Neetel Inside 文芸新都
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 臆してはいけない。タクローが前に歩み出て、声を張る。
「俺にだって超人的なパワーが分けられているんだ!やるならやってやるぜ!」
女の子は一瞬目を鋭くし、「ふうん」と言いしばらくタクローを見た。かと思うと「そうねぇ」と言い別方向に歩き出しながら
「いつかまた会うでしょう。その時勝負しましょう。じゃあ」
と残し、その場を去っていくのであった。
 呆然とする残された二人。コウタは呟く。
「なんだ?今日戦うつもりはなかったのか?」
タクローも後ろ姿が見えなくなったのを確認すると、ふぅと息をつき
「まさか中学生くらいの子がそうだったとはな。さっきおっさんが言っていた『トイレまでは来ない』って、そういう意味だったんだな」
と言った。
 二人は西日が差すホームで戻る方面の電車を待っていた。『間もなく3番線に東京・品川方面行きが参ります』と、構内にアナウンスが流れる。
「あの子は『いつか』なんて言ってたけど実際そうそう出くわすもんでもないよな」
「戦う以外の目的がなにかあったんだろうか?」
と、憶測も含めてそれぞれ考えていた。ふと、タクローはなにかの気配を感じ後ろを振り返った。コウタも考え事をしていたため、それに気付くのはほぼ同時だった。その時には既に先程の女の子がタクローに駆け寄り、振り返った彼の胸を、駅のホームの線路側に向けて両手で強く押し出していた。電車はちょうどホームに入る瞬間である。女の子の表情は先程と打って変わり、そこに読み取れる感情は焦りと恐怖、そして…罪悪感?コウタはその一瞬、そんな感情を見た気がした。

       

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