Neetel Inside ニートノベル
表紙

『ぼく王子、国捨てた』
決戦!モドル奪還作戦

見開き   最大化      




「おお・・・・すっげーことになってる」
「ですね、王子」

 俺たちはエルフの軍勢を引き連れて、モドル王国へ戻ってきていた。
 大平原に、ずら~っと軍が並んでる。対するむかいには、ミグナ帝国の軍勢の姿がある。
「戦争か・・・やだなー」
「しかたないよ王子。これもたいせつなことだから」
「そっかー」
 でも気分はすぐれない。
 みんな無事だといいな。
「じゃあリュキ、ノリム。お前らには一個師団をやる。頑張って生き残ってくれ」
「あいさー!」
「・・・了解」
 二人もまた軍服姿になっており、陣へと戻っていった。
 はあ・・・
 エルフの女王から借りたこの軍勢で、かつての友をうつのか・・・
「しかたない、なるべく、犠牲は少なくなー。じゃ、全軍突撃~」
 俺は錫杖を振るった。
 ずっずっず、と軍が進んでいく。右翼とか左翼とかそういうのが伸びていく。
 俺はあっちこっちのエルフにああしてこうしてって指示を出しながら、ときどきお茶を飲んだりして戦争を進めた。
 電撃剣だから死にはしないけど、痛いからな~
 痛かったり苦しかったりするのはよくないよ。
 俺は傷つき倒れ気絶していくエルフと、そして敵国の兵士たちを見ながら憂鬱だった。
「閣下、ご命令を」
「はいはい、わかってますよーっと」
 地図に置かれた駒を右に左に動かしていく。
「キュルクム将軍はもっと突撃して。メイハーム将軍はもう帰って来ていいや」
「・・いいのですか、そんな適当で」
「いいんだよ。あとリュキは突撃。で、頃合いを見計らって戻させて」
「わかりました」
「ふう」
 順調に戦況は俺になびいている。
 運がいいんだな。雨が降ったばかりでぬかるんでて、防衛戦には向かない状況だし。突撃してる俺たちのほうが有利なのは必然ってやつだ。
 これでいい。
 あっという間に終わらせてやりたい。
 こんな苦しいことは、こんな悲しいことは・・・・
 それから三時間が経った頃、リュキがモドル城の入り口を落とした報告が届いた。
 やれやれ。やっぱり強いな。エキドナも持たせてあるし。
「陛下、ノリムが城門を爆砕したそうです。突撃し、敵将クルシュラ王子を討ちましょう!」
「ああ、いいや。それナシ」
「は?」
「俺が行くわ」
 よっこいせ、と立ち上がった俺に戸惑うエルフ。
「王子みずからが出撃なさるなど・・・どんな意味が?」
「あいつは俺の友達だから」
 俺は剣を握って、懐かしいモドル城の軍門をくぐった。



「あ、王子~お城のなかはだいたい制圧したよ! あとは大広間だけだね」
「そうか、よく頑張ったなリュキ」
「えへへ~」
「まったく。ノリムもおまえも、おれの自慢の部下だよ」
「身に余る光栄」
「はははは」
 俺は城の奥へと進んだ。
 そして、大広間へと続く階段の前で・・・
「うわあああああああああああああああああああああ」
 転がされていくエルフ兵。
「どうしたんだ!」
「敵が、ものすごく強い敵が」
「だれだそれは・・・・って、バリュウ!?」
 そこにいたのはかつての仲間、バリュウだった。
 顔色が悪い・・・・
「操られてる。のか」
「邪教の力だよ、王子!」
 リュキがエキドナを構える。
「ここはあたしに任せて! ・・・・剣士として、彼をこのままにはしておけない!」
「そうか・・わかった! 任せる! 頼んだぞ、リュキ! バリュウをたすけてやってくれ!」
「あいさー!」
 俺たちは睨み合う二人を残して、階上へ進んだ。
 するとそこにいたのは・・・・


「モアン!」


 白銀の美少女騎士が、剣の柄に手を添えて、オレたちを待ち構えていた。
「生きてたのか、よかった・・・」
「ちかづかないでください、王子」
「な、なにを」
 剣を抜いたモアンは、もうかつてのモアンじゃなかった・・・
「王子・・・お久しぶりです。ずいぶんと、長い旅をしてきたみたいですね・・・」
「ああ・・・お前がいなくてたいへんだったよ、モアン! さあ、なにやってんだ!? そんな剣は捨てて、俺たちのところへこい!」
「だめです。王子・・・
 あの日、クルシュラに王城を渡したのは私なんです」
「なん・・だって!?」
「私は邪教に身を染めました。そしてその忠誠はいつの頃からか、クルシュラ王子に・・・・だから、わざと敗北し、この城を彼に譲ったのです」
「モアン・・・」
「私は嘘つきです、王子。主義も主張も私にはありません。
 だから・・・・・・・・・・
 せめて、新しい国の夢を見させてください」
「俺だって新しい国を作るよ!!!!!」
「だめ。だめだめ」
 モアンは首を振る。
「王子の国はやさしい世界。私のようなケガレたものは、そばにはいられない・・・・・・・」
「そんなことねえよ! モア・・・」
「王子」
 ノリムが俺の前にずずいっと進み出た。
「これ以上の、話し合いは、不要。
 団長は、・・・・・・・・・・・・私が倒す」
「ノリムね。あなたには期待していました・・・そしてその期待をあなたは超えてしまった。まさか王子を連れて戻ってくるなんて・・・・
 あなたはもっとはやく、わたしが殺しておくべきでした」
「・・・・・・・・団長ぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
 激突する二人、俺はしりもちをついた。
「王子、はやく! 先へ! クルシュラのもとへ!」
「お、おお!」
 俺はモアンの悲しそうな横顔に後ろ髪を引かれながら、階段をかけのぼった。
 そして、俺はついに、
 大広間の扉を蹴破ったのだった。
 そして、

       

表紙

餡殺餅たける 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha