行われる祭りを堪能しに行くのだがボクは少
し時間が早いものの継承式の行われる神の社へと向かうことにする。

 結果はわかりきっている。でも、見てみるまでは落ち着かない。自分では
何もできない待つしかないもどかしい時間。何かやることがある方がいいの
だが今のボクには何かを楽しむゆとりなどない。居並ぶ出店などを見なが
ら精いっぱい時間をつぶしつつボクは神の社への道をゆく。