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「Bro.com!」 作者:キツヌコ

【第一印象】
 ミシュガルドや漫画でも活躍されているキツヌコ先生の小説作品。簡潔に言えば同級生の男女が再婚による影響で姉弟になるという話。実は似たような事案が周辺で起こっていたため他人事の気がしない。もしかして実話? ノンフィクションよりのフィクション? いやまさか。

【ストーリー】
 再婚によって絹子にできる新しい家族というのは、絹子にとって裏切り者である信太だった。そんな信太を中心とした人物と言葉を交わす日々のなか、ついこの間まで他人だった同級生との同居で一体何が起こるのか――? という話。人間関係を主に描いているヒューマンドラマのような雰囲気があります。宇宙人がやって来て侵略始めるとかはなさそう。
 なんだかんだ結局両想いっぽい絹子と信太。でも家族だからそういうことはダメ。姉弟として接していく……はずだったのだけど、最新話辺りから段々話が動き始めている気がする。信太は現彼女の風喜と別れられるのか? そして絹子と信太、二人の距離はどうなっていくのか? 気になるところである。大筋となるストーリーが特にあるわけでもなく、波乱万丈に満ちた日常を絹子と信太、それぞれの視点から進めていく物語。人によっては「結局何がしたいの?」と疑問に思うかもしれない。登場人物の目的がはっきりしないからだと思う。恋愛以外で何か目的があれば良かったけど、そういうものもなさそうなので、ゆるゆる過ぎていく時間を楽しむ小説。順序立てたストーリーを好む方は少し注意。ただ、今後の展開次第では楽しめるかも?

【キャラクター】
 どのキャラクターも活気がある。個性はどうだろう。詳しい描写がされているわけでもないので登場人物紹介の絵くらいしか情報がないように見受けられる。一部のキャラは言動で個性が立っているものの、信太はどうも印象に欠ける。年頃の普通の男子高校生。主人公のはずなのにその友人のほうが記憶に残っているという事実。まあそんなものか、普通は。
 ただ、些か情緒不安定すぎるのでは? と思う点もちらほら。信太母の行動だとか、風喜の行動だとか。それも若さなのかもしれないが、計算高いなら計算高いできちんとそれに見合った行動をしてほしい。とりあえず風喜、君は不安定すぎる。キャラが良くわからない。

【オリジナリティー】
 同級生が家族になる、というのは面白い話だ。当然のようにラッキースケベも起こっている。それ以外はよくある拗れた人間関係といった感じ。王道っちゃ王道なので問題はないだろう。キャラクターにも個性はあるが、独自性は微妙。というか設定を筆者が「語って」しまっている印象が強いので、キャラの行動なりで個性を示してもらえるとなお◎。せっかく面白そうな設定はいくつかあるのに、それが活かされないのは大いに不満。

【文章力】
 小説が苦手なのかなという感じ。小説というよりは脚本を読んでいるようなイメージ。文章作法などは個人の自由なのでとやかく言わないけれども、やはりどこか表現に乏しく、うまく物語の世界に入り込めない。
 たとえば人物の見ているものは何も他人だけではないわけで、気分が良い時は空の方に気が向くだろうし、沈んでいる時なんかはどちらかと言うと足元の水たまりだったりそういうものに意識が無くはずだ。キャラクターの感情をそのまま感情表現で書くのではなく行動(怒っているのならコップの底で机を強く叩いたり、悲しみで放心状態なら料理の味付けがいつもと違ったり)で示すと途端に人間らしくなる。今のままだと特定の行動によって特定の感情が呼び覚まされるだけのアンドロイドみたいだ。それだともったいない。
 少し急ぎ足な文章にも見えてしまうので、もう少し腰を据えて、ひと場面ひと場面を大事に書いてみてはどうだろう。これだとどのシーンを強く見せたいのか分からない。

【総括】
 文章はほどほどながら、ヒューマンドラマとしては良い題材で、良い感じに展開が進んでいる。最新話も気になるところで引かれているので、続きが気になってしまう。あとは多くの読者を獲得するための文章力が必要になってくると思われるので、いっそうの精進を期待したい。あと女子高生のEカップは偉大すぎてやばい。やばい。

       

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