Neetel Inside 文芸新都
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「タルク、充電器持ってないか? 端子の方は持ってるからバッテリー貸してくれ」
 「いや、もってない」
 「誰か、持ってないか? 」
 コールマンが周りを見回すが誰も持っていないようだった。
 「そうか、いや、そんなんで都会で生きていけるのか? 」
 「ブーメランだぞそれ」
 彼らははははと笑う。コールマンとタルクを含めた仲間七人が夜道を歩いていた。液晶画面の黒のような微妙な空の下、オレンジ色の街灯がシャワーのように光を落としている。歩道は広いが等間隔に植えられたナンキンハゼが隊形を崩す。
 「にしてもこんな時間に喫茶なんて行ったら補導されちまうよ。この前俺とタメの奴が補導されてたって聞いたし結構厳しいらしいぞ。あ、木があるからみんなもっと左いってくれ」
 「誰もてめーみたいな巨漢を高校生だと思わねえよ」
 「そうだ。それに帰りは俺が送ってやるからよ。車用意してんだ」
 「フォンさんの軽に俺が乗れるのか? 」
 「軽じゃねえよ。広くてびっくりすんじゃねえぞ」
 フォンは仲間の中では年齢が高く、一足先に得た社会の感触を教えてやったりしている。彼は最近給料で車を買ったという。
 「にしても歩くのは疲れるな。喫茶なんてそこらへんにあるじゃねえか。なんでこんなに歩いてる? 」
 「まあ、待てって」
 フォンらはそういってオレンジの光のある太い歩道から曲がり細い路地へ入っていった。
 「おい、おかしいだろ。さっき喫茶店あったぞ。隠れ家的な店でもあるのか? 」
 「まてまてもうすぐだ」
 「ほら」
 フォンの指す先にはミニバンがあった。駐車場の入り口近くの電灯についた街灯がはっきりと反射してまぶしい。
 「乗るのは帰りだろ? 」
 「新車だぞ? 帰りだけじゃ勿体ねえって思ったんだよ。充電もできる。便利だろ」
 「なんだよ。そう言ってよ」
 仲間が笑って、お前、焦りすぎと茶化す。
 「ん? 彼女とのお帰りデート邪魔されてイラついてんのか? 」
 「めんどくせえな。わかったよ。悪かった」

       

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