Neetel Inside 文芸新都
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そうして落ち着いて気が済んで、俺は立ち上がりもう一度鐘を打った。先程死んでいった色んな魂に向けて。もう夕方だったから老婆が晩御飯を食べていくように勧めてくれたけど、俺はそれは断って、その代わりにもう一眠りさせてもらうことにした。ほんの数分だけ。起きても夢はみなかった。
布団から起きて俺は老婆の家を出ると、石段の付近で老婆が掃き掃除をしていた。俺は寄って老婆に声をかける。
「もう帰るよ」
「ほうか、泊まっていってもええんやで?」
「また今度頼むわ」
俺は笑いながらそう言って石段を降る。
「がんばりなせ」
石段の上で老婆が言う。
「あの、また観音様拝みにきていいですか」
老婆が優しく頷いたのを見て俺は石段を降りて帰路につく。目の前にはオレンジ色の俺の街とオレンジ色の夕焼けが広がってまぶしくて仕方ない。俺の悩みはまだまだあるし今現在もお袋を許せないでいる。でもこれからも一緒に住むのはお袋であるし、お袋が俺のお袋だということどう頑張ったって覆しようのない事実だ。俺が俺である限り、お袋はお袋なのだ。だからというわけでもないけど、お袋への接し方も他にもあるのではないだろうか。もちろんまだ見ぬ問題や苦難はあるのだろうけど、もっとマシな展開になる接し方。きっと今こう考えているのも一時のことだろうけど構わない。進化しない人はいないし何より俺はまだ中学生なのだ。俺は考えすぎて疲れたのでもう悩むことはとりあえずしないことにした。それでも夕焼け空は当分は続くし見ていてもやっぱり良いもんじゃない。まぁでも、この夕焼けにももう少しだけ優しくすることができるのかもしれない。それを見ているのは俺なのだから。

       

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