Neetel Inside 文芸新都
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鬼面
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永くから鬼はそこにいた。
神社の社殿の屋根裏。
外から少しばかりの光が差し込んでくる。
薄暗い。
ここに暮らすのは、あとは虫の死骸と、吹き込んだ落ち葉と、そこに居ついた白蛇のみだ。
白蛇はいつも蜷局を巻いて寝ている。
寂しさが鬼の心を無にした。

今日は外が珍しく賑やかだ。
屋根の隙間からちょいっと顔を出すと、近所の幼子どもが、木の陰からこちらを眺めている。
その様子がいじらしいので、鬼は幼子どもを観察した。

「あれが呪いの面か。恐ろしく怖いのう。」
「お前のいっていた鬼伝説は本当かえ。ただの面じゃねえか。」
「ほうら、こっちをにらんでおるぞう」
きゃー、といって子供たちは逃げて行った。

もう風の吹き込む音しかしない。
人が来たのは数十年ぶりだろうか。

鬼の寿命はどのくらいなのだろう。
この社といっしょに朽ち果てゆくことだけが分かる。
白蛇がこちらを見てふう、と息を吐いた。

       

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