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★文芸・ニノベ作品感想3★
3月30日更新文芸作品感想

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「鹿児島都構想のすべて」 作者:若樹ひろし先生

【まえがき】
 鹿児島を舞台に大学生があれやこれや騒ぎを起こす話。前回はお金絡みでダーツ対決した春編を読みました。今回は夏編。

【ストーリー】
 紅一点の指宿が水商売の店で働いていて、しかも良いとこの社長に狙われているから取り戻そうぜって話。
 主人公の霧島がさりげなくリア充になっていて、しめやかに爆発四散してほしい。相手の女性は宮崎さん。髪切ってくれた人。3週間に1回は通えって言われたんだって。マジで? そんな頻繁に通うものなの?
 社長に対して隼人は講釈を垂れるも、相手は終始余裕な様子。ここで大学生が社長を圧倒してもなんか変な感じあるからこれでよかったと思う。結局強引に連れ戻す感じ。指宿は隼人に好意がある? ようだけど隼人は全く気づいてない。お前は違う意味で爆発してほしい。あと、

>他にも川内の誘いで串木野の海へ出かけた際、隼人が地元のサーファーと結託し、マナーの悪い不良と戦った出来事も印象深いのだが、話の筋に合わないので多くは語らずにおく。

 前回も思ったけど、それが一番読んでみたいわ!!!
 ぜひ読み切りなどでお願いします。前のギターのやつめっっっっちゃ気になる。

【キャラクター】
 川内には許嫁がいるということが明らかに。合気道の道場にも通い始めている模様。案外真面目そう。霧島は霧島で彼女いるし、BBQなんかしてるし、完全にリア充だコイツ。隼人は火山灰集めてた。どういうことだよ。指宿は相変わらず読めない。隼人のことを本当に好いてるんだろうかな? それだったら水商売なんてしなさそうなんだけど……。
 鈴木? 誰だっけそれ……。

【文章】
 カギカッコの後に台詞を入れていくスタイル、なれると読みやすいのだけどフォントの関係でどこまでが台詞なのか一瞬分からなくなったりするので、上下でズレがないある程度余白のあるフォント使えば読みやすくなるかも。今はMS明朝だから、なんだろ? MS明朝Pとかだっけ? それ使えば良さそう。ずれてると少し読みづらいんだよね……。
 文章そのものに関しては、情景描写が少なすぎるような気もするけど、会話が自然でテンポよく、良いです◎

【総括】
 文芸新都の作品の中では割と好きな方。分量も多すぎず少なすぎずで読みやすいのでこれからも楽しみにしています。

     

「黒兎物語」 作者:バーボンハイム先生

【まえがき】
 前回はそれなりに楽しんで読めた。さて今回(53~59話)はどうだろう。

【ストーリー】
 フローリアへと助太刀に向かうことになったゲオルク一行。丙武に抗うためか、と思いきや負けるために戦うとのこと。一度勝利を確信させてから、レドフィンや竜人族の攻撃でブチのめしてやろうって算段のようだ。確かに落とすならより高いところからのほうが良いもんね。ディオゴとセキーネが邂逅してしまいそうなのが怖いところ。なんか戦記っぽくなってきたぞ。
 モニークの埋葬はふつうにいい話だった。こういうのもっとほしい。注釈は少し面倒だった。ダニィがどういう状況だったかは全く覚えてなくて申し訳ないけど、とりあえず今主人公が誰なのか分からなくなった。ゲオルクだっけ?

【キャラクター】
 ディオゴ、クルトガ辺りが何だかんだ分かり合えそうにない距離感が良い。違う種族だから仕方ないね。これであっさり打ち解けても何だかなあってのがある。ガザミとかだっていろいろあって打ち解けたわけだしね。確か。覚えてないけど。
 甲皇国連中の描写がなんというか、あまりにも紋切り型なので何を考えているか見えてこない。丙武なんかは頭おかしい人っぽいから仕方ない気もするけど。なんか甲皇国の人たちは話にそって動いているような印象しかない。

【文章】
 気になる点はあるものの、読みにくいということはあまりなくなった(慣れた?)ので、これからもこの調子で良いと思う。相変わらず下ネタ多いけどなんかこれも慣れた。あと
>フローリアに先に入ってしまえば、前戯に差し掛かったも同然だ。
>だが、それだけではしっかりと濡らしたとは言い難い。
 ここはなんか面白かった。言い得て妙だった。

【総括】
 中盤は正直なにをしていたのかよく分からない面があったけど、ここのところは問題ない様子。段々と追いついてきたので、次があれば最新話まで読みたいところ。

     

「水月」 作者:53先生

【まえがき】
 「ピーラー」などで有名な53先生。短編集ということで、それぞれそこまで長くないので、すべての話についてまとめた感想です。そうしないと、短歌について延々語ってしまう。

【感想】
 「一滴ずつ毒を」は女の子が実験対象だったって話? こういった深い話は読み取るのが下手くそなので上手いこと言えそうにない。でも面白い。「どうしようもない」はよく分からなかった。完璧超人に告白されて困っている図? すごくリアリティがある。「ツァラトゥストラの食卓」はなにか起こりそう、起こりそうだと待ち構えていたらすんなり終わって少し肩透かしだった。結婚したくなった。「目覚めはどうか花畑で」は自殺の話。変化球とおもいきやストレートだった。贅沢を言うようだけど、捻りがほしいなあという感じ。「暗い色は私用」は謙虚だけど腹に一物を抱えた双子の姉の話。これもオチが欲しかった。「***」は短歌。どっ……どういうことだ? ニーチェ的なサムシング? 頭が堅いのでこういうのは全く読み解けない。悔しい。

【総括】
 「一滴ずつ毒を」が面白かっただけに、それ以降が少し勿体なかった気がする。他の短編もお待ちしています。

     

「夜景情景スカトロジスト」 作者:志茂田聾二先生

【まえがき】
 初めて見る方。漫画を描かれている方のよう。漫画描きの文章は文字書きとはまた異なった印象があるので楽しみ。

【ストーリー】
 生命に惹かれる男・柳井俊夫と、美に惹かれる女・遠野姫子が出逢った話。どちらも少し頭がおかしい(?)です。姫子より俊夫の方がヤバイ。
 俊夫は人間を解剖して、姫子はそれを観察する。惹かれ合った二人はともに暮らすようになるのですが、ある日姫子はボロボロな状態で帰宅する。状況からして強姦。そして翌日、姫子は自殺してしまう――というお話。
 物語の筋は見えてこない。何を書こうとしているのかはよく分からないものの、よく分からないからこその恐怖がある。まさしく深淵を覗き込んでいるような感覚。作中で水の中の物を見ようとして手を突っ込むと見えなくなる、というような表現があるけれども、この作品自体がまさに自分にとってのそれ。現代風の寓話を聞かされているような気分にもなった。現実で起こりうる話なのにどこか幻想的で綺麗。良い。いいとこで終わっているだけに、続きが気になる。

【キャラクター】
 主要人物は前述の俊夫と姫子。変人(=天才)同士が惹かれあうとはこのことか。もう少しこの二人の話を見てみたかったけど、姫子が死んでしまったのでもう見られない。ここから俊夫がどう変化するのか気になる。やはり死んだ姫子も解剖したりするんだろうか……。

【文章】
 詩的で美しい。耽美? 面白い表現がいくつも出てくるので引きこまれてしまう。文章そのものはくどい部分もあるのだけど、そう感じさせない程度の長さで区切られているのが良い。

【総括】
 少しだけ脚色されたノンフィクションを聞かされているような感覚になった。これ、まさか実話だったりしないですよね。大丈夫ですよね。

     

「蹴りたい子宮」 作者:安彩花先生

【まえがき】
 タイトル元は綿矢りささんの某作品かな。タイトルからしてもうハッピーエンドには(良い意味で)期待できないけど、果たしてどうなるか。

【ストーリー】
 まあとにかくドロドロ。ここまで汚い(褒め言葉)人間関係を描けるのは凄い。これノンフィクションとかじゃ……ないよね。
 主人公は、一応小畑? セフレのような付き合いをしている宮森智子が妊娠したと聞いて、絶望に打ちひしがれる小畑。美人だったら「まあいいか」で話し終わってたけど、そうじゃないからまだまだ続く。母になる前から醜い女の子どもなど愛せようか。いや、愛せない。そう思う気持ちは智子の姉・喜美子も同じのようで、子どもができたという智子の連絡に怒り心頭に達している模様。
 腹の子ごと殺してやろうか。まさに蹴りたい子宮。姉の発する言葉ではない。
 今後は小畑と喜美子が出逢って殺人計画を練ったりするんだろうか。なんとなくバッドエンドが見えてる気がするので、どう料理してくれるかに期待。
 いやあ、それにしても現実で逢瀬したくない話だ……。

【キャラクター】
 宮森智子のキャラがリアルで生々しくて恐ろしい。今のところ本人にとっての幸せは他人にとっての不幸で、智子はそれを自覚していないというのが怖い。この話が智子視点で描かれることはあるんだろうか。そもそもどういった方向に向かっていくのだろうか、この話は。小畑の彼女など、まだまだ気になる点がいくつもあるので期待したい。余談だが、後輩に小畑と宮森(交際している)がいるので落ち着かない。

【文章】
 上手い。智子の少しイラッと来る話し方上手い。突っ込むところがあまりないので上手いことは書けないけど、引きの一文がいいね。「俺は結婚を前提に交際している彼女にメールを打った」とか「腹の子ごと殺してやろうか、と私は思った」とか。ゾクッと来て次が待ち遠しくなる。
・好きだった言い回し
「今さら悔やんでももう遅い。浅はかさの代償は、宮森智子の子宮で芽を出した」
「“観測史上最高”は軽々と大股で塗り替えられた」

【総括】
 引き続き重い話。重い、重いよ! 明るい話題がほしいよ! 暗い話ばかりではなく、明るめの話題も入れて落差を作ると、もっと読者をブチのめすことができるんじゃないかなあと思うところ。更新はよ。

     

■全体の総括

 もう仕事仕事ばっかり。遅れてごめんなさい。
「鹿児島都構想のすべて」は相変わらず楽しめた。楽しめたんだけど、各部の終わりに語られるエピソードが気になってしかたがないので絶対に書いてくださいお願いします。「黒兎物語」もいい感じ。この調子で進んでいくなら問題なく読める。中盤はなんか本当に読みづらかった。「水月」は最初のがインパクト強すぎて他のが薄れてしまった感じ。ちょっともったいなかった。「夜景情景スカトロジスト」は名前も知らない絵画と対峙するような不気味な美しさがあった。今後どうなっていくのか期待。「蹴りたい子宮」は安定の完成度。分量は多くないものの、これだけで人を惹きつけられる文章を表現できるのは凄い。

 次回感想日。
 次は4月9日(土)更新のニノベ作品。いよいよ僕の感想も大詰めです。遅れたりなんだりでご迷惑をお掛けしましたので、最後の月くらいは頑張ろうと思います。ニノベは次回合わせてあと2回はできると思うのでよろしくお願いします。
 で、四代目感想担当、決まりました。本日水曜の夜あたりに多分感想ラジオやるので、その時に発表させていただきます。次回からはその方と二人で感想を書く感じになると思います。あともう少しだけ、黒兎の感想にお付き合い下さい。
 それではまた。

       

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