Neetel Inside 文芸新都
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「おとうさん?」

「パパ……?どうしたの急に?」

きょとんとした我が子の目に、ディオゴは愛おしさを隠せず思わず2人を抱きしめた。

「いたい! いたいよ!!パパ!!」

「くるしいよ!おとうさん!!」

思わず、我に返り2人から腕をそして手を放し、ディオゴは立ち上がって2人を見つめる。
強く抱きしめたのが怖かったのか……それとも、父親の表情に何やら不安を感じているのか、
目を潤わせ、震えながら2人はまた父を呼ぶ。

「おとうさん…?」

「パパ…?」


2人歩みだす。そして、車椅子に腰掛けるヌメロの許に歩み寄り、
その前でしゃがみこむ。

「義兄さん……必ず貴方を治してみせる……そして、みんな一緒に暮らそう。
元気になった貴方と……ダニィと……この子達とツィツィと……
一緒に暮らそう。また昔のように……」

ヌメロの手を握り、ディオゴは振り向かずに立ち去った。
扉を開けた先には妻のツィツィが居た。

「ツィツィ姉……」

何も言わず、ツィツィはディオゴにしがみつくように抱きしめる。


「帰ってきなよ……帰ってこなきゃダメだからね。」

「分かってる……すまない」

愛する妻を抱きしめ、ディオゴは旅立った。

後のことはフィリッピオとフラーに任せてある。
先ほどちらっと2人の名前を挙げたが、改めて説明させてもらおう。

フィリッピオ・ジェンコ・フェルゼッティは
ヌメロ=ジェンコ=コルレオーネ・ワイン会社の取締役の一人で、
いわば副社長に当たる。副社長ではあるが、ぶどう農園(現場)に出てワインの収穫やワイン製造を
直々に指導するいわば表の現場畑の人間だ。コルレオーネファミリーが文明社会に進出するきっかけを
作ることが出来たのも、彼のおかげだ。

対するフラーは、コルレオーネファミリーの裏のビジネスを引き受ける、
いわば裏の現場畑の人間だ。表向きの役職は警備主任で、ファミリーの経営する酒場や
レストランのバウンサーたちをまとめ上げている。

ヌメロの後釜としてツィツィがSHWでダンジョントラベラーの仕事をしていた
時に知り合った蝙蝠人族とエルフの混血児の男だ。かつてのディオゴのような若々しい小麦色の肌に、
剥く前の栗のような赤茶色い長髪と、収納している蝙蝠羽を出す時のために両肩の出たスリットの上着を
着ているところから、一見すると女性のように見える。だが、上着を脱ぐとかつてのディオゴのような
程よい筋肉質な身体をしており、それ故に愛人も多く、快楽主義者の男で、財布の中にはお金よりも
避妊用のゴムの数が多いと言われるような男だった。
女を性処理の道具と思っているのかと何人の男に責められたこともあったが、
むしろ女性に負担を強いずに愛するために持っているエチケットツールだとフラーは言い張っている。


それ故か、愛人や寝た女たちとのトラブルが絶えないが、意外にも彼の不貞行為を責めるようなものは少なく、何故か女たち同士で争い合うトラブルが
多い男だ。それを聞くと、かなりチンコのネジどころか、頭が緩くてと思われがちだが
仕事はきっちりとこなし、仁義はある男だった。
あくまでも噂ではあるが、愛人との間に何人か子供がいるものの、
それぞれにきっちりと養育費は払っている。子供たちを認知しないのも、
マフィアである自分を父親に持つ重荷を背負わせないため(本人談)と、
会社名にフラーを入れることを拒んだのもそのため(本人談)と、何かと憎めない男だ。
ディオゴ自身、マフィアという仕事を世間的に褒められるべきではないと分かっていたため、
馬鹿真面目にディオゴはフラーの言葉に深く感動していた。


信頼する部下がいる以上、今のところは大丈夫だ。
後のことは彼らに任せればいい。

今はやるべきことがある。

ダニィを連れ戻すこと――

人職人人を見つけ出し、ヌメロの魂を黄泉から連れ戻すこと――

どっちもやらなきゃならないのが辛いところだが、
それでもディオゴは諦めるわけにはいかなかった。

彼岸花のマークの刻まれたバイクを走らせ、人職人人の居ると噂されているガイシへと向かう。一先ずは人職人人を見つけ出すことだ。ダニィを見つけるのは、ヌメロを廃人にしてしまった罪を償ってからだ。愛する義弟に今の罪深い姿のままでは会わせる顔が無い。

様々な想いを頭の中に思いめぐらせながら、バイクを走らせている途中で休憩のために人参葉巻を取り出しながら、バイクを止めようとした
そんな時だった。

目の前を鴉の群れが通過してゆく、嵐のように吹き荒れる群れに
前腕で顔を覆い、嵐の過ぎ去りを待つ。
嵐の過ぎ去った後には一枚の手紙が残されていた。

「ガイシに集合 どうせ粗チンしごいてたんでしょ?
 
 けがらわしい……
 
 休暇は終了  ニコちゃんがアンタも来いってさ
 
 ちゃんと手を洗って来なさいよ

 デカチンうさぎ


 エルナティより 」
 
獣神帝の部下である3人の獣神将の一人エルナティからの手紙だった。
一枚の手紙を折りたたむと、ディオゴはポケットにしまい微笑む。

「……タイミングが良すぎるな……やれやれ、皇帝閣下も粋なことをする。」

運命のいたずらかそれとも、神の導きか。
ディオゴはバイクを走らせ、ガイシへと向かうのだった。

       

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