Neetel Inside 文芸新都
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ディオゴは飛びかかる・・・不倶戴天の敵であるセキーネ。一度は取り逃がした男が今、ここに居る。
その瞬間、感情より先にディオゴの身体は動いていた。ただ一つ怨念を晴らすためだけに・・・

だが、それも既に見透かされていたようだ。
飛び出そうとした瞬間、ディオゴは仰向けに倒れる。
「ぐッおッ!!」
転倒するディオゴ・・・彼の足には見えない糸がかけられていた。
「クッ・・・ソッ! んだッ!!コリャあ!」
その糸をたぐりよせる者が居た。ネロだ。ネロはディオゴの右足にワイヤーを結びつけていたのである。
「殿下の身体には触れさせはしない。」

「やめろッ!」
ヌメロが飛び出そうとしたが武僧達に取り押さえられてしまう。
「くそッ! 離せッ!!」
武僧の一人がヌメロの延髄に手刀を喰らわせると、ヌメロは首をうなだれて意識を失う。

「ヌメロ!! ちくしょう!!クッソ!こんなもの!」部下のヌメロがやられたのに一瞬気を取られたが、すぐさまディオゴは立ち上がりワイヤーを切断しようとした。だが、それをネロは見透かしていたのかもう一本のワイヤーを引っ張る。
「うおッ!」
今度はうつ伏せに倒れ込む。右足のワイヤーと違って左足のワイヤーが後方の柱に引っ掛けてあったためだ。ディオゴにとって完全な死角である。
(クソッ! 二重に罠を・・・!!)
転倒した時には既にネロは視界から消え去っており、その瞬間に背中に凄まじい衝撃を受け、ディオゴは倒れ込む。
「がっ・・・!!」
ネロはディオゴの背中に文字通り馬乗りになると、肩甲骨に肘打ちを喰らわせ、そのまま全体重をかけてのしかかる。
「か・・・っ!」
倒れ込んだ拍子に顎を地面に叩きつけてしまい、
そこでディオゴの意識は途絶えた。


朦朧とした意識の中なのか、夢なのかディオゴは曖昧な意識の境界線を漂っていた。
「……ディオゴ、聞いているならば」
ゲオルクの声が聞こえる。
「気絶してるだろ? こいつ」
「構わん」
 ガザミとゲオルクの声が聞こえてくる。

「・・・貴様のゲオルク軍での軍籍を剥奪しよう。どこへなりと行くがいい・・・そして貴様の仇は、恐らくアルフヘイム中枢にいる・・・・セキーネ殿下に協力しろとは言わんが、好きに動くがいい。誰も貴様を止められはしない……私もな」
 (・・・そうか クビってことか・・・ハハハ)
目が熱く濡れていくのをディオゴは感じていた。
(煩わしいと思っていた ここでの暮らしももう終わりか・・・)
思い出されるのはゲオルク軍で過ごした日々だった。
(懺悔や悩みを聞いてくれたゲオルクのおっさん・・・獣人仲間の戦友で飲み友だったガザミ、ムザファール、白兎人族で唯一信頼していた元上官のノースハウザー・・・クソ生意気で一度ガン掘りしてやったアナサス・・・なんだかんだ言ってイマイチ好きになれなかったクルトガ・・・ ちきしょう。鬱陶しいって思っていたのに・・・お別れってなると寂しいもんだ・・・)
「ではさらばだ……友よ」
ゲオルクの背中が遠くへと小さくなっていくのを見送り、ディオゴの意識は途絶えた。

       

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