Neetel Inside 文芸新都
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「ふーん、そんなことがあったのね」
行きつけの店でタクローとコウタはミキに今日の出来事を報告していた。
「リンちゃんにとっては辛い能力だったわけです」
「特に中学生くらいの女の子は人との距離も悩むからね」
「おお、遠い目」
お酒が入ったミキとしては珍しく冷静な答えをする。まだ浅いということか。
「で?そのリンちゃんはメンバーになれたの?」
コウタは少し体を上下に揺らせながら
「はい、僕の動きも更に機敏になりましたので」
と答える。あのあと駅ホームでのやり取りを一般の人から通報され、突き落とそうとしていたリンが駅員から呼び止められそうになった。しかしちょうど検証しようと言ってコウタが反復横飛びなどを始めたため、駅員もこの三人全員が少しアレな人達と判断され、ホームで遊ぶのはやめなさいと注意されるだけで済んだ。
 なんだかミキは少しだけ不服そうにワイングラスを一気に空けた。
「さぞ若くてイイ子なんでしょうね!今呼びなさいよ」
やはり少し酔っているようであった。タクローが間髪入れず
「いやいや未成年ですから!」
と突っ込み、思い出したように
「でも俺やミキさんにも力が加わってるとは今日初めて知りましたよ」
とコメントする。それを受けてミキが言う。
「わたしはそんな気がしてたけどね」
「えっ?まじすか?俺は全然気付かな…」
「最近課の中の仕事、特にうちのチームの仕事が早いし、それにだいたい、日常の自分のちょっとした変化に気付くわよ」
そして少しため息をつきながら続けた。
「あなたが普段どれだけお気楽に過ごしているかが分かるわね…」
タクローはいじけながらばつが悪そうにテーブルのレーズンをちびりちびり食べ出した。コウタは苦笑いしながら、これはフォローできないなぁ、と思うのだった。

       

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