皇居グデーリアン城にもローパーは大量発生していた。
 普段は澄ました顔をした貴族の令嬢、女官達も穴という穴を犯され身悶えしている。愛しの女性達を救おうと、男達が武器を手にローパーに立ち向かうが、ぶよぶよした表面は容易には貫くことができない。思いのほか弾力と耐久性が高い魔物なのだ。
「ワッハハハッ、とんでもない事になっているな」
「……知ったことか」
 大爆笑するダンディ、仏頂面のゲオルク。
 二人は皇居の回廊を堂々と走り抜けていた。
 衛兵が彼らを見咎めるが、ローパーによる混乱でそれどころではなかった。
 余談だが、この事件は黒歴史となり、表向き語られることはなかった。当時、帝都にいた甲皇国人女性のほぼ全てがローパーなどという下賎な魔物によって非処女にされてしまったのだ。なるべく隠しておきたい国家的恥辱に他ならない。(庶民の間では誰もが忘れられず、長年語り継がれるが)この事件の後に生誕した子供達は、「やーい、お前のとーちゃんローパーだろ~」というのがお決まりのイジメ文句になったというから笑えない。(ローパーに人間への生殖能力は無いと言われているが、人間のような形をしたローパーの亜種もいるというので、定かではない)
 ただ悪いことばかりではなく、この時発生したローパーはひとしきり帝都の女性達を犯し尽くした後、郊外の地中へと逃れ野生化していった。荒れ果てた甲皇国の大地だろうが、構わずローパーは繁殖していく。(どうやって繁殖しているのかはまだ解明されていない)
 そして慢性的に食料不足の甲皇国で、野生化したローパーを狩って食べるという手段ができて、食料自給率が僅かに好転したのだ。ローパーの蒲焼は弾力がある蛸のような食感が好評で、しかも精力増強に良いということで、甲皇国名物料理となった。
 更に余談となるが、ローパーは甲皇国の風俗産業を飛躍的に発展させた。ローパーの粘液には催淫効果があるので媚薬として使えるし、普通の男女のまぐわいしか無かったところに、ローパーの粘液や触手が取り入れられたことによる高度で知的な性的遊戯がどんどん開発されていったのだ。他国に比べ、甲皇国人に様々な性的倒錯者が多いのはこれが理由である。性の都として帝都マンシュタインは世界中の変態どもに崇められることとなる。ローパー印のラブローションやオナホールの開発・輸出などなど。その経済効果は計り知れず、外貨獲得にも寄与した。
 もう少し余談となるが、ローパーを大量発生させた魔蝕王の指輪だが、このような大量召還はこの時一度きりのことであった。道端に転がっていた指輪を拾った甲皇国の研究者が調べたところによれば、指輪が召還できるローパーの数は「どれだけ召還していなかったか」の期間によるという。つまりこの時に大量召還できたのは、長年アルドバランで眠って使用されていなかったからだという。普段は1日1ローパー程度の召還しか難しいようだ。つまり例えるなら、男性のオナニーのようなものというか、ずっとオナ禁していて久々に射精したら大量に出ちゃったというアレである。
 それでも指輪は甲皇国の戦略兵器として利用され続け、戦時中ということもありアルフヘイムから捕らえた捕虜のエルフを拷問したり篭絡したり堕落させたりするのに使用された。
 ……などなど、様々な影響があった訳だが、そもそもは指輪を甲皇国にもたらしたゲオルクが諸悪の原因…と、言えるのかも…いや、そうに違いない。
「やっぱりよ、お前が持っていた指輪のせいじゃね?」
「…知らん! 俺は何もやっていない!」
 などと、犯人は意味不明の弁明をしていた。