Neetel Inside ニートノベル
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 「おっさんたち大丈夫かなぁ」
 交易所の雑貨店で何の気なしにケーゴはそう呟いた。
 エルフの少女たちに大人気と言うアクセサリーを取り扱うこの店でベルウッドもアンネリエも目を輝かせて物色をしている。
 女の子の趣味ってよくわかんねえよなぁなどと思いつつケーゴはアクセサリーを気のない目で見つめていた。
 その時、ふとそういえばおねーさんは全然そういうアクセサリーに興味とかなさそうだよなぁと思ったのだ。
 そしてあの言葉に至る。
 反応したのはベルウッドだ。
 「ん?あの人たちなら大丈夫だって言ったのはあんたじゃないの」
 「…まぁ、そうなんだけどさ」
 それでもやっぱり心配なのだ。
 そんなケーゴをよそにベルウッドは模造品の宝石のアクセサリーを手に取ってうっとりと言った。
 「はぁ…あの塔に本当に金銀財宝があったら、山分けくらいにしてくれるわよね」
 夢見心地なセリフ。彼女の脳内では宝箱から金細工や宝石があふれ出している。
 どうやらあの時化け物から逃げ出したことを後悔しているらしい。
 とはいってもあの状況で無事に塔まで辿り着けた保障はないし、辿り着いたロビン一行が酷い目に遭っているのも彼らが知る由はないのだが。
 「どうだろうなぁ…あのおっさん結構そういうところきっちりしてるからなぁ…。情報料くらいはもらえるだろうけど」
 宝剣を取り戻す際にうまいこと不利な契約を飲まされたケーゴである。
 ぽりぽりと頭をかく彼に対してベルウッドは不満をぶつける。
 「やっぱりあの塔にあの時行くべきだったのよ」
 「いや、無理だろ。俺はできないことを無理やりやるつもりはない」
 きっぱりそう言うと嫌味らしいため息が返ってきた。
 「まったく、頼りにならない男ねぇ。あたしもあの人たちのパーティに鞍替えしようかしら」
 「はぁ?お前が勝手に入って来てなんだよその口ぶりは。さっさと靴磨きに戻れよもう」
 人払いをするように手をひらひらさせるケーゴ。対して彼女は目を細めた。
 「ほぉーう。本当にあたしがいなくなってもいいのかしら」
 挑発的な口ぶりだ。
 ケーゴはむすっと返す。
 「何だよ」
 喧嘩腰の彼にベルウッドは視線を別方向に向けるよう促す。
 その先には。
 「あ」
 アンネリエ。
 髪飾りを試しているところだ。
 花の形をした髪飾り。よく似合っている。
 間抜けな声を出したまま難しい顔になったケーゴをベルウッドはにやにや眺めている。
 詰まる話、ベルウッドが抜けたらアンネリエと2人きりなのだ。
 それはまずいのではないだろうか。色々。
 いやまずいなんてことはないよ?俺はトレジャーハンターとして各地を巡るだけだし、アンネリエだって別の目的があって俺に同行しているわけだから、ほら、たまたま一緒にいるだけで。別にお互いそういう意識とか全然してないし!そう、全然してないし!おっさんとおねーさんだってずっと一緒にいるじゃないか、あんな感じで…って、俺はアンネリエとずっと一緒にいるつもりなのか?それはまずいのではないだろうか。色々。ほら、お互いいい年の男と女の子なわけだし…あぁでも別にお互いそういう目的で一緒にいる訳でもないし…というかそういう目的で一緒にいるなら2人きりでも何も問題ないのか…なら何でそういう気持ちがないとまずいんだ?というかさっきから俺は何を考えているんだ?
 ピクシーの存在などすっかり忘れて固まったケーゴの様子にアンネリエは首をかしげた。
 『変?』
 そう書いてみせる。いつも通り無表情、と見せかけておいて若干しょんぼりしているのがケーゴには分かる。
 「いっ、いやいやいや!違う!違うよ!似合ってる!」
 慌てて両手を振るケーゴ。
 ばたばた動いたせいで商品の棚をひっくり返してしまい、いよいよ落ち着きなく謝りながら、転ぶ。
 我関せずとばかりにそそくさとアンネリエは店を出る。
 「お子ちゃまねぇ…」
 それに続きながらベルウッドは大仰に肩をすくめた。


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