Neetel Inside 文芸新都
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現代MTGについて少し話そうと思う
Deck No.2「4Cラリーとか」

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 やあ、ひさしぶりだね。うん、ほんとうにひさしぶりだ。みんな元気にしていたかな? ぼく? そうだね、《陰謀団式療法(JU)》をうける必要がないくらいは元気さ。春はファイレクシア病の季節だから鬱になるね、まったく。このいまいましい国民病にはヨーグルトがいいらしいのできみたちもぜひためしてみてくれ。ぼくもモロッコヨーグルを毎日20つ食べてるよ。
 ん? ……さすがだね。なにげない口上ではじめてみたのにぼくがいまとても焦っていることに気づくとは。もうぼくときみたちはかけがえのない友人同士といえるね。こまったときはなんでもいってくれよ。お金と《ヴリンの神童、ジェイス(ORI)》を貸す以外ならなんでも力になろう。
 ま、そんなことは置いとくとしてぼくはほんとうに焦っているんだ。なぜなら前回「ジェスカイ・ウィンズ」について書いてからいくらもたっていないのにもうあと数日でタルキール覇王譚と運命再編がスタンダードから退場してしまうからだ。まだまだ紹介したいデッキが山ほどあるっていうのにこの仕打ちはいくらなんでも理不尽ってもんだ。でも季節がめぐることをとめられないようにエキスパンションのローテーションにもまた逆らえない。だからぼくは潔くあきらめて埃のたまったキーボードをたたくことにした。タイトルはこうだ――「ズルゴ、カンやめて鐘突くってよ」



「ダーク・ジェスカイ」
 どうだい、イカした名前だろ? 前回紹介した「ジェスカイ・ウィンズ」の進化版だ。その名のとおり黒を足して現スタン最強の除去である《はじける破滅(KTK)》や《時を越えた探索(KTK)》のかわりに《苦い真理(BFZ)》を搭載した非常にスタイリッシュなデッキに仕上がっている。日本屈指の強豪プレイヤーである中野梓女史も愛用するほどの完成っぷりだ。さらにがタイトなマナベースや複雑なプレイングをサポートしてくれるルーター機能つき一万円札こと《ヴリンの神童、ジェイス(ORI)》はくやしいけどぼくよりイケメンだと認めざるをえない。ぼくにできることといえば骨をひろって墓場にほうりすてるくらいだからね。



「アブザン・アグロ」
 通称「タルキール覇王譚の恵み」。アグロにとどまらずコントロールやミッドレンジとバリエーションもさまざまでタルキール覇王譚環境でもっとも隆盛したパワフルなデッキだったな。はいってるカードぜんぶ強いけど現環境最強のカードであり史上最強のクリーチャーでもある《包囲サイ(KTK)》の畜生っぷりはもう筆舌に尽くしがたいね。そちらの世界ではシロサイが絶滅寸前らしいけどこちらでは“ローストサイ”がよく食卓にならんでいるよ。味はまずまずだ。こんどよければごちそうしよう。もうすぐ店頭から消えてしまうだろうからさ。



「エスパー・ドラゴン」
 タルキール龍紀伝で登場した強力無比な龍王たちをフィニッシャーにすえた正統派コントロールデッキ。正統派コントロールといってもカウンター中心だったむかしに対していまは除去で盤面をコントロールするイメージ。現代版ドロマーコントロールってところかな。まぁ《追放するものドロマー(IN)》と《龍王オジュタイ(DTK)》じゃくらべものにならないけどね。え? だってドロマーのマナ・シンボルをよくみてくれよ。ほら、“黒”がふくまれてるだろ? 《恐怖(5th)》も《闇への追放(TE)》も《無謀な悪意(TE)》もきかない時点でまず除去されないってことさ。え? じゅきん? 《転換(US)》くらいだれだって持ってるだろう?



「マルドゥ・グリーン」
 山ほど詰めこんだよりどりみどりのピン除去でクリーチャーを狩り尽くす「マルドゥ・コントロール」に《包囲サイ(KTK)》をアクセントとしてほうりこんだVer. 青がはいっていないのでカウンターは使えないけどかわりに火力があるから全体的に動きがスリムなのがいいね。ボード・コントロールが得意でちょっと前の黒単信心といい現代MTGではわりと主流のタイプだとおもうけどぼくはあまり好きなタイプじゃないな。こう、なんというかスパイシーさに欠けるというかね。だからもっぱら使われる側だったけど戦績はあまりよくなかった。それにしたってぼくのまわりにはこの手のデッキが多かった気がするよ、ほんと(泣)



「アタルカ・レッド」
 赤単アグロの進化系。《強大化(KTK)》&《ティムールの激闘(FRF)》の一撃必殺をきめるためだけに生まれてきた殺人モンスターだ。「ヘイトレッド」といいこういうデッキはいつの時代もゾクゾクするね! ぼくも《忌呪の金切り声(DTK)》をいれたさらなる進化版「ダーク・アタルカ」で除去の吹きすさぶ“死の金曜日”にいどんだけど普通に事故って負けたよ┐(´д`)┌ よくばるのはよくないね。でも《強大化(KTK)》や《ティムールの激闘(FRF)》や《僧院の速槍(KTK)》が去っても第二第三の“赤く速く強い”デッキがまたでてきてくれると信じている。いまのスタンダードに足りないもの……それはぁ! 瞬殺即死須臾一瞬刹那積極さ果敢さ無鉄砲さ……そしてなによりも速さが足りないぃ!



「4Cラリー」
 あたまが《大クラゲ(VI)》こと《反射魔道士(OGW)》の登場によって一気に環境末期のトップメタにのぼりつめたシナジー満載の凝ったデッキ。《先祖の結集(FRF)》で墓地をひっくりかえして勝負をきめるコンボデッキな要素もあれば《反射魔道士(OGW)》を連打してテンポをかせぎつつ1/1や2/3とお世辞にもストロングとはいえない貧相なクリーチャーたちで強引に押しきるビートダウン作戦や《ヴリンの神童、ジェイス(ORI)》と《集合した中隊(DTK)》で莫大なアドバンテージをとる“みんなあつまれ”戦術ありと多様性に富んでいるのがグッドだね。とにかく《集合した中隊(DTK)》がつよくてこのデッキのキーカードといっていい。こいつから《反射魔道士(OGW)》が2体でてこようものなら相手は肩をすくめて盤面をたたんじまうって寸法さ。逆にデッキ名にもなっている《先祖の結集(FRF)》は初手に2枚もきてしまうと高確率でそれらをにぎりしめたまま先祖のもとへいくはめになるからできれば《地下墓地の選別者(BFZ)》からみつけたいところだ。“さがしものはなんですか……みつけにくいものですか……デッキの中も墓地の中もさがしたけれどみつからないのに……”
 その柔軟性のおかげでどんな相手にもまんべんなくたたかえるのがこのデッキのつよみなんだけど、そのぶんプレイングもエラく複雑でね。かくいうぼくもどうしても勝ちたい大会があってこのデッキをえらんだんだけど、使いなれてないせいもあって結果はさんざんだったよ。とくに1戦目であたった対戦相手がこのあたりではトップクラスにつよいプレイヤーで彼に勝つことがぼくのマジックにおけるひとつの目標でもあったんだ。彼もまた「4Cラリー」を使っていてぼくとおなじく使いこんではいなかった。条件はおなじだったんだ。でもまさかしょっぱなからミラーマッチなんて考えてもいなかったぼくは動揺してしまっておもうようにプレイできなかった。もちろん彼のプレイングは冷静で的確ですこしも隙がなかった。けっきょく使いなれているいない以前に心で負けていたんだね。ぼくはふだんは勝ち負けにそこまでこだわることのないカジュアル志向だとおもっていたけど、あんなにくやしい敗北はひさびさだったよ。すくなくとも4年前にMTGに復帰してからは感じたことはなかった。それくらいぼくはあの勝負に勝ちたかった。あそこで勝たなければこのデッキを手にとった意味なんてなかったんだからね。



 さて。ちょっと私情も持ちこんでしまったけど、だいたい話したいことは話せたかな。タルキール覇王譚はアブザン、マルドゥ、ジェスカイと3つの氏族をテーマにした内容で単色デッキが3度のディスカード・フェイズとおなじくらい大好きなぼくにとっては過酷な環境だったけどおわってみればあっという間だったね。最後の最後で多色デッキならではのむずかしさとおもしろさも味わえたし、フェッチランドもふたたび手もとにもどってきた。《僧院の速槍(KTK)》の損失を埋めるのは不可能だろうけどあんなにバカでかい月だって欠けるんだ。すこしかなしいだけさ。
 さあ、そろそろお別れのときだ。この地に思い残したことはないかい? フェッチランドはぜんぶそろえたかな? 《先頭に立つもの、アナフェンザ(KTK)》の置換効果はちゃんと処理したかな? 《血染めのぬかるみ(KTK)》と《燻る湿地(BFZ)》をまちがっていないかな? 《宝船の巡航(KTK)》のFoilはもう捌いたかな? 《精霊龍ウギン(FRF)》は忘れずに+2したかな? 掲げた戦旗は回収したかな?
 よろしい。ではつぎはイニストラードだ。《有象無象の大砲(UD)》に銀の弾丸はこめたな! マッドネスのルールは復習したな! “昂揚”の読みかたはおぼえたな! 《マラキールの解放者、ドラーナ(BFZ)》は4枚買ったな! 丸太は持ったな! 
 いくぞゾンビ諸君! アヴァシン狩りだ!

       

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