Neetel Inside 文芸新都
表紙

黒兎物語
86 フェデリコ・ゴールドウィンの死

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ラギルゥ一族の宗家は竜人族族長ヴァルギルア、ドワーフ族代表フメル・バクダンシキ、ユニコーン族代表のゼルドラに
よって滅ぼされた。このアルフヘイムより、ラギルゥの名を冠する一族は滅びた……
 
「まだだ……ラギルゥの血を引く分家の者たちが居る。」

クローブは朽ちた大天使像に向け、言う。
ここで手を緩めてはならぬと言うかのように。

「フェデリコ・ゴールドウィン……そしてニコラエ・シャロフスキー……
奴等の母親はラギルゥ一族の出身だ。ラギルゥの血はアルフヘイムの名家にまで入り込んでいる……
分家であろうと容赦はしない。」

クローブは己が右手を握り締める。

「手始めにフェデリコ……貴様だ。」








セントヴェリアの某シェルターにてラジオ放送が流れていた。

「只今より、ラギルゥ内閣は総辞職し……ラギルゥ首相は処刑された。
只今より軍部と治安警察セキュリターテの指揮権は内務省副長官である私マルクス・シュナイゼルにある。
ミハイル派の諸君、直ちに武器を捨てて投降せよ……投降後、諸君は私の指揮下に入り、
残るミハイル派の同志たちに降伏を呼びかけるのだ……ラギルゥ将軍もシャロフスキー将軍も君たちを棄てて逃亡を図った。
内務省長官フィリップ・ロマン氏は自害なされ……ラギルゥ首相も先ほど処刑された……
私以外に君たちが従う者は居ない……繰り返す……」


内務省の副長官マルクス・シュナイゼルの呼びかけであった。
とどのつまり、もう降伏しか手は残されておらず、それに応じない場合は
逆賊とみなされるということだ。

「おしまいだ……ちくしょう……」

流れるラジオに聞き入るフェデリコ・ゴールドウィンとその親衛隊の隊長が絶望のため息を漏らす。
フェデリコは顔面蒼白となっていた。ボサボサの髪と、無精ひげはまるで落ち武者の成りである。
髪を7・3分けにし、つるつるの素肌を保っていた如何にも貴族成りを強調した男の姿はそこには無い。


「なんとかならぬのか!宮殿がダメなら、セントヴェリア城はどうなのだ!?
あそこには女帝陛下が居られるであろう!!」

フェデリコがハンカチを引きちぎらんばかりの勢いで悔しそうに
ハンカチを引っ張り、親衛隊長を叱責する。
ただ彼自身、非力なためハンカチを引きちぎることも出来ず、ただのええかっこしいのアピールどころか
その段階にすら立てていない。
「ダメです……セントヴェリア城は既に包囲されています。
あそこに行くなど自殺行為です。」
親衛隊の隊長が進言する。今更、女帝陛下を支持する民衆も居ない。
権力を失った者に頼ったところで、なんになるというのだ。
助けに来たのかと問われ、助けを求めに来たと答えたフェデリコが
ミハイル4世に一刀両断される姿しか思い浮かばない。
女帝陛下とはミハイル4世のことである。
フェデリコは西方戦線から帰還し、女帝陛下のいるセントヴェリア城へと向かおうとしていた。
だが、その途中でクローブ派レジスタンスと民衆たちによる革命が起こり
城へと向かうことが困難となってしまったのだ。止むなく近くのシェルターに避難したものの、
それ以降はモグラ叩きのように潰されるのを恐れ、フェデリコは引き篭っていた。
だが、フェデリコは風呂にも入れず、トイレもわざわざ下の下水道の水路で済ませなければならない
こんな生活に嫌気が差し、ブツブツと文句を言っていた。

「ぇぇい……どいつもこいつも役立たずばかりだ……!ちくしょう!」

溢れかえった鼻紙の箱を蹴り飛ばし、フェデリコは怒るがまま
悪態をついた。だが、それにより親衛隊の怒りも遂に限界となった。

「役立たずはアンタだ……この糞野郎」

「はぃ!?」

「……もうアンタについてたってしょうがねぇ……
俺たちは投降するぜ。」

親衛隊は胸のバッジを外してフェデリコに投げつけると、
そのまま下水道から地上へと繋がる通路へと歩いていく。

「まっ……待ってくれ……っ!!」

「お断りだね……アンタに付けば俺たちは逆賊扱いだ。
俺たちはシュナイゼル副長官の指揮下に入る。……つーか、
前からアンタのそういう貴族面した態度がずーっと我慢がならなかった。」

「てめぇのご機嫌取りにゃぁ心底うんざりしたよ!!
まだ最悪民衆に殺された方がまだスカッとさわやかするってもんだ。」

「心配すんな、てめぇの居場所はチクらねェでおいてやっからよ。
投降するか、それともここで一人で野垂れ死ぬか……よーく考えた方がいいぜ。」

「……あー ったく、これならクラウス将軍のところで戦ってた方がずーっと良かったよ。
マジで後悔するわー」

口々に親衛隊はフェデリコに集中砲火を浴びせる。
今までの態度が相当頭に来ていたのだろう。
権力があるから仕方なく付き添っていたが、その権力もなくなったこの人格欠落者などに何の用も無い。
そして、遠くなっていく兵士が口にしたクラウスの名……
フェデリコは屈辱のあまり、下唇を噛み締めて泣いた。

(ちくしょう……どいつもこいつもやっぱりクラウスか……!
あんな平民上がりのクラウスを尊敬して……尊敬される筈の貴族の私の陰口ばかり叩きおる……
何故なんだ……何故奴ばかりが……)

フェデリコはクラウス将軍に嫉妬していた。
西方戦線のボルニア要塞の戦いでは迫り来るユリウス軍を迎え撃つべく、
クラウス、アーウィン、フェデリコ、シャロフスキーの4人の将軍が集結した。
あの宿将アーウィンは、こともあろうかフェデリコではなくクラウスばかりと軍議をし、時にはフェデリコ抜きで軍議をすることもあった。
(これは一部フェデリコ自身の誤解があり、フェデリコがユリウスの弟アーベルにより
毒を盛られて休養中だったため、軍議に出られる状態ではなかったからである。
だが、フェデリコはそれを侮辱ととらえた。)

(クラウスめぇぇえええ~~~~~)

クラウスに対する嫉妬の念は日に日に募っていた。
そんな中、彼の伯父であるシャロフスキーが怒る甥のフェデリコを宥め、
こう進言する。

「なーに、焦ることは無い……目の上のたんこぶのクラウスはいずれ死ぬ。
お前はいつも通り、ドッシリと構えておれば良いのだ。」

それから数日後、クラウス暗殺の知らせが陣地に飛んできた。シャロフスキーの予言通り、クラウスは死亡した。

(ざまあ見ろ……クラウスめ。心の底からざまあみろと言ってやるぜ!!)

だが、フェデリコが喜んだのも束の間のことだった。クラウス亡き後、その後釜に座った
シャロフスキーとアーウィンの間で内輪揉めが起こり、
指揮系統が崩壊。クラウスのお陰で良くなっていた筈の戦況はかなり悪化したのだ。
そして、その後犯した罪のつけが返って来たのだ。
宿将アーウィンによるクラウス将軍暗殺の手引きをした内通者の炙り出しが行われ、
その内通者に自分の名が挙げられていた。

「馬鹿な……何故なのだ!」

フェデリコは伯父のシャロフスキーの言うがままただドッシリと構えていただけだ。
おそらく手を下したのは伯父に違いない。

(まさか……!)

シャロフスキーは体調悪化を理由に、セントヴェリアまで帰還の途についていた。
つまり、フェデリコは完全にハメられたのだ。
クラウス暗殺の責任を全て伯父であるシャロフスキーに擦り付けられたのだ。
アーウィンにその情報を流し、帰還を許されたのもそれが理由か。

「ぉのれぇぇえええ……シャロフスキー……!!」


フェデリコはその夜、シャロフスキーを追うべく西方戦線を抜けた。
そして逃げる途中だった伯父のシャロフスキーの一派を闇討ちしたが、
すんでのところでシャロフスキーは川に飛び込み、捕らえることが出来なかった。

証拠となるシャロフスキーを捕らえることも出来ず、
今更西方戦線に戻ることも出来ず、フェデリコは止むなくセントヴェリア城へと戻ったわけである。
ミハイル4世とラギルゥ一族がいるセントヴェリア城ならば、何とかしてくれるだろうという
一縷の望みにかけたのだ。

だが、戻ってみれば既に後の祭りだった。
街はクローブ派によって革命が起き、頼りの綱のミハイル4世もラギルゥも失脚寸前にまで
追い込まれていたのだ。

「はぁっ……はぁっ……くそっ!」

フェデリコは雪崩込んできた民衆に追われていた。
先ほどの兵士の言葉など信用してはなかったが、やはりだったか。
奴等は降伏を受け入れる見返りに私の居場所をリークしたのだろう。

「私ほどの高貴なる貴族が……なぜだ!!」
汚水の飛沫を全身に浴び、ネズミとゴキブリが這いつくばる下水道を走り回る羽目になるなどと
高貴なるフェデリコには耐えられぬ屈辱だった。

(ちくしょう……ちくしょう!!)

フェデリコはゴールドウィン一族の中では序列は一番だった。
なにせ、第一夫人である母はラギルゥ一族の生まれだったからだ。
なのに、それ以外の下衆な夫人共から生まれた弟共はフェデリコを尊敬せず、
「七光り野郎」、「裸の王様」とフェデリコに陰口を叩いた。
叩かれたのにも彼のその性格に原因があったのだが、そんなことは幼きフェデリコには
分かるはずもない。高貴なるラギルゥの血を引く筈の自分を
誰も尊敬しないという彼の劣等感は日に日に募っていった。

彼は空回りしてはいたが必死に勉強していた。
だからこそ、他の連中が尊敬されることに我慢がならなかった。

「はぁっ……はぁっ……」

「逃がすなー!!ゴールドウィン将軍を逃がすな!」

「西方戦線のクラウスを謀殺した卑怯者ー!!
裁きを受けろー!!」

なだれ込む民衆やクローブ派の追っ手に追い詰められ、
彼はもはや地上に逃げる以外に残されていなかった。

「……ちくしょう」

地上へと繋がるハシゴを登りながら、彼は悪態を呟く。
十中八九捕まるしか無いだろうが……できることならこんなところで捕まりたくないと。
地上へと繋がる扉を開け、彼は一週間ぶりの地上の空気を吸った。

「はぁっ……はぁっ…」

地上の空気の美味に一瞬気を取られそうになったが、
そんな場合ではない。早く安全な場所へ逃げなければならない。
だが、どこへ逃げていいのか分からない。フェデリコは辺りを見回し、
途方にくれていた。そんな時だった。

「こちらですわ!!ゴールドウィン将軍!!」

思わぬ人物が手招きをしていた。

「ラギュリ様!!!」

なんとそこに居たのはミハイル4世の腹心であるニッツェシーア・ラギュリであった。

「お会いできてよかったですわ……早くこちらへ!!」
ニッツェシーア・ラギュリの導かれるがまま、フェデリコは走った。
無我夢中すぎて気がつかなかったのか、フェデリコはラギュリが待たせていた馬車へと乗り込んでいた。

「……まさに地獄に垂らされた天使だ。ラギュリ殿。」
フェデリコは心底安堵した。
ここでミハイルの腹心であるニッツェと合流出来たことは、
何より今のフェデリコには有難かった。

「ウフフフ……そう言っていただけると光栄ですわ。」
ニッツェは口元に手を当てて微笑む。

「もうとっくに捕らえられたのかと思っておりましたぞ、ラギュリ殿。」

「……敵を騙すにはまず、味方からと言いますわ。将軍。
あの城に居られるは、ミハイル様の影武者。
本物のミハイル様は、既にセントヴェリアを脱出されておられますわ。」

「さすがは女帝陛下だ……準備周到なお方です。
ラギュリ殿は……何故、未だこちらに?」

「逃げ遅れた我らが同志を探し回る任を負いまして……生き残りもおらず、
心細くていたところ……将軍にお会いしたのですわ……」
そういいながら、ニッツェは震えていた。

「心中察します……さそ、大事なご役目を全うされました。」
ゴールドウィンは内心笑いが止まらなかった。
天はやはり自分を見放してはいないと。


(……やれやれ ラギュリ殿も人が悪いお方じゃ。)
その会話の内容を黒いターバンとローブに身を包んだダート・スタンは
馬車を引く馬どもを操りながら聞いていた。


「……私……大変恐ろしゅうて……身体が冷え切っておりますの」
そう言うと、ニッツェはゴールドウィンの右手を手に取り、自身の胸へと当てさせる。

「ぉっひゃっ!? ラギュリ殿……いかがなされたのです!」
フェデリコは指に感じたニッツェの柔肌に、思わず金玉が脊椎をぶち抜いて脳天まで貫き、天まで飛び上がるほどの
衝撃を受けた。あの絶世の美女と評されたニッツェの柔肌を……よりにもよって乳房を今この手に感じているのだ。

「感じてください……私の冷え切った心を……すごく恐ろしいのです……」
そう言うと、ニッツェは左手でフェデリコの右手を掴むと、胸の谷間まで押し込んでいく。

(ぅおぉぉおおおおおおおおお!!!!)
それまで縮み上がっていたフェデリコのチ○コに一瞬で我慢汁がなだれ込み、
フェデリコの股間は一気に膨れ上がった。おまけに疲れていたものだから、疲れマラも相まって
我慢汁が噴火しそうなほど まさにチンコがギンギン状態のフル勃起となっていた。

「いけません……!ラギュリ殿……!!ご乱心はいけませぬ…!」
とかいいつつ、乳房に挟まれた手はもはや彼女の乳房をまさぐっていた。
男の本能にはもはや屈服せざるを得ない。

「ウフフ……口ではそう仰っていても 下のお口は正直ですわね。」
そういいながら、ニッツェは片方の右手でフェデリコの股間をさすり始める。

「はうぅっ……!!もう我慢が出来ませぬ!!ラギュリ殿!」
ゴールドウィンは服を脱ぎ捨てるとニッツェに馬乗りとなり、彼女と交わろうとした。

「ウフフフ……焦らないで……あぁっ……ゴールドウィン殿。私も興奮してきましたわ。」

そう言いながらスリットをまくりあげ、ニッツェはゴールドウィンに
その艶かしい両足を見せつける。

「はっ……はやく……!うぅっ……あなたのその……美しき秘部に……
私のものを……挿入れたい……っ!!」

ゴールドウィンは己の股間を彼女の股間へと
押し付けようと襲いかかろうとしていた。

「せっかちですわね……そこまで仰るのなら」

その瞬間、ニッツェは両足で彼の腰をクラッチする。

「おぉっ!!ラギュリ殿!!」
恍惚なるニッツェが股を広げ、自分を迎え入れてくれようとしている喜びに目がくらみ、
フェデリコは気づかぬ内に逃れられない死の階段へと足を踏み入れてしまった。
ニッツェが両の足でフェデリコの腰をクラッチした真の理由が明らかになったのは
今から一瞬のことだった。

「今ですわ!」

そのセリフの意味を理解することなく、フェデリコは後方から顔面を鷲掴みにされていた。

「うがっ……!!ぁああッッ!!」

ニッツェの柔肌とは程遠い岩のようにゴツゴツとした筋肉に
顔面を下から上へと削ぎ落とされんばかりの力で後方へと引っ張られている。
突然のことにフェデリコは目をぎょっと見開くことと、苦痛の悲鳴をあげることしか出来なかった。

「てめェに会いたかったぜ!! フェデリコ!!!」
そこに居たのはオウガ族のニコロであった。
丸太のように太い指と指の間から、フェデリコは確かに見た。
かつてクラウス軍で副司令官を努めていた冴えないあのオウガ族の男ニコロの姿を。

「ぉ~~~~ッッ……ぐぬぃあぁぁあああぁぁアッッ……」

頭を支点に後方へと押し広げられ、フェデリコはもはや成す術もなかった。
自身の上半身に襲いかかる大激痛にもはやニコロの名を呼ぶ余裕すらなかった。
逃げようにもニッツェの両足で完全に逃げることも出来ず、
フェデリコは完全に王手をかけられた。

「ぅごっ……ごぉあぁあっ……!!」
フェデリコは最後の力を振り絞ってニッツェの両足から逃れようとジタバタしていたが、
彼女は歯を食いしばって取り押さえているため、彼は逃れることが出来ない絶望で
更にパニックに陥りながら、再びジタバタを繰り返していた。

ボキボキボキ…!!
パキパキ……!!

筋肉が引き裂け、脊椎から関節液が破裂して、椎間板が飛び出し、悲鳴をあげる音が聞こえる。
肩甲骨は既に悲鳴をあげ、今にも胸から突き出そうなばかりの激痛だ。
それだけではない、胸骨は皮膚と筋肉に押し広げられたあまりに
パキポキと聞いたこともない音を立て始めていた。
腹筋は押し広げられ、今にも縦に引きちぎれそうな勢いだ。

「クラウスの恨みィィ……ここで晴らしてやるぜェェエッッッ……!!!」

ニコロとフェデリコではライオンとアリの差ほどの力がある。
はっきり言ってここまでしなくとも、一発で殴るだけで即死させることは出来た。
だから、こんな非力な男如きに大人げなくも見えるが、
今のニコロにとってはそんな考えは微塵も思い浮かびはしなかった。
口下手で猜疑心の強い自分を信頼し、副司令官として重用してくれた親友クラウスを
こんな卑怯な醜い嫉妬野郎のちっぽけな陰謀で謀殺されたのだ。
何よりそのクラウスを奪い去ったこの男への恨みもあるが、
フェデリコがクラウスを謀殺したお陰で、残されたアーウィンとニコロがどれほど
西方戦線で苦しめられてきたのか、何としてでも思い知らせてやる。

射精して精根尽き果てて死す鮭を見習うが如く、
全身全霊を使って抹殺せねばならないと思った。



ゴキャッ!!!


背骨が完全に骨盤から外れる音が聞こえた。
不気味にくの字に曲がったフェデリコの後頭部をそのまま後方へ叩きつけると、
ニッツェの両足に引っかかって体全体で倒れることが出来ず、
フェデリコの身体は更にベキベキと後方へ曲がった。


「……ウフフフフ……こうなってしまえば可愛いものね……
女の股に挟まれて死ぬのもなかなかではありませんこと?」

そう言い終えるのを待っていたかのように
フェデリコは突然頬を膨らませ、ビクリと痙攣した。

「こふゅ……」

フェデリコの口から息か断末魔かは知れないが、その音が漏れると彼は
そのまま動かなくなり、息絶えた。

「……ビビ……ミーシャ……恨みは晴らしたぜ。」

ニコロは憎き仇であるフェデリコを見下ろし、
故郷に残した友たちに向け、呟いた。
こうして、クラウスを謀殺したフェデリコ・ゴールドウィンは
ニコロとニッツェの手により抹殺されたのである。

ようやく、固定していた両足を離し、ニッツェは乱れた服装を整える。
目のやり場に困ってか、ニコロは先程まで隠れるのに使っていたシーツを
ローブ代わりにニッツェの身体にかけてやった。

こうして、馬車を運転していたダート・スタンは馬車を止めると馬車から下り、
ニコロとニッツェと共にセントヴェリアを脱出したのだった。

       

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Neetsha