Neetel Inside 文芸新都
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チーム・エレクテオ
第1話「指名の日」

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第1話「指名の日」

静寂のインターネットカフェに足音が響く。不審な2人組の男は鬼気迫る様相で、狭い本棚の隙間を縫って追ってくる。ひとりは屈強そうな大男。もうひとりはガリガリに痩せ細った神経質そうな男。その動きを遠めに見ながら、フロアの隅にあるスポーツ雑誌などが設置してある低めの本棚に、追われる3名の若者たちが身を潜めていた。
3人ともスーツ姿の会社員である。そのうちの唯一の女性、ショートボブの髪で小柄な女性が後輩らしき2人の男性に小声で促す。
「ねえ、もうやだよ。早く帰ろうよぅ」
2人の男性は自分たちを探しているであろう2人組の足音がまだ遠くを動いていることを確認した上で、比較的落ち着いた雰囲気の短髪の男性が答える。
「そりゃあ、今すぐここから出たいですが…なんせネカフェですから出口も限られます」
それに応じるように、もうひとりのほうの若干茶髪で少し背の高い男はつぶやく。
「あいつら、逃げられないように入り口付近にはすぐ戻れる位置をキープしてやがんのなぁ」
「信じらんない!こんなことならネットカフェなんて来るんじゃなかったわ」
身を潜めながら女性は頭を抱えた。素早く茶髪の男が口を尖らせる。
「や、そもそも来たいって言ってたのはミキさんじゃないっすか」
そんな2人を短髪男性は制止した。
「そういうのあとにしましょう!タクローもミキさんも。あいつらが左側のコーナーに行った時、逆側から回って出口に向かいますよ」
それぞれ短髪男性は田宮コウタ、女性は篠宮ミキ、茶髪は鹿野タクローという名前だ。

       

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